小さな少年の大きな覚悟【3】
「なるほど、そういうことか。好奇心旺盛で何より! モールはずっと読書が大好きだったもんな!色々なことに興味を持っても不思議じゃねぇ! 」
「ありがと!」
父さんに事情を話した。難なく受け入れてくれた。多少の叱責は覚悟の上だったのに。
とりあえず、僕の知識欲は充たされそうだ。
と思った矢先、僕の野望は打ち砕かれた。
「見てわかっただろ? この世界にはお前の知らないものがまだまだたくさんある。お前の大好きな本を読んでも、得られないものばかりだ! だが、今はそれを教えることは出来ない。自分自身で知ろうとしなければならねぇんだ!」
「分かった! 僕、これからも頑張るよ!」
落胆する気持ちもあった。すぐに知りたかったからだ。なんで? と、口に出しそうになったが、思いとどまった。聞いてばかりじゃダメな気がした。
「そろそろ戻らないとな! ここは長居していい所じゃない」
皆がそう考えたその瞬間、アレは現れた。
「お、おい! あれを見ろ!」
「で、デカい!」
「なんて大きさだ!」
現れたのは、巨人。
二足歩行も出来るようだが、その胸と腕に付いた筋肉で重心が前に傾いている。足よりも手の方が大きく見えた。
その筋肉のおかげで、攻撃面、防御面ともに優れているようだ。
通常の攻撃はまるで歯が立たず、一撃で人々は吹き飛ばされる。
「ここは、俺に任せて、先に地下へ戻れ! 」
僕の観察では、父さんは指揮官に次いで実力があった。父さんは一番早かった。己が野生であるかのように、体を全て使い、相手の隙は逃さない。見ていて美しいと感じる戦い方だった。
「お前はバカか!! あんなの一人じゃ無理だ! 全員で応戦する!」
「ダメだ! まだ相手の実力がわからないんだぞ! 俺たちがやられて地下に被害が出たらどうする!」
父さんと指揮官はすぐさま作戦を練っていた。しかし、その間にも猛威は襲い来る。
「誰かを囮に使うのが得策だ! 戦闘力があり、長時間耐久しなければならない。それができる者は限られるが、指揮官であるお前はダメだ! 地下まで指揮を執ってもらう必要がある。応援を呼んでこい。だから、一番危険な囮の役目を引き受けると言っているんだ!」
「・・だ、だが・・・」
父さんの説明を聞いて、指揮官が俺を横目でチラリとみる。実際のところ、僕にはこの場にいる全員が束になってかかっても、アレに勝つことは難しいと思えた。その囮を父さんにさせるなんてできっこない。
「い、嫌だよ!」
「あのな、モール。男にゃ覚悟ってもんがあるんだ。それを曲げさせようとしちゃいかん! 必ず、戻るから心配するんじゃねぇよ!
俺には夢があんだ。今はこんなだが、地上にもすげぇ所はいっぱいあんだ。地上でみんなで楽しく暮らしてみてぇんだよ! いつか地上についてもお前に話そうと思ってた。お前と一緒にこれから頑張るんだ、こんなとこで死んじゃいらんねぇ! さっさと戻って応援呼んでこいよ!」
父さんの夢、とても良いと思う。僕も凄い楽しみになってきた。ここまで必死な父さんは初めて見たし、信じるしかないみたいだ。僕は父さんに向かって大きく頷いた。
「「「それなら俺も! 」」」
三人の男性が声を上げた。僕が見た限り父よりも少し弱いがかなり強い部類の人たちだ。
「おう! 頼もしいな! という訳でオグマ、頼んだぞ!」
「分かったから絶対に死ぬんじゃねえぞ!」
そう言って、僕を背負った指揮官とその他の仲間たちは地下へと戻っていった。
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