第85話 『今にも壊れそうなボロボロの小屋』

変わらない日々

変わらぬ太陽の輝き

夜のないこの世界


砂漠の傍の丘の上に立つ東屋

ソコで俺達は時計をみながら、毎日木の板に日付を書いてゆく

今日であれから数えて64年と4ヶ月と1日


毎日こうやって木の板に書き留め

毎日恒例になった一日一回のProtect lifeのアンプルを口に含み生命譲渡を意識して口移しでティナに揉ませる為にティナとくちびるを重ねる。


規則正しい吐息

それと胸の動きがティナが生きている証

Protect lifeのアンプルをを飲ませ終わり、手櫛でティナの髪を梳く。


そして恒例になった言葉を無意識に呟く・・・


あの砂漠のある場所に粗末な木作りの家が立っている

縦5メートル

横5メートル

窓はなくて

タダ板を打ち付けただけの粗末な小屋だ

そうそんな小屋が砂漠にポツンと建っている


そう・・

何回も


何回も


何回も


心の中でそう有れと願い


心の中でそこに有ると想像し


心の中でそこに有ると実感し


心の中でその言葉を繰り返す。


そうやって

何回も

何回も

何回も

繰り返していると

ステアが急に俺の肩を


『ポン』


『ポン』


っと軽く叩いた後

「肩の力を抜いて気を楽にして下さいね。辛そうな表情してますよライアン?」

と指摘して俺の顔を笑顔で覗き込んでくる。


あ~俺は、無意識にそんな風に辛い表情していたのか・・・

「そうですよ~ライアン~固くなってます~」

とナサリーもへんな突っ込みを入れてくる!!

「あのですねナサリーさん?そこはヤバイんですけど・・」

「うふっ~元気でいいじゃないですか~」

と平気で返してくるナサリーなんだが・・・


「手つきがエロいぞ!!」

と一応注意

それを受けて

「ナサリーは下手ですね~こうやるんですよ~コキコキ~」

とステアが・・・

「あ~ライアンが笑った~」

「ライアンその笑顔素敵ですよ」


と・・・

俺を元気づける為にステアとナサリーはヤっていたのか?

俺は2人の脱力した行動にタダ笑うしか無かっただけなんだけどな・・・


「ライアンあれ!!あれを見て!!」

と急にステアが慌てて驚いたような表情で指で何かを指し示している!!

俺は

『今度は一体何なんだ?』

とステアの顔を不思議そうに見ていたのだろう

ステアはそんな俺の顔を両手で挟んで


『ゴキッ』



っと強制的に顔をそっちの方向に向ける。

「い・・痛いぞ」

俺は無理やり首を捻られてめちゃめちゃ痛かったのだ!!

そんな悲鳴を思わず上げてしまっていた。


「痛いじゃないです!!イタイ家です!!」

おいステアそれはダジャレか?


「イタイ・・家?何なんだそれは?」

と言ってステアに向けられた方向を見ると・・・



「ボロボロの家だな・・・あははは~なんであんなボロ家がアソコに有るんだよな~初代が作ったのか~?そうだなありゃ~確かにイタイ家だな!!」


と俺は妙に納得だ。

あんなボロ家が良く残ってたな~

笑える!!



ってあんな所に今まで家有ったっけ?

この64年と4ヶ月と2日毎日毎日此処で座ってこの景色を延々と見てきたんだ!!


『絶対にあんなボロ家は無かった!!』



「え・・・え・・・・えええええええええええええええええええええええええええええええええええ~~」

その事実に俺は思わず大声を上げてしまってた!!

「そうですよ?ライアン?あれはライアンが作った家ですよ。今さっきまでは確実に無かった物です」

とステアが俺に肯定してくる

そんなステアの目には涙が滲んでいた


「ライアンなんであんなオンボロの家なの?」

とナサリーも俺に質問



「あ~初代が何も無い空間を作って最初に粗末な小屋を作ったってステアから聞いてたから、ボロボロの小屋を苦労して自分で建てたんだろうなって想像してたら、あんな風な小屋になったんだ・・・・でもボロボロ過ぎだよな・・・本当に・・・」


そんなボロボロの小屋を見ながら・・・

俺の頬を・・


熱い水滴が・・・


『ポトッ』


『ポトッ』


っと


流れ落ちてゆく・・・


その涙は・・・


俺がお姫様抱っこしたティナの顔を


『ポトッ』


『ポトッ』


っと



濡らしてゆく・・


それを俺は気づかなかった・・・

「ライアン・・・何で・・・泣いてるの・・?」


と何処かから声がした?


それは・・弱々しく・・俺を気遣う・・・澄んだ声・・・


つづく・・・

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