第82話 『力とは・・』
俺達は今ステラナの空を何処までも当てもなく飛び続けお城から500キロ地点にある戦闘訓練で使用していた砂漠の手前の小さな丘に降り立っていた。
ステアはそんな砂漠を見渡せる丘の上にさも当然なように小さな東屋を出現させる。
ステア、ティナをお姫様抱っこした俺、ナサリーの順に東屋の椅子に座り何も無い砂漠を見渡しながら
「ステア力とは何なんだろうな?」
そんな事をステアに無意識に聞いていた俺
そう・・
今回、俺は力不足を痛感していたからだ
俺にもっと力が有れば!!
皆を守れたのに!!
ティナをこんな風にする事も無かったのに!!
今の俺は本当に無力だ
あの20万の軍勢を一瞬で消滅出来るだけの力が欲しい!!
そうすれば、ティナもティナの家族もこんな事にはならなかったのに・・・
悔やんでも、悔やみきれない
そんなオレに向かってステアは
「思いの強さ・・・折れない心・・諦めない事・・それに愛でしょうか」
そう言って
『にこっ』
っと笑顔で俺の左腕を抱き締めながら下から俺の顔を覗き込んでくる。
ステアは相変わらず不思議ちゃんだな・・・
思いの強さ・・・
折れない心・・
諦めない事・・
愛
それのいったいどこが力なんだ?
解らない?
ステアはそんな俺の感情を読み取ったのだろう、俺に妙な質問をしてきた。
「ライアンはこの『ラナの遺産』は誰が作ったと思いますか?」
「ラナの遺産という位だから、ラナの国とかか?」
「いえ、それよりも以前です。ナルサス王国の西の海を隔てた所に文明が進んでいた大陸が昔有ったのです。その大陸の研究者はその国の政治の腐敗を嘆き、ナルサス王国の地に移住してきて、こんな世界が欲しいという思いで作ったのがこの『ラナの遺産』です。因みにナルサス王国の西の海を隔てた所に有った文明が進んでいた大陸は男が去った一ヶ月後に進んだ文明の破壊兵器が使用され跡形もなく海の底に沈んでしまいました。
移住してきた男は権力に左右されない自由な世界が欲しいそう強く思い強く願いナルサス王国とは違う空間を作りました。
移住してきた男が最初作ったのはこの『ステラナ』の地があるごく小さな空間だけ
そしてその小さな空間に小さな粗末な家を作り
その家は少しづつ
この家には大きな窓を
一つしか無かった部屋をもう一つ
そして一階建てだった家は二階建てに
二階建の家はお屋敷に
お屋敷だった家はお城へと作り替えられて行きました。
小さかった空間は次第に広げられ
森が
湖が
そして穀倉地帯が
次々に広がって今の『ラナの遺産』となったのですよ」
と語ってくれるステアの瞳は遠い世界の記憶を引き出すように虚ろに虚空を見ている。
ただ、俺には未だに解らない!!
「ステアそれの何処が力なんだ?」
「この世界はその移住してきた研究者の思いの強さ・・・いえその方の思いだけで出来ているという事実こそが力なのですよライアン解りますか?」
「解らないな。俺は引き継いだ『ラナの遺産』を開放することしか出来ないんだ」
そう解らない。この世界を作ったとしても、俺はそれを引き継いだだけだ!!
俺にはなんの力もない!!
「移住してきた研究者は色々な魔道具を作りあのお城の中に保管しています。代々この『ラナの遺産』を引き継いだ人間はその魔道具を使って向こうの世界を武力で治めたのです。そしてその武力に溺れただけの支配者に成り下がった者は『黒の管理者』により喰われました。ライアン今から見せる事は全部忘れてくださいね。今のライアンにはまだ早い物です」
と言って砂漠の方を見つめだすステア
すると砂漠の上空1000メートル位の所に上が平になった半球が出現その平らな部分にお城が徐々に現れる。
そして何もなかった砂だけの砂漠にもお城と2階建て3階建ての建物が次々に建ち次第に街になってゆく壮観な街並み
そしてその砂漠の中に忽然と姿を現したお城を伴った壮観な街並みは・・
上空1000メートルの上空に浮かんだ半球の上に浮かんだお城の下部から光が発せられると辺り一面は眩しい光により塗りつぶされ、光が収まった後には破壊尽くされた瓦礫の焼け野原が広がっているだけだった。
そして俺に向かって
「ライアンこれが貴方のいう力ですか?これは虐殺と破壊の何物でもありません。力を求めた者は、こうやって自らの力によって滅んでいったのです」
と言った後、何度も何度も繰り返し今見たような光景を見てきたかのように悲しい表情で破壊尽くされた光景を見ているステア。
どれだけの兵士や軍勢が居たとしても一瞬で消滅させてしまう強大な力!!
そう俺が求めていた力だ!!
そう・・だったハズ!!
でもそれは同時に何千万人という人々を一瞬で無条件に殺してしまえる物。
それは本当の力とは言わない!!
ステアの瞳はそう俺に訴えているよう・・・
俺は・・どうすれば良いんだ・・
つつく・・・
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