第79話 『新しい世界』
無機質な表情をしたステアは俺の両手を握って
「我が王ライアンの命によりこの王城の20万の兵士と王城を覆う膨大な魔力を贄にこの王城の地に『ラナの地』を顕現せよ」
と言って俺と結んだ両手を天に向かって差し伸べると!!
俺達に当たる直前の空中で止まっている矢までの王城の領域があの『ステラナ』の地のように白い透明なベールの壁で覆われ、ティナが魔力暴走で放出した王城の上空を覆う爆炎の球体が王城の中に落ち爆ぜた。
王城の周囲に集まったルクトニアの何千人という民衆達は?
『ルクトニアの民衆達の時間は止まったままだ』
と言うよりは
俺とステア以外の時間は止まっている!!
この世界の中で動いているのは?いや動けていると言った方が良いか、俺とティナだけが唯一動けている。
王城を取り巻いた白い透明なベールの壁の中は段々と虹色に染まって、白いベールで囲まれた中に居る何千人と並んだ兵士達は土から生えてきた手に掴まれて土の中に徐々に吸い込まれてゆく。
そんな光景を目の前で見ると中々にシュールな光景だ。
兵士が贄としてこの地に取り込まれる唯一の救いは意識が無いままにこの地の贄になる事だろう。
『贄として生きながらに地獄の苦しみを味わいながら徐々に体を食われてゆく事が無いだけマシなのかもしれない』
体感時間にして1時間程だろうか・・
全ての兵士の体が完全に土の中に飲み込まれれ、城壁やお城、そこに生えている木々も完全に土の中に飲み込まれて、全くの更地に戻っていく。
白いベールの壁で囲まれた場所は今までの物を不定するが如く、全ての物が尽く無くなっていく様子を見ながら・・
『俺は今更ながらに悔やんでいた』
この魔道具さえ作らなければ、ティナはこんな魔力暴走を刺せなかったのに・・
今回のティナの両親の処刑はザクトル将軍がティナを誘き出すために仕組んだ罠だったのを見破る事が出来なかった。
ザクトルはティナを見つけるなりいきなり、十字架に貼り付けにした王族全員を処刑し、それを見たティナが錯乱して動けなくなるのも予想して、民衆を巻き込んで数千の矢を俺達を含む民衆全員に撃ち込んできた。
全てはザクトルの計算された罠だった!!
俺はどうすれば良かったんだ?
どうすればこの場を平穏に納められたのか?
俺には何の覚悟も無かった・・
ただ、ダークウィーズの森でサンダーウルフの討伐を受けてなし崩し的に『ラナの遺産』を受け継いでしまった。
ティナに出会い
ステアと出会い
ナサリーが仲間になって
流されるようにタダ生きてきただけなのだ。
それが此処結果だ!!
俺は王として何をすれば良いんだ?
まずはザクトルによってめちゃめちゃになったこのルクトニア王国の再建だ!!
サクトルに強制されて出兵を待っていた王城の中にいた兵士20万人を巻き添えにしたんだ・・
その家族達の問題もある
破壊されたルクトニア王国の中枢の機構も作り直さなきゃダメだろう・・
『この世界に介入しこの世界を治める覚悟・・か』
そんな物正直今の俺には全くない!!
『だからあの時ステアは時期尚早と言ったんだろう』
でもこうなった責任は俺に有る!!
やれる処からやっていくしかない!!
体感時間1時間くらい経っただろうか・・
目の前には・・
白いベールで囲まれたお城の入口から少し入っただろう場所には奥行200メートル幅50メートルの3階建ての広いホールが建っており、その奥の小高い丘にドイツ南部、バイエルン州にあるノイシュバンシュタイン城にに似たお城が立っているよう。
しかし!!
天まで届く白い透明なベール状の壁は王城のあった場所をぐるっと取り囲んだままでルクトニアの街とこの王城の中を隔てているままだ。
あの
『ステラナ』の地と同じように解除された地域のみを囲む白いベール状の壁と同じ物のよう・・・
それと同じもののような気はするのだが、果たして同じ物かどうかは俺にも解らない。
ステアは・・
『『ラナの地』を顕現せよ』
といったが・・
『ステラナ』
とはまた違った世界だ。
『ステラナ』の地の面影は全く無い
ステアは
「ライアンもう後戻りは出来ませんよ。新しい世界の始まりです。さ~行きましょう」
と言って微笑むのだった。
つづく・・・
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