第15話 『苦い勝利』

草原を進行してくるキメラ

上から見ると壮観な風景だ!!

数は・・手前の方だけ見たから5000体?

その後ろに鎧姿の兵士が居るな

「ティナキメラの群れの後ろに鎧姿の兵士が居るミタイだぞ」

「え~~~それって他の国が攻めてきてるんじゃないですか?」

「そうみたいだな」

「他人事みたいに言わないでくださいよ~ライアンどうするつもりなんですか?」

「兵士の数が3000人くらいキメラの群れの後ろに居るみたいなんだ。キメラを操っている奴を仕留めればキメラが後はあの兵士を襲ってくれそうだなって思うんだが安直すぎるかな?」

と思った事をティナに話すと


「それいいんじゃないですか~ライアン凄い!!天才です!!」

「おいティナ俺をそれっておだてすぎじゃないのか?」

「豚もおだてりゃ木に登るって聞いた事ありますよ~?」

「おだててたのかよ」

「はい!!ライアンならなんとかしてくれそうだったので!!」

「あのな~~ティナ・・少しはそういう事は隠そうぜ?」

「ですね!!正直に言いすぎました。こんどから気を付けます」


「馬鹿な事を言ってないでキメラを操っている奴を探そう」

「そうですね」


俺達は上空からキメラの群れを観察

ダークウィーズの森の10キロ前の草原にキメラの群れ5000体

そしてその後に鎧姿の兵士3000人

その後ろにもキメラの群れが・・・


ティナも上空からみてくれていたみたいで

「兵隊さんの隊列の後ろにキメラの群れがまだいますね。兵士さんがサンドイッチの具みたいです。あ・・ライアンあの兵隊さんの先頭に居る凄く良い黒い鎧の人、手に何か持ってますよ!!見て見てください!!」

と俺に教えてくれる。


ティナが言った通り、真黒な高級そうな鎧を着こんだ他の人間とは違う人物が手に魔道具らしいものを持っているっぽい!!

「黒い鎧の人物が持っている物はティナあれは魔道具だな」

「やっぱりそうですか。あれ壊しちゃったら、魔獣さんあの兵士さん達をやつけてくれるでしょうか?」

「う~んやっいてみなきゃ解らないな。だめなら全部今さっきやったようにシャイニングアローで全員やっつけよう」

「はいそれが良いですね」


ティナのその言葉を合図に、黒い鎧の人物が持っている魔道具をアイススピアで射抜いてみる。

すると・・


「ガオーーー」

「ガオーーー」

「ガオーーー」

「ガオーーー」

「ガオーーー」

「ガオーーー」

「ガオーーー」

・・・

至る所からキメラの咆哮が上がり始めると同時に兵士達の隊列が崩れ始めた。

隊列を組んでいた鎧姿の兵士達3000人はあっという間に一体高さ3メートル長さ5メートルちかくはあろうかと思われるキメラに一斉に囲まれ喰われ始めた。


「ギャーー助けてくれ~」

「逃げろ~」

「キメラが襲ってくるぞ」

「誰かキメラを抑えろ!!」

「だれかキメラにゆうことを聞かせろ」

「ギャーーー」

「グヲォーー」

「ギャーーー」


・・・・

・・・

3000人の兵士達は前の5000体の群れと後ろから来ている多分3000体はいると思われるキメラの群れに周りを囲まれて徐々に周りの兵士から喰らい殺されてゆく。


悲惨な光景が眼下には展開されている。

ティナは余りにも惨い惨状に、俺の肩に顔を埋めて惨状を見ないようにしてしまっているよう。


『無理もない!!こんなの地獄でしかない!!でも戦争を起こそうとしていたのだ!!その報いは受けなければならない・・・ハズ』


俺の腕の中でお姫様抱っこされていたステアが騒ぎの声に目をさましたようだ

「ひゃっ・・にゃ・・にゃんですか~~ここは何処ですか~」


はぁ~今頃起きやがったか・・


「お寝坊のステア様~おはようございま~~す。よく眠れましたか~?」


と冗談交じりに聞いてみる俺


「あのあのあの~下の状況はな・・なんなのですか~~~」


まあ~今まで眠ってたらそういう反応になるよな!!

「凄い状況だっろステア」

「凄いじゃないですよキメラに兵士が食われてるじゃないですか~」

「そうみたいだね~」

「そうみたいだね~じゃないですよ!!助けないと・・・」

「まあまあステア落ち着いて、あの兵士達は他国から攻めて戦争に来た兵士なんだ!今兵士を襲ってるキメラを使ってこの国を襲撃しようとしていた所を、キメラを操っていた魔道具を俺が壊したからあんな風に逆に襲われているって事なんだよ」


と手短に説明

「私が気を失っている間にそんな事があったんですか~」

「今日は入れ食いだぞ!!あの兵士達が片付いたら、8000体のキメラの魔核が手に入るからな」

「あのキメラを一人で倒すのですか~~?」

「驚きすぎですステアさん」

「だってあの数ですよ!!」


すると俺の肩に顔を埋めて後ろで隠れていたティナが

「ステア大丈夫ですよ。さっきも1000体のキメラをライアンやつけちゃいましたから」

と満面の笑顔で説明してくれる。


30分くらいで3000人の兵士達はキメラの大軍に喰らい尽くされ、それを確認後

さっきと同じように『シャイニングアロー』を発動し99本の光の矢を作成し3本の矢で同時に攻撃し数を減らしてゆく。


この『シャイニングアロー』は魔獣の攻撃には最適!!

攻撃した相手の魔力を強奪して次の獲物を狙う!!

獲物が居る限り無限に攻撃が可能!!


ステアも『シャイニングアロー』をみて呆れかえっている。

まあそういう反応になるよな

俺だってそう思うよ!!


攻撃する相手の魔力を強奪して次の相手を自動攻撃なんて馬鹿げすぎている!!

魔力を持っている者だったら完全に楽勝確定魔法だな。


1時間位した頃だろうか、射出していた99本の光の矢は俺達の周りにあつまり俺達の周りをぐるぐると回り始めた。

俺はその帰ってきた光の矢から魔力回収すると光の矢は光の粒になって消えてゆく。


眼下の草原には辺り一面キメラの夥しい死体が散乱して草原を埋め尽くしている。

そしてその真ん中辺は鎧と殆ど喰いちぎられた手足しか残っていない死体とも呼べない残骸が散らばっていた。

戦争とは残酷なものだな・・

あの兵士達もこの攻撃に参加さえしなければこんな風にはならなかっただろうに!!

派兵を指示した奴らの国の重鎮達には腹が立つ!!


そんな状況を憂鬱な気持ちで見つめていた俺だったのだが

急にティナが

「あの草原の木の陰に人影が見えます。黒い高級そうな鎧を着ています。あの魔道具を持ってた人じゃないですか?」


と指で示して教えてくれる。

ティナの指摘にその草原の木の後ろを見ると、立ち木に隠れた黒い鎧の男が見えた。


『シャイニングアロー』

心の中で念じた瞬間木立の影に隠れた鎧の男に向かって10本の光の矢が発射される。


10本の光の矢が当たると思った瞬間、軌道を変えた10本の光の矢が空中に居る俺に向かって逆に攻撃をしてくる。

俺は一瞬で光の矢から魔力を回収

その瞬間光の矢は光の粒となって空中に消える。


『アイススピア』

数10本の氷のスピアが男を襲うが・・・

同じように男に当たる寸前、軌道を変えて俺に向かって10本のアイススピアが襲ってきた。

『シールド』

俺はステア。ティナ、俺を包むシールドを一瞬で展開


『カン』

『カン』

『カン』

『カン』

『カン』

『カン』

『カン』

『カン』

『カン』

『カン』

氷のスピアが俺のシールドに当たり甲高い音を立てて草原に落ちてゆく。

魔法攻撃を跳ね返す魔道具か?

多分そうだろう!!


俺は一瞬で草原に降り立ちステアとティナにシールドを付与した瞬間、長剣を握って男の隠れている木立に向かって一瞬で間合いを詰め、木立ごと長剣で切り裂いた。

が・・・

男の姿は切り倒された木立が無くなった後も、そのまま立ったままの姿?




そう思い長剣で切り刻むが同じように男の姿を俺の剣は擦りぬける。

俺は


『あ?』

っと思い男の体に手を突っ込んだ!!


俺の鎧の男の体に突っ込んだはずの俺の手は鎧の男の体を釣り抜けて向こう側に突き抜けている。


「くそっ!!あの宝物庫にあった幻影の魔道具と同じ物か!!」

俺はそう言った瞬間一瞬舌打ちをしてしまう。

「やられた!!」


幻影の魔道具で幻影を作り出し、それと同時に反射の魔道具を置いて俺をの注意を引きつけている間に逃げたのか!!

「くそっ頭の良い奴だぜ!!」


もう黒い鎧の男の姿は何処にもなかった。

俺の様子を見ていたステアとティナがもう安全と思ったのか俺の方に歩いてきていた。

ステアは幻影を見ながら

「幻影の魔道具と魔法を反射する魔道具ですね」

と的確な状況判断

ティナは

「この幻影の魔道具そのまま持って帰って見てもらったらどうでしょう?この姿から敵の正体が解るかもしれませんよ」

と俺の考えもしなかった使い方を提案してくる。

「確かにそれは良いな!!俺はただの幻影と諦めていたがそういう使い方もあったんだな」


ステアは

「このままでは終わりそうに有りませんね。敵の本体は全然見えない状態です。今日の勝利はトカゲの尻尾きりと同じ事でしょう。ライアン、早めにギルドに報告しておいたほうが良いと思う」


俺は

「そうだな。サンダーウルフ討伐報告買い物行く予定だったからそのまま今日の顛末報告もしようか」


と2人言って2人を抱き締める。

「にゃんですか~」

「ひゃう~~~」

真っ赤になった2人可愛いな~

何か言うと変に返されるから言わないぞ!!


「兎に角ここのキメラの死体と兵士の残骸、それに魔道具を回収してそのまま街まで飛ぶぞ」

「は~~い」

「抱っこ~~」

「ステアまた抱っこか~~?」

「気に入った」

「はいはいステア我侭になったな」

そんな俺のツッコミに

「お友達でしょ?うふっ」


ステア性格まで変わったか?

そんな俺とステアのやり取りにヤキモチを妬いたのかティナは

「二人共ズル~~い!!なら私は」

そう言っておれのくちびるにティナは自分のくちびるを重ねてくる」

ステアも負けないと


「なら私も~」


といってお姫様抱っこされたままおれの右頬にキス

『リア充爆発しろ~~』


誰かが見ていたらそんな事を言っただろう・・・

確かに!!

遠くでその様子を気配を消して見ていた黒い鎧の男はそう思って思わず悪態をついていた・・・

その事を3人は知らない・・



つづく・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る