第33話:二人で調査を
アマーリアが王城へ行った後で俺も外へ出る事にした。
何をしていいかわからないけど、行動しないことには始まらない。
「ご主人様、出かけるのか?」
キリがやってきた。
何故かフェナクたちと同じメイド服を着ている。
「その恰好は?」
「この子があなたの世話をすると言って聞かないので、私たちと一緒に働いてもらうことになったのです」
フェナクがやってきた。
「キリはご主人様の助手だからな。ご主人様の世話はキリの役目だ!」
そう言ってキリは胸を張った。
何にせよやることがあるのは良いことだ。
「この子はなかなか筋がいいですよ。すぐに優秀なメイドになれるでしょう」
「そうか、じゃあ俺はちょっとやることがあるからよろしく頼むよ。キリ、フェナクさんの言うことをちゃんと聞くんだぞ」
「わかった!じゃなくて、わかりました、ご主人様」
うむ、これは将来が楽しみだ。
やはり女の子には女性の教官がついた方が良いのかもしれない。
キリをフェナクに任せて俺は屋敷の外に出た。
どこから手を付けていいのかわからないからとりあえず昨日の現場に行ってみよう。
◆
現場は俺たちが出てきた時と何も変わっていなかった。
昨日の捕り物が嘘のように日常が続いている。
地面に手を当てて地下の様子を探ってみたが何者かがいる様子もない。
地面に沈み込むように潜り、昨日の地下室へと降りて行った。
地下室は足の先すら見えない闇だった。
事前にアマーリアにライティングの呪文を教えておいてもらって良かった。
ライティングの光で照らされた地下室はもぬけの殻だった。
予想はしていたけど全ての武器防具が持ち去られている。
「ここで何かを調べるのは無理か……」
なんとなく壁に手をやり、あたりを探査してみた。
どうやらゴルドの町は千年の歴史の中で何度も地下工事が行われているらしく、地下道や地下水路が蜘蛛の巣のように広がっている。
俺の中で嫌な予感が更に膨れ上がってきた。
とりあえずこの件はアマーリアかソラノに知らせる必要がある。
地下でやるべきことは終わったので再び地中を通り抜けて地上へ戻る事にした。
昨日はソラノに運んでもらったけど、よく考えてみたら周りが土に囲まれている以上俺にも移動は可能なんだった。
地上に上がった俺の顔にすらりとした女性の脚とそこに続く下着姿の股間が飛び込んできた。
「うわぁ!」
「きゃあっ!」
予想外の光景につい叫び声をあげるとその脚の主も悲鳴を上げ、その瞬間俺の目の前に星が飛んだ。
顔面に思いきり膝蹴りを食らったからだ。
上半身だけを地面から生やした俺の頭がバブルヘッド人形みたいに前後に揺れる。
「テ、テツヤ?」
その声はソラノだった。
「まったく、何故そんなところから生えてくるのだ」
ソラノが呆れたように言いながら俺の鼻血を拭いてくれる。
「それはこっちの台詞だ。ソラノこそなんでこんなところにいるんだよ?アマーリアから休暇を取らされたと聞いたぞ?」
「そ、それは……」
俺の指摘にソラノは顔を赤らめて口ごもった。
謹慎という名の休暇中だけあってソラノはシンプルな濃い青色のドレス姿だった。
しかしそのシンプルな格好がソラノの美貌にえらく似合っていて思わず見とれてしまいそうだ。
帯剣も許されていないらしく、今日は丸腰だ。
ちなみに下着の色はドレスに合わせたのか水色だった。
「そ、そんなことよりもどうだったのだ、下は?」
無理やり話を戻してきたな。
「何もなかったよ。空っぽ、がらんどうだ」
「やはりか……思った以上に手際が良いな」
ソラノが悔しそうに唇を噛んだ。
確かに昨日の今日でこんなに素早く動けるなんて相当な力がなきゃできない。
「それでちょっと気になることがあったんだ。この前俺が崩壊させた建物があるだろ?あの組織が基地に使っていた」
「ああ、それがどうかしたのか?」
「地下道を探査してみたらさ、どうもあの建物に繋がってるみたいなんだ」
「それは本当か!」
ソラノが勢い込んで顔を寄せてきた。
バラの花弁のような口から洩れる呼気が感じられるくらい近い。
「あ、ああ。それにもっと気になることがあるんだ。その地下道ってのがどうも王城の下まで延びてるみたいなんだ」
「……」
ソラノが息を呑む音が聞こえた。
「とりあえず王城に延びる道は塞いでおいた。すぐには掘り返せないはずだ」
「そうか……」
ソラノがほっと息をついた。
「何か怪しいものはいなかったか?」
「ああ、流石に警戒してるのか誰もいなかったよ」
地下道は可能な限り探査したけど結局人がいる様子はなかった。
「その地下道は他にどこに延びていたかわかるか?」
「それがさ、途中で幾つも分岐していてとても追える数じゃなかったんだ。まるで街中に張り巡らされた蜘蛛の巣だ」
「そうか…この町は歴史の中で行く度も戦乱に見舞われ、その度に時の権力者が避難路として地下道を作っていたと聞く。おそらくその全容を知る者はもはやいないのだろう」
「とりあえず幾つか潰しておいたからすぐに利用されることはないと思うけど、どこに繋がっているにしろ大本を探り当てるのは難しいだろうな」
「仕方がない、くよくよしていたって始まらない」
ソラノが立ち上がった。
「アマーリア様がいない今、我々で出来ることをするしかない。テツヤ、お前にも手伝ってもらうぞ」
「当然さ」
にやりと笑って俺も立ち上がった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます