後編・創造主先生ヴァーサス時空探偵
論理、破綻、ですよ?
──はい、0001ばんくん、どうしましたか。
何周目?このセカイは、何周巡ったんですか?
──はい、せんせいの、けいさんに、よると、11010001010010101000101011110100001100101001...
ああわざわざ計算して頂かなくても結構ですよ。質問の仕方を間違えました。創造主であるあなただけが理解していればいいんですよ、そんなどうでもいい情報は。
──はい、せんせいは、あなたを、しりません、あなたは、0001ばんくんでは、ありません、ね。
ああボクは、探偵。時空探偵です。因果律に住まうお偉いさんの命を受け、あなたのセカイの住人の"0001ばんくん"に扮し、あなたを監視していました。まあ半分は仕事、もう半分は単なるボクの好奇心です。それにしてもあなた、随分と面白いセカイを創りましたね。素直に感心します。
あなたは、ボクが知っているセカイよりも、ずっと遠くにあるセカイの神様、ですよね。あなたはなんでも知っている。全智全能…に程近い存在。ええ、程近いというだけで全て知っているわけではない。全てというには、ひとつだけ足りない。…あなたはリンリを知らない。そうですよね?
リンリを知ることが怖いことだなんて、そんなこと、誰に吹き込まれたんです?吹き込まれた…。いや、あなたはきっと、元々リンリについて知っていたんですよね。…。もしかしてそれを、リンリという概念を、何億何兆とかいう単位が可愛く思えるくらいの回数、反芻したんですか?そして、人為的ゲシュタルト崩壊を生じさせた…と?これだと妙に合点がいく。ああ、実に興味深いですね…!
──はい、ところで、あなたは、せんせいの、ころしかた、しっていますか?
ふふ、それは…
あなたにもう一度、リンリを説くこと。
あなたは生物 (以下、便宜上ヒトと表記する)の醜さが許せない。
確かに、分かりますよ。ヒトは汚いですよねぇ?ヒトは醜いですよねぇ?ああ、どこの星の生命体の話かというのは、敢えてここでは伏せますけど。
『親から貰った命大切にしろ』『世界の戦争に目を向けよう』『世の中にはご飯も食べられない子供が』『法律があるから殺人はいけません』『友達の嫌がることをしないように』
ああ汚い。醜い。彼らの星に蔓延る偽善の声の、なんと耳障りなことか。
だから、敢えて、リンリを育むことを恐れた。
キチンと身なりを正したタチの悪い偽善なんか見たくもないから、そんなものを目の当たりにするくらいなら、ありのままの醜さを愛そうじゃないか、と。
それで、どうですか?リンリのないセカイは、どうでしたか?
ヒトがヒトを殺しても、なにも、ない。罪悪感も懺悔も後悔も贖罪も、ない。
そんなセカイが、あなたには美しく見えましたか?
さあ、今説かん!あなたに耳らしい耳なんて生えてないんだし、だったら塞ぐことも不可能。
今からあなたにリンリを説きます。
さて、どこから話そうかなあ。
あなたはこれから、リンリを知る。再び、リンリという概念をその身に浴びる。
そうしたらあなたは死ぬ。死んでどうなるかは見物ですね。大丈夫!あなたはきっと、新たに生まれ変われますよ。変革の時、来たり!楽しみですね。
さあさあ、また一から、長く永いセカイを創ってみましょうよ。
聡明なあなたならきっとやれますから。
──はい…はい?
──あなたが、わたしに、おしえを、とく?
ええ、今日からボクが、あなたの"せんせい"です。
──はい、わたしは、あなたに、おしえを、こう。
何故なら?
──はい、なぜなら、あなたが、わたしの、せんせい、だから。
ふふ、よく出来ましたね。はなまる。
では、そうですね…。0048ばんくん、号令お願いしまーす。
きりつ、れい。
せんせい、おねがいします。
ちゃくせき。
さぁさ皆さん、教科書の2ページを開けて。リンリの授業の、はじまりはじまり〜。
創造主先生ヴァーサス時空探偵 和泉ほずみ/Waizumi Hozumi @Sapelotte08
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