不死なる少年【3】
<side:竜崎>
「そうだな…まずは、5年ほど前に僕がいなくなったことから話そうか…。」
僕はそう言うと目の前にいる二人…野球バカこと的場と真弓さんへ。いなくなってからの5年間について話す事にした…。
そこで、僕が居なくなった事を話そうと思った時に先に説明をしなければいけない事を思い出した。
「あ、そうだ…その前に大事な話をしなきゃいけないんだった…。」
「ん?大事な事って?」
直ぐに反応したのは的場だった。
「えっと…アニメとかラノベとかでよくある転生物の話は知ってるかな?」
「あ、あぁ…一応、こんな世界になってからは、その手の話をよく知る人から聞いたりはしているが…。」
「うん、化け物だらけの世界になって、化け物倒したら黒い霧になったりしたからヒー君に教えたよ。
まぁ、私以外にも、何人かいたけどね。」
ヒー君って誰?と思ったが、おそらく的場の事だろう…と思い、そのまま話を続ける事にした。
「なら、話が早いかな?えっと…僕はその転生者ってヤツなんだ。
しかも、地球ではなく別の所…メルホトって世界からの転生者なんだよ。」
一瞬の間が空き、我に返ったのか、二人ともしゃべり出す。
「…そ、そうなのか?」
「そうなの?もしかして、竜崎君があの化け物達と戦えたのって、その…転生者だから?」
「うん、真弓さんの言う通りだよ…世界が可笑しくなって魔物達が出てきた時、僕は運悪く死に掛けて…ちょうど、その時かな?前世の記憶が甦って戦い方を思い出す事が出来たんだ…幸い、回復魔法の使い方も思い出してたから何とか怪我を治す事が出来たんだけど…魔力の使い過ぎで、一人で戦うのは無理だった…だから、二人に協力して貰ったんだ。
まぁ、予想以上に弱体化しちゃってたから、オーガみたいな雑魚を相手に苦戦しちゃったけど…。
まぁ、身体が慣れていなかったから調整に手間取っちゃったってのが本音かな?」
「あ!もしかして、竜崎君がとんでもない動きをしたのって…。」
「うん、僕の前世での職業が暗殺向きの職業でさ。
その関係で覚えてた短距離転移ってスキルを…まぁ、魔法に近いのかな?
それを使っていたんだけど…転生した後、魔物なんて殆ど倒せなかったからレベルが低くて、魔物を倒すのに苦労したけどね。」
「魔物…やっぱり、あの化け物って魔物だったんだッ!」
真弓さんが『やっぱり』と言ってる所を見ると、どうやら予測していたみたいだ。
「ん?真弓、どう言う事だ?」
「もう!ヒー君、私、何度も説明したよ?」
「そ、そうだったっけ?」
やはり、先程、思った事は正しい様で、的場の事を真弓さんはヒー君と呼んでいる様だ。
「そうなの!」
「ゴメン、真弓さん…僕にも分かる様に話してくれると助かるんだけど…。」
「あ、そ、そうよね…。」
真弓さんが苦笑いしながら、僕の方へ向いた。
「えっとね?ヒー君は忘れちゃったかも知れないけど…私達、あの後、竜崎君を捜しにダンジョンへ向かったんだ。」
「あ、そうそう…まぁ、1週間後位にあの神様ってヤツがダンジョンが出来たって言うからだけどよ。」
「あ~…確か、マルマッテだっけ?」
「竜崎君、マルマッテじゃなくてマルマッタだよ?」
「あ~…マルマッタだったか…それで?」
正直な話、あんな神の名前なんて、どうでも良いのだが…。
「それでね?そのマルマッタがダンジョンから色々な物がドロップするって聞いて、竜崎君を捜すついでに化け物…竜崎君の言う魔物を退治したんだ…。
その時に、変わった石をドロップしたんだよね~。
で、竜崎君が言ったアニメやラノベだと、この手の石…魔石って言うんだっけ?
とにかく、こんな石を落とすのが魔物って認識でしょ?」
「えぇ、その通りですね…あ、ちなみにそのドロップした石は魔石で合ってますよ。」
「そうなんだ!」
「はい…ですが、どう言う訳か、こっちの世界では、ダンジョンの中の魔物からしか魔石はドロップしませんけど…ね。」
「あ、あのさ…悪いんだけど、俺にも分かる様に話してくれないかな?」
今まで黙っていた的場が、情けない声で言ってくる。
あ~…珍しく黙って聞いてるから分かってると思っていたが、逆に分からないから黙っていたのか…。
「的場…もう少し、今の世界を勉強しような?」
「竜崎、お前…そんな哀れむ様な目で見るなよ…。」
「ヒー君…。」
「ま、真弓まで…。」
「あははは、ごめんなさい。」
「クックックッ…相変わらず、二人とも仲が良いですね。」
僕は二人をからかう様に言う…だが、今回ばかりは、あまり意味がなかった様で…。
「ま、まぁ…な。」
「うん♪竜崎君には悪いんだけど、アレから2年ほどしてから私達結婚したんだ。」
そう言われて、僕は改めて真弓さんを見る。
「えぇ、まぁ…それは真弓さんを見たら何となく分かりましたよ。」
「だ、だよね?」
真弓さんはそう言って、嬉しそうに自分のお腹をさする。
そう…今の真弓さんのお腹は、最後に合った時と比べ、明らかにポッコリと膨らんでいたからだ。
まぁ、それ以外にもこの部屋に入る時、最初、的場の事を『あなた』と呼んでいたし、的場君だった呼び方も、今では『ヒー君』と呼んでいる事からも、普通なら分かると言う物だ。
まぁ、少しだけショックはあるが今更だ…なので、ここは素直にお祝いの言葉を述べておこう。
「はい、ですので…改めて、結婚おめでとう御座います。
まぁ、相手が的場なんかで良かったのかとツッコミを入れたい所ですが。」
「り、竜崎~ッ!」
「冗談です。」
「なぁ、竜崎…久しぶり会ったってのに、性格悪くなってないか?」
「あ~…そうかも知れませんね。
何せ、こっちは5年間一人でしたから…。」
「そう、それ!お前、5年もの間、何処で何をしてたんだよ!」
「…コレだから野球バカは…それを今、説明しようとしてるんだろ?」
「ヒー君…。」
「クッ…真弓までそんな目で…。」
「「プッ!アハハハ。」」
そんな的場の情けない姿に、僕と真弓さんは同時に笑いを抑える事が出来ずに笑い出してしまう。
「アハハハハ…はぁ~、やっぱ、的場はこうじゃないとな。」
「うん、でも竜崎君…本当に少しみない間に、性格悪くなったんじゃない?」
「どうなんでしょう?でも、正直、自分じゃ分からないですよね…。
自分で言うのも何ですか、本物の僕と言って良いか怪しいので…。」
「え?それって…どう言う事?」
「それを踏まえて説明しますよ…まぁ、少し長くなるかも知れませんが…。」
僕はそう言うと、今度こそいなくなった原因を彼等に話し始めるのだった…。
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