不死なる少年【4】

<side:竜崎>


 メルホトからの転生者と言う事を伝え終えたので、改めていなくなった理由を二人に話そう事にした僕は、説明する前に一つだけ忠告する事にした。


「さて、これから僕が居なくなった理由を説明するんだけど、一つだけ忠告する事がある。

 説明はその後で良いかな?」

「あぁ、もちろんだ…今は少しでも情報が欲しいからな。」

「うん、私もヒー君と同じで問題ないよ。」


 うん、二人から了承が得られたから忠告と説明を開始するとしよう。


「まず最初に…先ほども言った忠告だけど、僕の転生前にいたメルホトとは似たシステムではあるが、全くの別物と言って良い程、違うシステムだって事が判明したよ。

 その為、僕の知っている知識が十全に発揮出来なかった代わりに、新しい事も知れたのは僥倖ぎょうこうだったと思う。

 まぁ、そう言う意味では良くも悪くも、この世界の神とやらは僕の居た世界の神よりだと言う事だね。」

「すまん、言ってる意味が分からん。」

「ヒー君…竜崎君、ごめんね?とりあえず、ヒー君は無視して良いから、説明を続けて?」


 真弓さんの的場に対する態度に、どう反応して良いか迷ってしまう。

 とは言え、まだ説明すら始まっていないのだから、確かに無視しても良いかもしれない。


「うん、分かった…的場はともかく、真弓さんが聞いてるから続きを話すね。」

「な、なぁ…俺の…「うん、お願い。」」


 的場の台詞に被せる様に真弓さんが台詞を重ねてきた。

 ちょっと涙目になってる的場が不憫に思えるが、今は無視する事に決めた。


「先程の忠告の続き…になるけど、僕の居た世界…。

 まぁ、前世の世界なんだけど、その世界では神が僕達、人族をゲームの駒にして遊んでいた世界だったんだよ。

 その為、如何に強くなって生き残るか…が重要になってくる世界だったんだ。

 当然、そんな世界を認める訳にはいかずに多くの人…以外にも、多くの魔物達が命を散らしていった…。」

「ひ、酷い…。」

「………。」


 やはり、今の世界の人は平和な世界だった事もあり、哀れんでくれる様だ。

 まぁ、だからと言って、どうこう言う訳でもないのだが…。


「と、とりあえず…それは、どうでも良い事なんだけど…。

 僕達の世界では魔物を倒しレベルを上げる事により強くなる事が出来た…その為、こっちの世界が変化した時に、真っ先に自分のレベルを上げ二人にも戦って貰う事により、この…そう言えば、ここって町なのか?それとも村?」

「一応…町と言いたいが、人数が少ないから、今は村…かな?」


 と、的場が答えてくる。


「うん…でも、今は周囲の魔物を討伐出来る人が増えたから、少しずつだけど拠点を大きく出来てるから、もう町と呼べる様になるんじゃないかな?って思ってるよ。」

「了解…で、二人に戦える様になって貰って、この村を守るだけの力を手に入れて貰ったんだよ。

 まぁ…正直、二人だけレベルを上げて後は二人に任せるってのは結構、無理があったんだけど…何せ、時間がなかったからね…無責任だけど、二人に押し付けちゃったのは悪かったと思ってるよ。」

「時間って?」

「もしかして、その時間ってのが竜崎君が居なくなった理由なの?」


 流石、野球バカだ…真弓さんは僕の話に、しっかり付いてきているのに、的場は付いて来れていない様だ。


「うん、魔物が出てきてた時に、直ぐにダンジョンが出来ていたのは気が付いたんだけど、僕自身、レベルが弱かったからね…数少ない友達である二人を助ける事で僕のレベルも上げさせて貰った。」

「竜崎、それって俺達を利用したって事か?」

「そうだね…それは否定しないよ…。」

「で、でも、そのお陰で私達は助かったんだよね?」

「あ、あぁ、それは俺も分かってる…だから、それについては責めるつもりはない。

 ただ、俺が言いたいのは、何で俺達を置いて一人で居なくなったかって事だ!」

「ヒー君…。」


 的場の叫びに、真弓さんの目に涙が浮かぶ。

 おそらく、的場だけじゃなく真弓さんも同じ気持ちだったのかも知れない。


「それについては、僕も悪かったと思う…だけど、二人を連れて行ったら誰が生き残った人達を守るんだい?

 それに、あの場には的場…お前の家族もいたんだろ?」


 一瞬ではあるが、的場の妹や両親が居たのを僕は確認済みだ。

 残念ながら、あの僅かな時間では、真弓さんの家族の安否までは確認出来ていなかったが…。


「その人達が死ぬかもしれないって時に、二人を連れて行くなんて選択肢が僕には無かったんだよ。」

「そ、そうか…。」

「そ、そうよね…それに、結果的に竜崎君が私達を置いていったからこそ、今のこの村があるんだから…。」


 そう言って悲しそうにする真弓さんの顔を見て、少し胸が痛くなった。


「とりあえず、話を戻すよ?

 僕があの時、急いで居なくなった理由は、さっきも言ったけどダンジョンの気配を感じていたからなんだ。」


 僕がそう言うと、的場と真弓さんが互いの顔を見てから僕の方を向いた。


「ど、どう言う事なんだ?」


 的場が僕に聞いてくる。


「今回…と言って良いのか疑問だけど、最初に今回出てきた魔物達だけど、何処から出てきたと思う?」

「…ま、まさかッ!?」

「ダ、ダンジョンから?」


 まぁ、先程からダンジョンの話をしているのだから、分かって当然とも言える。


「うん、正解…その通りだよ。

 僕の居た世界では、ダンジョンから魔物が溢れ出してきて、近くの村や町を襲っていた。

 もっとも、普段からダンジョンの中の魔物を討伐するする際、数が少なかったら…と言う条件が付くけど…ね。

 それを踏まえて話をするのなら、この世界にダンジョンが出来たのはあの日だったはずなんだ…。

 だとすれば、まだダンジョンが成長していないあのタイミングが一番ベストだった筈なんだ。」

「ん?竜崎、今、変な事を言わなかったか?」

「変な事とは?」

「いや、ダンジョンが成長していないとか何とか…。」

「も、もしかして…ラノベとかに良くある様に、ダンジョンって成長するの?」

「うん、成長するよ…だから、本当に時間がなかったんだ。」

「「………。」」


 その言葉にショックを受けた二人…暫くの間、待合室の中に沈黙が生まれた。

 どうでも良い事だが…何故、待合室なのだろう?

 普通、お客と話す部屋と言うのは応接間とか呼ばれるんじゃなかったか?


 もしかしたら、野球バカが間違えて呼び名を決めたのかな?


 だとしたら、この話が終わったら訂正して置いた方が良いかもな…と、そんなどうでも良い事を二人がショックから立ち直るまで僕は考えていたのだった…。

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