不死なる少年【2】

<side:的場>


 ダンジョンで見付かった見知らぬ少年…俺と真弓さんを会わせろと言う少年がいると報告を受けた俺は、その少年に会う為に、待合室へと向かう。

 ただ、個人的に1人だけ心当たりがある。


 もっとも、その少年とは5年程前に別れたきり会っていない。


 いや、会っていないと言うよりは、その少年を探す為にダンジョンを攻略しようとしていると言っても過言ではない。

 そんな中、突如として現れた少年に、絶対に会わなければいけないと言う危機感に見舞われていた。


『コンコンッ、ガチャッ!』


「失礼する!」


 俺は、そう言って待合室に入ると部屋で待っているであろう少年を探した。


「やっと来たか…遅いんだよ、野球バカ!」

「誰が野球バカだ、カゲ男!」


 久しぶりな…それでいて懐かしいやり取りである。

 あの日、世界が改変されてからなので、5年ぶりと言っても過言ではない。


 そんな懐かしさを胸に、俺は竜崎の姿を探す。

 だが、竜崎の姿が見えない…それに、先程の声…幼さの残る声だった気がする…。


「り、竜崎?」

「ん?どうした、的場?」

「い、いや…以前から影が薄かったけど…姿が見えないから、どうしようかと…。」


 そんな俺の質問に竜崎は『ハァ…。』と小さなため息をついて俺に話しかけてきた。


「ったく、野球バカはこれだから…そんな所に突っ立ってないで、こっちに来い!」


 そんな竜崎の言葉に従い、声のする方…ソファーの方へと歩いていく。

 すると5歳ほどの小さな少年がソファーに寝転がる様に座って寛くつろいでいた。


「…はい?」


 先程からの喋り方で竜崎本人だと思っていたのに、目の前に座っているのは5歳ほどの少年…そんな状況に、俺の頭はパニックになりかけていた。

 だが、そんな事態でありながら、更なる厄介事が舞い込んできた。


『ガチャッ!』


「あなた、見付かった少年は!?」

「ま、真弓?な、何で此処にッ!?」

「何でって…あなたが呼んでるって言われたからだけど?」


 真弓に言われて、先程、伝令で来た男に真弓を待合室に呼ぶ様に言ったのを思い出す。


「やぁ、真弓さんお久しぶりです。

 って言うか、野球バカを『あなた』とは…僕がいない間に、結婚でもしましたか?」

「も、もしかして…竜崎君ッ!?

 アレ?でも、何処にいるの?」

「ま、真弓さんもですか…もう良いです…。

 それより真弓さんも、こちら…ソファーの方へ来てください。」

「は、はい!」


 バツの悪そうな顔で返事をした真弓は俺の横に来ると、俺同様に目を丸くして竜崎を見た。


「そ、そんな…竜崎くんが、子供になっちゃった…。」

「いや、まぁ…確かに、今の僕は子供ですが…って、そうじゃなくてですね?

 自分で言うのも何ですが、こんなガキが竜崎ですって言って、はいそうですかって信じちゃうのは普通に考えてダメでしょ?」

「ん~…でも、子供の姿をしてても竜崎君なんだよね?」

「えぇ、一応…ですが…。」

「ん?竜崎、『一応』とは、どういう事だ?」


 一応…と言う言葉に疑問を感じた俺は、考えても分からん…と、竜崎に聞いてみた。


「だから、それを説明する為に2人を呼んだんだよ…。」

「そ、そうなんだ…。」


 真弓が、少ししょんぼりしながら頷いた。


「それで…何がどうなってるんだ?」


 俺は、真弓を庇うかの様に、竜崎に続きを催促してみた。


「そうだな…まずは、5年ほど前に僕がいなくなったことから話そうか…。」


 竜崎はそう言うと、俺と真弓にソファー座る様に勧めて来た。

 ここは俺の…俺達の部屋なんだが?と思った物の、大人しく座る事にした。


 どうやら、これから話す内容は、俺や真弓が思っている以上に、ややこしい話になるみたいだった…。

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