世界改変【12】

<side:的場>


 神を名乗る者が再び顕れてからと言う物、生き残った者達は戦う術を手に入れる為、協力して狩りをしていた。


 そんな中でも、初日から多数の化け物(今では魔物と呼ばれているが)を多数、倒している者達は、2日目から狩りを始めた者達とは格段に強くなっていた。

 そして、彼等もまた…。


 竜崎がいなくなって、既に1ヶ月が過ぎようとしていた。

 とは言え、今はまだ竜崎を探しに行けない…そう的場は考えていた。


「リーダー!ちょっと良いか?」

「ん?どうした?」


 俺は、同じグループに所属していた大西に呼び止められ振り返る。

 大西は斥候…偵察部隊を率いているサブリーダーの一人だ。


「ダンジョン攻略組から救援要請が来たんだが…。」

「まさかッ!?」

「あ~…リーダーが探しているってヤツの情報じゃないぞ?」

「何だ…違うのか…。」


 俺は、そう呟くと、ガックリと肩を落とす。

 だが、次の言葉は別の意味で驚く事になる。


「そんなにガッカリするなよ…って、そうじゃなくて!

 ダンジョン攻略組が下層…第二階層への階段を、とうとう見付けたんだッ!!」


 そう…世界改変が始まって1週間が経ち、神を名乗る者から告げられたダンジョンの話…。

 この狂った世界になってからと言う物、食糧の確保が難しくなった。

 更に言うなら、電気も止まり家電製品と言う物が、使い物にならなくなってしまった。


 まぁ、コレに関しては発電所からの電気の供給が止まってしまったのだから仕方がないと言えるだろう。

 だが…当然、電気が使えないのだから、電気で動く水道も使えなくと言う事と同意語だ。


 その為、所謂、オール電化の家を重点に捜索が開始された。

 何せ、オール電化の家にはソーラーパネルが屋根の上にあり太陽光により発電…電気が作られるからだ。

 その為、生きていく為の最低限のライフラインが確保できるようになっている。


 そして、こんな世界になっても有効だったのが本屋にあるサバイバル関連の本だった。

 何せ、物によっては単純なサバイバル技術だけではなく食べられる草やキノコなんかも載っている。

 そうした物を頼りに、僅かながらも食糧を確保出来た者達の活躍によりダンジョン攻略が開始される事になったのだった…。


 とは言え、コレに関しては、神を名乗る者の言う通りダンジョンから様々な物が手に入る事が証明された事により、生き残った人々にとっては僥倖だった。

 何故なら…神を名乗る者の言う通り、ゲームみたいに色々な物…食料すらもドロップする事になったからだ。


 そして、その事を確認した俺達は…ダンジョンを攻略する為の組織のリーダーを任される事になる。

 まぁ、最大の理由は初日に現れた魔物…オーガに対し僅かで戦い勝利したからだ…その為、俺達は人類の希望となった。


 正確にはで倒したんだけど…と、何度も言ったのだが、竜崎の姿を誰も見ていなかった為、信じて貰えなかったと言うのが真実である。


 俺は不思議に思った…何故、みんなの記憶から竜崎の事が消えているのか…と。

 とは言え、今はそんな事を考えている場合じゃない。


「そ、それは本当なんだな?」

「は、はいッ!攻略組からの情報に寄りますと、C班が強い個体を倒した後、階段が現れた…との事です!」

「そうか…ついに下層への階段が…。」


 俺は、この一ヶ月間の事を思い出す。

 長かった…だが、これでやっと先に進める。

 そう、竜崎を探しに行ける…と、喜んだのだ。


「よしッ!みんな一度、拠点に帰るぞッ!!」

「「「おぉーーー!」」」」


 ダンジョンではなく地上で魔物を狩っていた俺は、同じく地上で魔物を狩っていた仲間に声を掛ける。

 その声を聞いて、仲間達が吠えた。


 何故なら、初日に襲撃してきた魔物のボスであるオーガを討伐した事により、自分たちを守る象徴…『英雄ヒーロー』として期待されていたからだった…。


○●○●○


 数時間後、拠点に帰った俺は直ぐに自分の部屋の前まで戻ってきた。


『ガチャ!』


 そして、部屋のドアを勢いよく開けた。

 鍵が掛かっていない所を見ると同居人は帰ってきている様だ…。


「お帰り、的場君!」

「ただいま、真弓!それで…下層への階段を見付けたんだって?」


 先程、連絡があった攻略組の事を聞いてみる。


「えぇ…まさか、今まで下層への階段が見付からなかった理由が、特定の魔物を倒さないと見付からない階段…とは思わなかったけどね。

 でも、これで私達は先に進める…って、そっちはどうだったの?」

「あぁ、こっちは今の所、特に何も無し…かな?

 ただ、拠点のみんなも順調に力を付けてきたから俺達がダンジョンに潜っても問題はないと思う。

 それに周囲の魔物は、大体、退治出来たみたいだから、しばらくは安全だと思う。

 コレなら俺達がダンジョンに潜っても対処出来ると思うよ。」


 そう、俺と真弓が別れて行動している理由…それは、戦いの指導と探索を分けて効率化を図っていたのだ。

 その為、村と呼ぶほどまで縮小してしまった俺達の住処を守るのと同時に、個々で戦える様にする為の訓練を兼ねた守備隊。

 それと、ダンジョンから生活するのに必要な食料を調達すると共に、ダンジョンを攻略する攻略組とに別れたのだ。


 余談ではあるが、守衛組に俺がいるのは攻撃力が一番高い為、強敵が出ても被害を抑えられるからである。

 逆に、攻略組に真弓がいるのは、守衛組で戦力として認められた者達が入り乱れるダンジョン内で的確にフォロー出来るのが真弓しかいなかったからである。 


「そっか…なら、明日からダンジョン攻略に的場君も参加するんだね?」

「あぁ、絶対に竜崎の野郎を見付け出すッ!

 んでもって、俺達を置いていった罰として殴るッ!!」

「ははは、でも、私達だって強くなってるんだから力加減間違えちゃダメだよ?」

「そうだな…今じゃ、俺達は英雄だから…。」


 1ヶ月前までは只の高校生だった。

 それが、今では、一つの村?を守る守護者…英雄である。

 だが、そんな重圧プレッシャーも、もう終わりだ…。


 待ってろよ、竜崎…必ず見付け出すからな!

 既に死んでいるとは微塵にも思っていない俺達はそう心に誓うのだった…。

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