世界改変【11】

<side:的場>


 消防署を襲っていた化け物達はボスであるオーガが倒された事により、まるで何かしらの支配から解放されたかの様に散り散りに逃げていった。

 そして…俺と真弓は、みんなの安全を確保出来た事により、当初の予定通り、ある事をする事にしたのである。


「なぁ、真弓…文章って、コレで良いと思うか?」

「どれどれ…う~ん、多分、良いんじゃないかな?」


 俺が真弓に確認をして貰った物とは、スマホのアプリの一つである『Zwitter』と言う『今、何してる!』とか『何々に対して意見求む!』みたいな事を発信するアプリである。

 そして、その投稿用のフレームには以下の事が書いてあった。


〔皆さん、神と名乗る者が顕れてから化け物が出てきましたが、そちらはどうですか?

 こちら、菟狭うさ市の避難場所である消防署からの緊急発信です。

 皆さんの中で、化け物を倒した人が何人いるか分かりませんが、現在分かっている情報を発信したいと思います。

 化け物を倒すのに必要な事ですが、直接的に殴り付けたり斬り付けたりする必要があります。

 また、石とかを投げ付けるのも有効です。

 ですが、他の道具を使ったりして本人の力が関係しない攻撃は全て無効となるようです。

 その為、車で轢いたりしようとしてもダメージを与える事が出来ません。

 同様に、消防車の放水でもダメージを与える事が出来ませんでした。

 更に言うなら…警察の方にも聞きましたが、銃も効かないそうです。

 これは俺の友達が気が付いた事ですが、彼の言う通りにした事により俺達は生き残る事が出来ました。

 そう言う訳で、このズイッターを読んだ方は、拡散をお願いします!〕


 正直な話、俺的には、もっと良い文章に出来るのでは?とは思ったが、生憎、文才はない。

 更に、今、この瞬間にも化け物に襲われているであろう事実から、1分1秒無駄に出来ない。

 何せ、今現在ネット環境は生きているとは言え、いつ使えなくなっても不思議でないのだから…。


 そして、ひとまずではあるが真弓からのGOサインが出た事により、ポチッと送信ボタンを押したのである。


 1分、5分、10分…時間が過ぎていく。


 そして、30分が過ぎようとした頃、俺の発信したズイッターに対し、リズイートが急速に増え始めた。


 内容としてはありふれた物ではあるが、其処に書かれていた内容はどれも感謝の言葉だった。


 『グッジョブ!』『マジで倒す事が出来た!』『お前は英雄ヒーローだ!』『こちら陸上自衛隊、轟少佐だ、貴殿の協力感謝するッ!』等…様々である。


 中には『ナイフ!』と書かれているのもある。

 おそらくナイスと打つはずだったのを、急いで返事したのであろう打ち間違いも多々あった。

 それでも、微かにではあるが化け物に対する防衛手段を、多くの人類が手に入れた瞬間だったのである…。


○●○●○


 化け物が地上に顕れてから一週間が経過した頃、自称:神を名乗る者…マルマッタは再びその姿を見せた。

 もっとも、姿を見せたと言っても空に映る映像だけではあるが…。


【やぁ、みんな、元気に過ごしてるかな?

 世界の人口が1/1000を下回ったから、ひとまず試練は終了するね?

 それから、既に気が付いている人もいるとは思うけど、君達の言う化けモンスターの倒し方は『己の力を使って倒す事』だから、君達の言う科学の力では倒せないからね?

 それと、魔物の所為で、今までの生活が出来なくなるだろうと思って、君達にプレゼントを用意したよ。

 もしかしたら、君達の中には既に知ってる人もいるかもだけど…そう『ダンジョン』だ!

 ダンジョン内の魔物は稀にアイテムを入手ドロップする事もあるから頑張って倒せば、生活が豊かになると思うよ?

 そんな訳で、もう君達には期待はしてないけど頑張ってね~!】


 マルマッタはそれだけ言うと、姿…と言うか、映像を消した。


 そして、それは…あの消防署を守りきった英雄達の内の二人…俺と真弓の目にも留まる事になる事となる。


「なぁ、真弓…もしかして、竜崎のヤツ…。」

「うん…竜崎君の事だから、多分、ダンジョンに向かったんだと思う…。」

「やっぱりそうか…だったら、俺達もダンジョンに行こう!」

「うん!そんでもって竜崎君に文句言わなきゃッ!」

「よっしゃッ!そうと決まれば情報を集めるぞッ!!」

了解ラジャーッ!」


 何とも緊張感のない会話に聞こえるかもしれないが、俺達の顔は真剣そのもの…そもそも、この世界には自称:神マルマッタの言う魔物が存在してなかったし、ダンジョンと言う物も存在していない。


 それに、世界が改変されてから一週間が経過した今、もう機械文明の大半が使い物にならない。

 当然、ネット環境もなくなった…それに、国としての機能も失われている。

 とは言え、機械文明が無くなったとは言え、文明そのものが失われた訳ではない。


 そして…日本と言う国は、ファンタジー系のライトノベルやRPGゲームが普及している事もあり、無駄に色々と知識がある。

 その為、生き残った人の中で、そんな知識を持つ人達が先頭となり、幾つかの村や町…更には大きな街が作られていく事になるが、それは数年後の事となる。


 そして…彼等はダンジョンに潜る様になる…。

 そう、光に集まる虫達の様に…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る