世界改変【10】
<side:的場>
俺は目を閉じた…そして、竜崎が言った様に、自分の中にあるであろう何かしらの力を探る…だが、俺には、それが何なのか分からない。
「クソッ!何で、俺には分からないんだッ!!」
こうしてる間にも、竜崎が傷だらけになりながら命懸けで囮になっているのだ。
それなのに簡単に諦めて良いのか?良い訳がないッ!
自分自答を繰り返しながら、何度も何度も自分の中に眠っているであろう力を探す。
それでも、竜崎の言う力とやらが俺には分からない…刻一刻と時間が過ぎていく。
焦りが焦りを生み、その焦りによって、さらに分からなくなってくる。
「的場君ッ!」
「ははは、真弓か…竜崎が俺には眠ってる力があるって言ってんのに、俺、それが何なのか分かんないんだ…情けないよ。
これでも、俺、頑張ってんだよ?でもさ、俺には無理なんだ…本当はそんな力なんか無いんじゃないかって…。」
『パーンッ!』
音だけで、痛くはない…だが、その衝撃は俺の頬から意識へと衝撃を与えた。
「ま、真弓?」
「的場君のバカ!バカバカバカッ!」
『ギュッ!』
「えッ!?」
真弓にビンタを喰らい、バカの連発…そんな唖然としている俺を、真弓は力強く抱き締める。
その事に、ビックリして間抜けな声を上げてしまった。
「ねぇ、竜崎君が的場君には眠ってる力があるって言ったんでしょ?」
「あ、あぁ…言った。」
「だったら、きっと的場君の仲に、秘められた力があるんだよ。」
「で、でも、俺にはそれが何なのか分からないんだ…。」
「だ、だったら、私も一緒に感じてあげるから、もう一度、竜崎君を信じてみよ…ね?」
「あ、あぁ…うん…。」
次の瞬間、真弓は俺の額に、自分の額をくっつける。
少し動けば、キスが出来てしまいそうな程、真弓の顔が近くなりパニックを起こし掛ける。
「どうしたの?」
「い、いや、何でもない…。」
「そう?変な的場君…って、こんな事してる場合じゃなかった!
的場君、私も一緒に頑張るから、的場君も頑張って!
私、的場君の事を信じてるから!」
我ながら単純だと思う…自分の好きな子が俺を信じ励ましてくれる。
たった、それだけの事なのに、心が激しく燃えているにも関わらず、それでいて驚くほど落ち着いているのが分かる。
そして、真弓を守りたい…そう思った瞬間…。
『ピキーンッ!』
「い、今のは?」
確かに感じた微かな力…だが、一度、認識してしまえばそれからは早い。
集中、集中、集中…俺が4番バッターになった理由の一つに、その異常なまでの集中力がある。
切っ掛けをくれたのは真弓だ。
だが、この状態になった俺の集中力は凄まじく、周りの音が一切聞こえなるほどの集中力を引き出すのは朝飯前の事。
そして、その力を認識した彼は、更なる集中力を引き出す事になる。
「うおおおぉぉぉぉぉぉおおおおおッ!!」
『バチバチバチッ!』
不思議な事に気合いと共に、俺の身体から光が立ち上る。
竜崎は何と言った?この力を剣に乗せてオーガにぶつけろ?
「あぁ、竜崎…やってやるぜッ!!」
次の瞬間、的場の持つ剣に光が少しずつまとわりついていく。
「まだだ、まだこんな物じゃない…もっと、もっとだ…。」
まだ足りない…この程度じゃ、オーガに傷は付ける事が出来ても、倒す事なんて不可能だ…。
もっと、もっと…竜崎が命懸けでオーガの囮をしているんだ。
俺だって、命を賭けるんだッ!!
次第に剣にまとわりつく光が増していく。
「ま、的場…君?」
それを見ていた真弓は、的場に物語の勇者を連想していた。
○●○●○
<side:竜崎>
クソッ!こうじゃない…僕の力はこんな物じゃない…もっと…もっとだ!
これも違う、もっとこう…身体の中からだけじゃなく、外からも集める様に…。
的場に眠る力が目覚めるまで時間稼ぎ、そう思いながら僕は命懸けで、オーガの攻撃を躱し、時には蹴りつける様にする事によりオーガのヘイトが的場に向かわない様にしていた。
とは言っても、かろうじて左手が動く物の、ほぼ両手は使い物にならない状態だ。
その所為で、動きに制限が掛けられ、段々と躱すのが困難に成ってきていた。
それでも僕はその痛みに耐え、オーガの攻撃を躱す。
そして…僕もまた、的場同様に、己の中に芽生えた新たな力を自分の物にしようと試していた。
試しては失敗、失敗しては試す…何度も何度も繰り返されるトライ&エラー…。
そして、何十回かの失敗を繰り返した結果…。
『ボッ!』
微かではあるが小さな炎が一瞬だけ灯る。
「これ…かッ!」
そして、自分の力の使い方を理解した竜崎は横目で的場を見る…。
その竜崎の身体は光を纏いだしている…力に目覚めた証拠だと言えよう。
ニヤリ…と、我ながら邪な笑顔が顕れたのを感じた。
「真弓さん、オーガに仕掛けますッ!援護をッ!
それから…的場、これがラストチャンスだ!今度は
援護射撃として放った真弓の矢が、僕の頬スレスレの所を飛んでいき、オーガに突き刺さる。
だが、オーガの防御力が高く、表面に刺さっただけ…それでも、僅かにオーガの動きを阻害する。
その結果、ヘイトが真弓に向く…だが、そうはさせるか!とばかりにオーガの顔面を蹴りつけ、オーガの後ろへ移動する。
その為、オーガは俺を追う様にして、背中を的場に向けた。
「今だ、的場ッ!!」
「うおおおぉぉぉぉぉぉおおおおッ!!」
叫びながらオーガに突進を始める的場…だが、そんな的場をオーガが黙って待つはずがない。
オーガが的場を迎え撃とうとした瞬間…。
「お前の相手は、俺だーーーーッ!!
喰らえッ!ファイアートルネードッ!!」
『ゴボワーーーッ!!』
この世界が神により改変された事により今まで無かった力…それは、この世界で初めて俺に使用された魔法の力。
周囲の風を吸い込む様にして炎の竜巻を作り出す。
そして、その炎の竜巻に飲み込まれるオーガは…。
『ドシャ…。』
炎の竜巻に全身を焼かれたオーガ…しかし、それでも生きていたオーガは、あまりのダメージにより膝を付いた。
そして…その最大の隙は、オーガに向けて走り込んで来た的場に取っても、最高のタイミングとなる。
そして、的場は大きな声で技の名を叫んだ。
「一刀両断ッ!ガイアブレイクッ!!」
掛け声と共に振り下ろされる的場の上段の構えから一刀…そして、それに呼応するかの様に、剣が光る。
『ズパンッ!ドガガガガガ…。』
その威力は凄まじく、オーガをまるでバターでも斬るかの様にスパッ!と斬ったかと思うと、そのまま道路まで斬り、尚かつその衝撃波で道路を10mほど切り裂いていいくとその光は霧散した。
化け物の群れを引き連れていたボスのオーガが倒された事により、化け物達は、消防署や人々を襲うのを止め、散り散りに去っていく。
その様は、まるで何かに操られていたのが解けたかの様だった…。
○●○●○
<side:的場>
「やった…な、的場…。」
「あぁ、竜崎…お前のお陰だ。」
俺の強烈な一撃を受け、オーガは黒い霧と化して
それにより、オーガを倒した事を実感し、俺達は互いを称えていた。
そして、そんな俺達の元に一人の少女が走り込んできた。
「的場君、竜崎君ッ!」
「「真弓 (さん)ッ!?」」
俺達の名前を呼んだかと思うと、そのまま抱き付いた真弓、その瞳には涙が溜まっていた。
「もう、二人とも、無茶しすぎだよ…私、二人が死んじゃうんじゃないかって、ずっと心配したんだからねッ!!」
「ご、ごめん…真弓…。」
何とも気恥ずかしいと言うか、どう対応して良いか分からない状態に追い込まれてしまう。
だが、竜崎は違った様だ…。
「大丈夫ですよ、真弓さん…貴女の事は的場が必ず守りますから。」
「り、竜崎…君?」
竜崎の言葉に、違和感を感じた真弓が竜崎を見る。
だが、それよりも早く竜崎の姿がブレる…そう、今まで俺達が何度も見た光景だ。
今までは頼もしかった光景…でも、今は不安でしかなった…。
「ごめんなさい…僕にはまだやる事があるんですよ。
ですから、二人には避難した人達を守って欲しいんです。」
と、二人から少し離れた場所に顕れた竜崎が俺達に向けて言う…。
「竜崎、お前、さっきから何言ってんだよ…まるで、いなくなるみたいじゃないか!」
「悪いな、的場…いなくなるみたい…じゃなく、いなくなるんだ…。
だから、真弓さんはお前に任せた…二人で幸せになってくれ…。」
「「竜崎(君)ッ!?」」
再び竜崎の身体がブレる…そして、更に数m離れた所に、その姿が顕れた。
「的場ッ!お前はここで
彼等を…そして真弓さんを守ってやってくれ!
つー事で、真弓さん、的場と仲良くね?じゃーねッ!」
そして、竜崎の姿がブレる…その後、彼等は二度と竜崎の姿を見る事は無かったのだった…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます