世界改変【6】

<side:的場>


 結論から言うと、想像していた通り、化け物相手には火炎放射器も簡易爆弾もダメージを与える事が出来なかった。

 その代わり、竜崎が渡してくれたグラディウスは予想以上に有効な武器だった様で、面白いほど効果を発揮した。

 そして、真弓の弓も、驚くほどの効果を発揮していた。


「うぉぉぉぉぉ!」


『ザシュッ!』


 叫び声を上げて化け物を斬り付ける俺、自分の何処にそれだけの力が?と思うほどの一撃で化け物を一閃すると化け物は黒い霧へと姿を変える。


「え~いッ!」


『プスッ!プスッ!プスッ!』


 気の抜けた様な声と共に放たれるは、真弓の矢…だが、流石は弓道部と言うべきか、化け物を外す事無く、全ての矢が命中し、化け物の息の根を止める。


『カラ、カラ、カラン…。』


 化け物が黒い霧と化した為、刺さっていた矢が地面に落ちた。


「ふ、二人とも凄いね…僕の出番がまるで無いんじゃないかな?」


 そう…ホームセンターで装備を整えた後、俺達は避難場所である消防署へと向けて出発した。

 しかし、慣れとは不思議な物で…一匹、また一匹と倒していくと、段々、恐怖は薄れていく。

 また、倒すのにコツでも得たのか、与えるダメージも増えている様に感じる。

 今では、俺は一撃の下、化け物を切り伏せるまでに成長しているし、真弓だって3発も撃ち込めば化け物を倒せる様になっている。


 一方、竜崎はホームセンターを出てから何もしていない様に見える。

 だが、実際の所は、要所要所で化け物の動きを邪魔しているのだが、攻撃している二人からは死角になっている為、気が付かれていない。


「よし!見える範囲では、もう化け物は居ない様だ。

 俺達も急いで避難場所に向かおう!」

「そうね、いつまでも此処に居ても危ないだけだし…それに避難場所がどうなっているか気になるしね。」

「………。」


 楽観視していた俺達とは反対に、竜崎の様子が変だ。


「どうした、竜崎?そんな怖い顔して…。」

「いや、何でもない…そう、少し考え事をしていただけだ。

 それより、二人とも、このまま避難場所に向かって良いんだよね?」

「あぁ、おそらく妹もそこにいると思うしな。」

「確か、レムちゃんだっけ?」


 真弓が俺に妹の名前が合っているか尋ねる。


「おぅ!俺なんかより、ずっと頭の良い自慢の妹だ!」


 もちろん、名前は正解…まぁ、両親がキラキラネームを付けた理由は知らないが、それを言ったら俺の名前なんか英雄ひでおだしな…どう見ても『えいゆう』とか『ヒーロー』とか読ませたい感が丸出しだ。

 何はともあれ、自分で言うのも何だが、野球バカの俺よりも、妹は断然頭が良い。


「まぁ、野球バカの的場と比べたる事自体、間違いだと僕は思うけどね。

 むしろ、妹に謝れ?」

「りゅ・う・ざ・き~~~!」

「どうした的場?可愛い妹が心配なのは分かるが、興奮すると身体に毒だぞ?」


 そんな俺達を苦笑しながら真弓が止める。


「もう、二人とも、そろそろ遊ぶのは終わりにして避難場所に向かうよ?」

「あぁ、そうだね…いい加減、避難場所に向かわないと色々と心配になってきたからね。」

「それって、竜崎君がさっきから考えている事?」

「うん…考えすぎであれば良いんだけど…。」

「マジか…せっかく竜崎の仮説通り攻撃する事で化け物を倒せる様になったってのに、これ以上、悪い事が起きるのかよ…。」


 戦える様になったのは良いが、余裕がある訳ではない。

 まぁ、竜崎に関してはまだまだ余裕がある感じはあるが、俺も真弓も、ギリギリ戦えてると言っても過言ではない。


「いや、まだそうと決まった訳じゃないから…。」

「気休めは良い…だったら、これからは全速力で行くぞ!」


 既に限界近いが、弱音を吐いてる暇はない。

 そんな訳で、自分を含むみんなに気合いを入れる。


「うん!」

「分かった…なら、これからは僕も本気で戦う事にする。」

「おぅ!頼んだぜ、相棒ッ!」

「だって…真弓さん、頑張ってね?」

「真弓じゃね~よ、お前の事だ、竜崎!」


 何故か竜崎が話を真弓に振る。

 ってか、女の子に相棒と言うのはどうなんだ?

 どう考えても男の竜崎お前に言ったはずなんだが?


「…知らんがな。」

「クスクス♪ホント、二人とも仲良しだね♪」

「そ、そうか?」

「そんな事より、全速力で進むんじゃなかったのか?」


 少しテレ笑いしながら真弓に聞く俺…だが、竜崎の反応は冷めた物で、先に進むのを進言する。

 なんか、一人空回りしてる感が半端無い…。


「あ~!もう、分かったよ!進めば良いんだろう進めばッ!!」

「あぁ、最初からそう言っている。」

「竜崎君…それはちょっと…いくら的場君相手でも酷いんじゃないかな?」

「なぁ、真弓…いくら俺相手でも…って、どう言う意味だ?」

「的場君、そんな事より避難場所に向かうんでしょ?」

「そうだった!二人とも行くぞッ!!」


 妹が心配だ…いや、妹だけじゃなく両親や他の人達も…。

 なら、少しでも戦える俺達が駆け付ける事が出来れば、その分、他の人が助かる可能性がある。そう思った俺は気持ちを切り替え、避難所へ向かう事にした。


「はい!」

「あぁ…。」


 だが、そう返事をした二人の心の中では共通の思いがあった。


 それは…『的場(君)、チョロイ』である。


 とは言え、俺の全速力で向かう…その言葉に嘘はなく。

 それから、30分程で避難場所へ到着する事になる。


 そして、俺達は避難場所で驚きの光景を見る事になるのだった…。

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