世界改変【5】
<side:竜崎>
「その金属バット、もう使い物にならないから…代わりに、これを使ってくれ。」
そう言って的場に渡した一振りの剣…。
それは一般的にはグラディウスと呼ばれる古代ローマの兵士が一般的に用いたとされる剣である。
もっとも、ポンペイ型以外にも複数の形があるとされているが、今回のそれはポンペイ型である。
まぁ、理由としては、竜崎がスマホでグラディウスと検索した時に一番最初に出た剣が、偶々、ポンペイ型だったと言うだけの話だったりするのだが…。
「竜崎…これって、刃渡りって幾つだ?」
「ん?使いやすい様に60cm程にしてるが、どうした?」
「いや、これって銃刀法違反になるんじゃないかって思ってさ。」
「的場…何を今更な事を言ってるんだ?この鉈だって、真弓さんの
「いや、思うぞ…って、そんなの持ってったら警察に捕まるじゃん!」
「なぁ、的場…正直に答えてくれ…。」
急に真顔で的場に問いかける俺…それは今までの、からかう雰囲気ではない。
「な、何だよ、改まって…。」
あまりの真剣さに、たじろぐ的場…。
「今のこの状況で、警察が役に立つと思うか?
しかも、僕の予想が正しければ、警察なんて物は、あまり役に立たないはずだ。」
「そ、そう、それだッ!
さっきから聞こうとしてたんだけど、どう言う事だ?」
「どう言う事とは?」
「竜崎ッ!こっちは真面目に話してるんだ!
いい加減、惚とぼけるのは止めろッ!!」
何故か急に怒り出す的場、まぁ、確かにはぐらかし過ぎるかもしれない。
「竜崎君、私からもお願い…ちゃんと説明して?」
「ほら、真弓だって、そう言ってるじゃないか!」
俺達の方が正しい…と、ばかりに的場が詰め寄ってくる。
「チッ!分かったよ…だけど、これは僕の推測でしかないから、正しいとは限らない…それでも良いかな?」
「うん、それでも…だよ。」
「あぁ、分かった、それで良い…。
そもそも…竜崎が居なけりゃ、今頃、俺達は化け物に殺やられてたかもだしな。」
二人からの同意を受け、俺は小さく溜息を付く。
そして、自分の思っている仮説を話し始めたのだった。
○●○●○
「はぁ…そこまで言われたら仕方がないか…ただし、先ほども言ったけど、これは僕の考えた仮説でしかない。
間違っていても責任は取れないから注意してくれ。
まず、最初に自衛隊や警察が役に立たないと言うのは、警察も、僕達と同じ人間だと言う事。
当然、化け物相手だと、恐怖で身体が上手く動かない。
まぁ、自衛隊なら戦闘訓練を受けているだろうから善戦はするかも知れないけど、銃を使うなら、まず負けるはずだ。」
「ど、どう言う事なんだ?
こんな武器より、銃の方が簡単に化け物を倒せるんじゃないのか?」
「だから、それを今説明する所なんだから黙ってろよ的場…。」
「す、すまん…。」
僕に言われて素直に謝る的場。
「それで、竜崎君…その理由って言うのは何?」
そんな、落ち込む的場を他所に、真弓さんが僕に続きを話す様に催促をする。
「多分、二人は見てないだろうけど、教師の一人が車で化け物に体当たりをしたんだよ。」
「おぉ、やるじゃん、その教師!」
「そ、それで?」
「教師は体育教師の山根だったんだけど…化け物に殺された。
しかも、化け物は無傷だった。」
「はぁぁぁぁぁ?そんなのどうやって倒せば良いんだよッ!?」
「よ、良かったね…私達の方に来なくて…。」
「そ、そうだな…本気マジで助かったぜ。」
車に衝突され無傷の化け物に出会わなくてホッとする二人。
しかし、次の瞬間、二人には信じられない言葉が俺のの口から飛び出した。
「二人とも、何言ってんの?
その化け物は、的場が金属バットで殴って倒したんだけど?」
「「えッ!?」」
ピシッ!と言う擬音でも聞こえるかの様に、二人の動きが止まる。
「まぁ、驚くのも無理はないうよね。
正直、僕も驚いたから…で、幾つか実験した結果、ある結論に辿り着いた。
それが、直接的に力を伝わらせない機械を用いた攻撃は通用しない。
逆に、直接または間接的に伝わらせる物…弓とか投擲ならば攻撃が通じるって事。」
「あッ!だから、最初に弓道場へ向かったんだ!」
「正解!そんな訳だから、物理攻撃は剣、鈍器、弓…それからナイフやフォークなどを投げる投擲なら効果があるって事で、準備をしたんだよ。」
「…それじゃ~、その道具は?」
的場はそう言って、先程、竜崎が作っていた火炎放射器や爆弾を指さす。
「これは、炎や爆弾みたいな物が効くか分からないから、試そうかなと…。
物理攻撃じゃなく、非物理攻撃…これがアイツ等に効けば、戦闘では有利になるんだけど…多分、無駄に終わると思う。
まぁ、これ以外にも試したい事があるんだけど…ね。」
「…これだけ色々と準備していながら、まだやるのかよ…。」
「で、でも…私達、竜崎君が居るお陰で何とか生き残れる可能性が出てきたね♪」
真弓さんはそう言うと、ピョンピョン跳ね上がり喜んだのだった…。
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