世界改変【4】

<side:的場>


 アレから俺達は、直ぐに学校の家庭科室を出ると、化け物を倒しながらホームセンターへと辿り着いていた。


「なぁ、竜崎…そろそろ、金属バットが折れそうなんだけど、こんな所に来ていったい何を手に入れるつもりなんだ?」

「的場…先程、僕は此処で武器と防具を…と、言った筈ですが?」

「それはそうだけど…竜崎君、私にも分かる様に説明してくれない?」

「真弓さん、それはですね?

 ナタとかの刃物や的場の持ってる金属バットとかですね。

 それに、包丁とか殺虫剤…他にもカセットガスとかも欲しい所ですね。」


 カセットガスとは、携帯用のガスコンロに使われる、ガスボンベの事である。


「鉈は刃物って事で十分武器になるのは分かる…だから、同じ刃物の包丁も分かるんだけど…。

 何で殺虫剤やカセットコンロまで必要なの?」

「それはですね…殺虫剤は簡易版の火炎放射器に、またカセットコンロは爆弾として使えるんですよ。

 まぁ、それ以外に、通常の使い方で調理も出来ますしね。」

「ねぇ、竜崎君…それって、使って大丈夫なのかな?」


 火炎放射器やら爆弾と言う物騒な言葉に、真っ青な顔で竜崎に尋ねる真弓…だが、そんな心配を他所に竜崎は目的の物を次々と集めていく。

 そして、気が付けば竜崎の前には、数々の道具が用意されたのだった…。


「しっかし、竜崎…お前って、本当に器用だよな…。」

「ん?的場、僕が何がだって?」

「いや、だから…お前って器用だよなって言ったんだよ!」

「そんな事はないぞ?」

「わ、私は、そんな事あると思うな…。」

「そ、そう?真弓さんが、そう言うのなら器用なのかも知れないね。」


 竜崎はそう言って右手で頬を掻いた。


「と、とりあえず…今から作業に入るから、的場、周囲の警戒を頼む。

 それから、真弓さんも的場のフォローをお願い。

 出来るだけ早く作り終えるつもりだけど、時間が掛かったらゴメン。」


 竜崎はそう言うと、早速作業に取り掛かる。


「まずは、このまな板を…。」


 竜崎はそう呟くと、まな板を蝶番とビスネジを使って固定していく。

 その後、他の金属やらを使い、どんどん形を変えていく。

 そして5分もしない内に、それは完成した。


「的場ッ!!」


 竜崎がそう叫んだと思ったら、俺に向けて飛来する物体がある。



「うぉッ!?竜崎、いきなり物を投げ付けるな!」

「気にするな!それより、それの使い方は分かるな?」

「あぁ、伊達にチャンバラごっこで遊んでない!」

「え?えッ?その四角い物は何?」

「真弓さん、それは在り合わせの物で作った盾…木の盾ウッドシールドだよ。」


 そう、小さい子供がチャンバラごっこで遊ぶ時、ゴミ箱の蓋を盾にして防御する様に、竜崎もまた木のまな板と金属を組み合わせ木の盾を作り上げたのだ。


 そうこうする内に、竜崎の前には色々な物が作られていく。

 殺虫剤とオイルライターを組み合わせた、即席の火炎放射器。

 さらに、ガスボンベとオイルライターを組み合わせた、即席の爆弾。


「まぁ、仮説が正しければ、この二つは効かないんだけど…ね。」


 と、竜崎が呟いたが、周囲を警戒中の俺には、その事を気にするだけの余裕はなかった。


 30分後、全ての作業を終えた竜崎は、一際、大きな溜息を付いた。


「ふぅ~、終わった~ッ!!」


 大きく背伸びをしながら、竜崎は俺達の方を見る。

 幸いにも、俺達に対し化け物の襲撃はなかった。


「二人とも、これらを装備…身に付けてくれ。」


 竜崎はそう言うと、俺達に先程まで作っていた物を渡す。


「なぁ、竜崎…これって、どう見ても鎧…だよな?」

「わ、私の方は…槍なのかな?」

「そうだよ?野球バカは体力があるから、金属パーツを使った軽鎧ライトアーマー

 さっき渡した盾と一緒に使えば、防御力は格段に上がるはずだ。

 で、真弓さんのは…槍と言うより薙刀なぎなたかな?

 突くだけではなく、斬る事も可能にした武器だよ。

 まぁ、もっとも…全部即席で作ってるから強度はそこまでないのが残念な所だけど…ね。」


 そう言って、竜崎は地面においてある鞘付きの鉈を二本取り、左右のベルトに留める。


「竜崎、俺等ばかり装備を増やしてるけど、お前は鉈だけなのか?」

「そ、そうよ!竜崎君もちゃんと防具を装備しなきゃ!」

「あ~、その事なんだけど…僕の場合、下手な防具はかえって邪魔になるだけなんだよね…。

 だから、今の僕には、この鉈があれば十分なんだよ。」

「それより、的場…君の武器なんだけど…。」

「お、おぅ!」

「その金属バット、もう使い物にならないから、代わりに…これを使ってくれ。」


 竜崎はそう言うと、一振りの剣を俺に渡す。


 が、それはホームセンターの材料では到底作れないであろう、何処からどう見ても、きちんと鍛冶師の手で作り込まれた様な一振りの剣であった事に驚愕する事になったのである…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る