世界改変【3】
<side:竜崎>
「あとは此処を縫ったら…よし、完成…とッ!
真弓さん、あと…ついでに的場、お待たせしました。
次はホームセンターに向かおう。」
僕は、そう言うと出来立ての
「あ、そうそう…これは真弓さん用のローブで、こっちが的場用ね?」
「あ、ありがとう…でも、私のと的場君のとで違いがあるの?」
「うん、真弓さんの方にはちょっとした仕掛けがあって、少しばかり防御力が高いんだよ。」
「防御力?」
僕の防御力と言う言葉に、真弓さんは怪訝な顔を見せる。
だが、僕はそれを誤魔化す様に言葉を続ける…。
「あ~…気にしないで良いよ。
それより、早くホームセンターに行かないと…また化け物が襲ってきたら大変だよ?」
「う、うん!…でも、ホームセンターで何買うの?」
「それは、ひ・み・つです。」
「竜崎…お前、真弓が聞いてんのに、何だ、その態度は!」
「はいはい、ポチはそっちの隅で、お座りしてようね?」
「って、竜崎…さっきから俺の扱い酷くないか?」
「的場…多分、それは気の所為だよ?(だって、酷い扱いは最初からだからし…)
それと…こんな危機的状況だからお店の店員も逃げてるだろうし、自称:神様も言っていたけど殆どの人が死んじゃうって話だから、黙って持って行っても誰にもバレ無いと思うよ?」
確信犯…真弓の頭の中で、その言葉が思い浮かんだ瞬間だった…。
「そ、それは…いくら緊急事態でも流石に不味いんじゃないかな?って思うんだけど…。」
「いや、でも竜崎の言う通り、まずは生き残る為の行動だから許されるんじゃね?」
「的場君まで…。」
「ほら、何だっけ…何たらの板だっけ?」
「的場…それって、『カルネアデスの板』もしくは『カルネアデスの船板』って言うヤツか?」
「そう、ソレだッ!!」
野球バカである的場から、まさかの言葉が飛び出した。
「ねぇ、二人とも…それ、何の話?」
そんな僕達のやり取りに、興味を持ったのか真弓さんが聞いて来る。
「あぁ、真弓さん…カルネアデスの板と言うのはですね?
昔、一隻の船が沈没事故を起こした時、その船の残骸とでも言うのですか?
船に使われている板に一人の船員が捉まっていたのですが、同じ板にもう一人捉まろうとした人がいたそうです。
ですが、その板に二人捉まると沈んでしまう可能性があった。
その事に危機を覚えた最初の船員は、後から来た船員を捉まらせない様にして死なせてしまったのです。」
その話を聞いた真弓さんは、暗い顔をする。
「何か、酷い話ね…。」
「えぇ、そうですね…ですが、この話には続きがあります。」
「そうなの?」
「はい…それでですね?
無事に陸地に戻った船員は、もう一人の船員を『自分が助かる為に殺した』と言う事で裁判に掛けられたのです。
ですが、命の危機に瀕している時だったと言う理由で、男は無罪になった…。
その事から、命の危機がある時は、例え他の人を殺したとしても罪に問われないと言う前例が出来たのです。
で、その時の船の名前が、カルネアデスと言う船だった事から、この様に命の危険がある時に罪を犯しても許される事を『カルネアデスの板』と言うのです。」
だいぶ端折ったが、説明としてはこんな物で良いだろう。
「そ、そうなんだ…。」
ただ、こんな説明だけでは今からする事を正当化出来ないだろうな…。
「問題は…。」
「えッ?命の危険が…って状況なのに、まだ何か問題があるの?」
「いえ、そちらの方の問題はないかと…。
僕が言う問題と言うのは…野球バカの的場が、何故、その事を知っていたと言う事です!
まさか、的場…お前、偽物かッ!?」
どう説明すれば納得してくれるか分からない、故に、誤魔化す事にした。
「竜崎…お前、大概にしろよッ!!
俺だって、それっくらいの知識はあるぞッ!!」
「わ、私、そんな知識無いよ…。」
「ほらみろ、真弓さんだって知らない知識なのに、何でお前が知っているんだッ!!」
「そ、それは…。」
「それは?」
問い詰められ、動揺する的場…そして、二人から目を逸らすと呟く様に理由を言った…。
「い、妹の漫画を読んだんだ…確か、『金田○少年の事件簿』…だったかな?」
「「………。」」
「だ、だから言いたくなかったんだよッ!!」
恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にして叫ぶ的場…。
それを見て、俺は溜息を付きながら、的場に言った。
「はぁ~、そうだよな…可笑しいと思ったんだよ、何たってあの的場だよ?
野球バカなのに、そんな知識あるから、思わず偽物だと思っちゃったよ。
的場、ゴメンな?疑って…。」
「的場君、ごめんなさいッ!」
「クソッ!二人して謝られると、余計
そんな事、僕の知った事ではない。
むしろ、そんな事に時間を使うくらいなら、僕は別の事をするぞ?
「って事で、的場には謝った事だし…急いで次の目的地に行こう!」
「うん、そうだね。」
「おいッ!だから、何度も言うが俺の扱い雑じゃねッ!?」
流石に、ちょっと酷いかな?と思ったが…。
だが、最終的に、ここはネタに走るべき…と思ってしまった僕が居た…。
「「全然?」」
何故か、僕と真弓さんの声がハモる。
って、真弓さんもですか?
そんな考えを他所に、世界は時を刻んでいく。
「そ、そうか?」
二人から温かい目で見られている事を気が付かない的場…やはり、野球バカの所為なのか野球の事以外には疎いのであった…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます