第2話
それから三十分。ようやく、二十四時間営業のダイナーに到着した。
「好きな物を頼みな、奢りだ」
「・・・チップとは」
「別だ、気にするな」
重役は店内に入ると、慣れた様子でバーガーを注文する。
「兄ちゃんはどうする」
「・・・チーズステーキで」
「まあ座れよ、立ち話も何だろ」
横並びにカウンターに座る。二人分の料理が運ばれてきた所で、重役が口を開いた。
「・・・今まで何処に居やがった」
「雲隠れって奴ですよ」
「答えになってねえ」
「すみません、バーガーとホットドッグ追加で。あとコーヒーも」
「おい」
「有難く頂きます」
「・・・さてはお前、気付いてたな」
重役が睨む。目を逸らす男。
「大佐こそ何故です」
「・・・左遷さ」
「・・・・・・」
「“上”が変わったのさ。戦争の残りもんを、わざわざ置いておきたくないんだろう」
「・・・今は何処に」
「ここだ。ポーラ・タウンの中央警察に詰めてる。昨日からだ」
「・・・・・・」
「十年。随分探したぜ」
男は動かない。重役、いや大佐と呼ばれた男が、煙草に火を点ける。
「・・・しくじりまして。檻に突っ込まれて、半年前に戻ってきました」
「まあいい。今更戻れなんて野暮なこたぁ言わねえよ、トドロメ。・・・ただ近いうちに一つ、お前に仕事を頼むやもしれんというこった」
「・・・申し訳ありませんが大佐、それは無理です」
「探偵に飽きたのか?」
「いえ、その・・・」
「何だよ気色悪ぃ、先を言えよ」
トドロメは溜息をつくと、ぼそりと言った。
「・・・切れてるんですよ、ライセンス」
「・・・あっ」
二の句を継げぬとはこの事かと、大佐は感じていた。
「・・・なんて、想定済みだがな」
「は?」
大佐はにやりと笑うと、懐から何枚かのカードを取り出した。
「ほれ、ライセンス」
「・・・はい?」
「後は免許証と住民票と後はこいつもライセンス、メタル・ハンターのだな。こっちはタクシーの営業許可証だ、無くすんじゃねえぞ」
「・・・用意が良すぎやしませんか」
「見返りって奴さ、これも」
「・・・仕事の、ですか」
「つくづく察しが良いこって」
「また面倒事ですか・・・左遷もその一環ですね」
「その通り」
「・・・すみません、フレンチトーストとチリコンカーンを一つずつと・・・凄い、フィッシュ・アンド・チップスもある、これも一つ。後ミートパイとワッフルも」
「あのなあ・・・」
「もう三日も何も食べて無いんです、勘弁してくださいよ」
「・・・・・・」
白薔薇のオートマトン 猫町大五 @zack0913
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