第34話 すげー愛してる (少々R15)
「俺は霊力高いけど、聖人君子じゃねえからな。今までつきあった女はいる。33だし。でもおまえとは全然、根本から違うんだ。俺の仕事とか家のこととか、つきあってる女にも言ったことない。っつーか、一応機密事項だから言えねえしな、これは。だから体のつきあいはそこそこあるが、心の深いところまでつきあうことは、誰ともしたことがなかった。でもおまえは違う。この家に来た時点で、おまえはすでに神谷家にとって特別な女だった。そして俺たちの力や仕事のことを話しても、おまえはそれが当たり前のように、すんなり受け入れてくれた。それにおまえは、自分が大切に思う者たちを護るためなら、自分より強いヤツにも平気で立ち向かう。ったく。おまえは子猫みたいに非力で小さくてか弱い女なのに。おまえの無鉄砲さにはハラハラさせられっぱなしだ」
「すみ・・・ません」
真希はとりあえず、謝っておくことにした。
「それにおまえは、いつも自分より相手の幸せを優先して考えすぎだ。まあ、そういう相手と暮らしてたから仕方はないが。だけどな、これからはもっと自分の意思や気持ちを優先して生きろ。自分がしてほしいことを言ってもいいんだ。誰かに頼んでも、誰かに頼ってもいい。おまえの自立心は立派に育ってる。これからはもっと甘えたりワガママ言うことを俺から学べ。俺が一生かけておまえに教えてやる」
その俺様目線が、いかにも頼雅さんらしいと真希は思った。
でも。頼雅さんが教えてくれるんだったら、私は彼に一生ついて行く。
「真希。そろそろ返事しろ。俺は気が短いんだ。何度もプロポーズさせんなよ。だが俺はしつこいことで有名だ。だからおまえが”はい”って言うまで、何度でもプロポーズしてやるからな」
まったく。この人、言ってることがめちゃくちゃだ。
でも、それも・・・頼雅さんらしいわ。
「頼雅さん?」
「なんだよ」
「頼雅さんが好きなら、仕事は絶対辞めちゃダメです。あの仕事は特別な人しかできないことだから」
「了解」
「それから私はこの家が大好きだし、神谷先生と弟くんたちのことも大好きです。だから・・・だから、これからも、この家で、みんなと一緒に暮らしたい」
急にみんなへの愛情がわいてきた真希の目から、涙が出てきた。
頼雅はそれを優しく指でぬぐった。
「他には」
「愛してる。あなたを愛してる。一生、あなたと一緒に生きます」と真希が答えると、頼雅は彼女に甘いキスをした。
「真希・・・俺、おまえのこと、すげー愛してる」
その言い方は、とても頼雅さんらしかった。
真実味があって、同時に頼雅さんの心にある脆さや弱さも垣間見えた。
頼雅さんは強いけど、弱い人でもあるんだ。
当たり前のことだけど、彼が自分のそういう一面をさらけ出してくれたことが、私は嬉しかった。
頼雅さんへの愛情が、ますます募っていく。
この日、今まで抑えていた私の気持ちが、すべて表に出た。
頼雅が弟たちに言ったとおり、真希は朝までずっと、頼雅の部屋で過ごした。
途中、頼雅が下に降りて、食べものを持ってくる配慮も怠らない。
真希は物理的に動けないという理由もあったが、本当のところは頼雅が真希に「おまえは出るな」と言って聞かないからだ。
まあこれも、彼なりの愛情表現なのだろう。
とにかく真希を甘やかしたいという態度が、モロに出てたから。
食べものは十分にあったし、おいしかった。
弟たちが、自分たちの分まで作ってくれていたことが、真希はとても嬉しかった。
ホントのところ、私が料理をしなくても、弟くんたちはやっていけたんだ。
ということは・・
「でも俺たち、マジで家事嫌いだからなあ。おふくろが亡くなってからこの家の秩序は乱れまくってたし。近くに頼人たちがいなかったら、ここはごみ館になってたはずだ」
「そうなんだ・・・」
それでもやっぱり、真希が神谷邸に来た当初、思ったことはハズレていなかった。
「おまえが来てから、この家は生まれ変わった気がする。秩序が戻ってきた。それに、おまえを通して家族の絆がもっと深まったようにも思う」
「そう言ってもらえると、すごく嬉しい」
「俺たち、別に声出して会話しなくても、お互いの動向を知ろうと思えば探れるし、みんな仕事や学校で、お互いの生活があるからな。仲はいいほうだと思うが、深く干渉はし合わなかった。だから同じ屋根の下に住んでても、お互い生きてることは分かってる程度でさ」
「それは大げさでしょ!」
「うーん、まあ多少は大げさかもしれねえ。でもマジでそういう感じだった。俺たちは霊力が高くて他人の想いを敏感に察知しやすい分だけ独りでいる時間を大切にしたいという気持ちが強い方だと思う。だがおまえが家に来てくれてから、部屋より下で過ごすことのほうが楽しいって、みんな言うようになったな。おふくろが生きてた頃みたいにさ」
私という存在が、この家と神谷のみんなにとって大切なんだという思いが、頼雅さんの言葉からひしひしとつたわってきた。
「あの、お母様って・・・」
「力はなかった。親父はおふくろと結婚することで本業はしないと宣言したが、家は護ってくれていた。俺たちが生まれたとき、みんな普通の人より高い霊力を持ってることが分かって、俺たちを守るためにも家と土地と水は守らないといけないと思ったんじゃねえかな。でもこの家は5年前に全部建て替えたんだ」
「そうなんだ。あ、もしかして、
「ああ。あっちの神谷の家を全部建て直すって話が出て、じゃあついでにこっちも頼むってことになってな。それでどっちの家もみんな個室に風呂つけてもらって、誰かが結婚しても、安心して子作りに励めるよう、防音もバッチリ・・・」
「ちょ、ちょっと!それ・・・ホント?」
「ああ
「そうです・・・か」
最初こそ抑えていたものの、私は何度も叫んでイッてしまってたから、きっとみんなに聞こえてるはずだと、後になって恥ずかしくなったんだけど・・・頼雅さんは、「気にすんな」の一点張りで。
まあ、「朝まで部屋にこもる」ってことは、どういうことをするのか、想像はされているはずだし。
「ついでに言っとくが、おまえが本当にセックスを心から楽しむことができるまで、俺は避妊をする。それと、おまえが子どもほしくないって言うなら、俺もいらない」
「あの、でも・・・跡継ぎとか・・・いらないの?」
「いらない。それに必ずしも高い霊力を持った子が、俺たちの間に生まれてくるとは限らないぞ」
「そうなんだ」
「この世の神秘だろ?」
「そうね・・・あの、頼雅さん?」
「なんだよ」
「まだ・・・するの?」
頼雅が真希の首筋を舐め始めた。
「あたり前だろ。朝まで時間はまだたっぷりある。俺は貪欲でワガママなんだ。知らなかったのか?」
「しってる・・・」
真希の体はかなり敏感になっているおかげで、少し触れられただけで、もう感じてくる。
それに頼雅は、回を重ねるごとに、真希の感じるところを知ってきた。
「真希・・・」
頼雅さんに名前を呼ばれると、みぞおちのあたりがキュッとなる。
「なあに・・・」
「おまえがほしい」と頼雅に言われて、真希はまた、ベッドに押し倒された。
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