12月 地獄サンタ
作文「冬休みの出来事」六年三組 野島コウタ
千田先生がみんなに宿題を出しました。冬休みにあった出来事を、作文に書くことです。僕は、うまく書けるか自信がありませんでした。だけど冬休みに入ってすぐに、じごくサンタの出来事がおこりました。
ウワサは、ずっと前から聞いていました。サンタクロースは、ふつう、いい子どもの家に来ます。ところが、じごくサンタは悪い子どもの家に来るのです。クリスマスの夜にこっそりしのびこみ、くつ下にノロイの人形を入れるのです。ノロイの人形を入れられた子どもは、じごくトナカイになるのです。そして、じごくサンタの手下になるのです。
だけど、教室でじごくサンタの話をしていると、女子が僕のことを笑いました。女子は、サンタなんていないと言いました。
サンタクロースがいるという人もいるし、いないという人もいます。だけど毎年、くつ下の中にプレゼントが入っています。それは、家族の誰かが入れたんだと女子は言いますが、証こがありません。それに、僕の家はキリスト教じゃないので、クリスマスはお祝いしないとパパは言います。それなのに、クリスマスになると、くつ下にプレゼントが入っています。これはサンタクロースがいる証こだと思います。
僕は、去年、いい子どもではありませんでした。パパとママの言うことを聞きませんでした。いっつも、爪がのびていると注意されたのに、切りませんでした。だからこの前、爪がはがれてしまって、かなり痛かったです。
僕は、言うことを聞かないので、じごくサンタの方が来ると思いました。 だから、じごくサンタを待ちぶせすることにしました。どうせやって来るなら、ワナをしかけて、痛い目にあわせてやろうと思いました。
そのことをパパに言うと、パパもいっしょにワナをしかけてくれました。まず、窓のカギをげんじゅうに閉めました。家には、えんとつがありますが、僕の部屋には通じていません。じごくサンタが入ってくるのは、窓か、ろう下のドアです。窓を閉めたら、ドアからしか入って来ません。
僕とパパは、ドアの前に画びょうをたくさん置きました。それから、部屋の真ん中にニンニクを置きました。まず、画びょうをふんで血を流し、そのあとにニンニクをふむと、傷にしみるのです。
パパは、
「ニンニクだけでいい。サンタがふんだらかわいそうだ」
と言いましたが、ニンニクだけでは効果がありません。
それから、ワナを突破されても、くつ下にノロイの人形を入れられないようにしました。パパが、会社から、使っていない手さげ金庫を持ってきました。その中に僕のくつ下を全部入れました。金庫の番号は、僕とパパしか知らないので大丈夫です。
僕は、くつ下を入れて金庫を閉じました。金庫は机の上に置いて、夜の間、げんじゅうに見はることにしました。
十二月二十四日の夜になりました。すごく寒い夜でした。外を見ると、少しだけ雪が降っていました。部屋の電気を消すとまっ暗で、パパは、
「さむいさむい」
と言って、強引に僕のいるベッドに入ってきました。ベッドの中でパパは、
「じごくサンタって本当に来ると思う?」
と言いました。僕は、返事ができませんでした。もし、じごくサンタが来たら、僕はやっぱり悪い子どもということになります。僕は、パパとママの言うことを聞かなかったことを反せいしました。
その時、声が聞こえてドキッとしました。でもそれは、ママの声でした。部屋の外からパパを呼んでいました。パパに電話がかかってきたのです。パパはベッドから出て、部屋の外に行ってしまいました。
暗い部屋で一人っきりになりました。外は風が吹いていました。ガタガタと窓がゆれて、僕は心ぼそくなりました。
僕は、今じごくサンタが来たら、何もできないと思いました。きっと、こわくてベッドの中にかくれます。そして、じごくサンタがいなくなるを待つだけです。そうしているうちに、じごくサンタは金庫を開けて、くつ下の中にノロイの人形を入れてしまうと思いました。
僕は、もう一つワナをしかけようと思って、ベッドから出ました。
金庫は、ダイヤルを回したあとに、ダイヤルの横にあるレバーを下にさげると開きます。僕は、机の中にあった、おれたカッターの刃を出しました。金庫のレバーにカッターの刃をテープでつけました。もし、金庫のダイヤルを回して数字を当てられても、レバーを下にさげる時にカッターの刃がささります。
最後のワナをしかけて、僕は、ベッドへ戻りました。
しばらくすると、パパが部屋に戻ってきました。二人でベッドに入って、じごくサンタを待ちました。
暗い部屋はぶきみでした。だんだん目がなれてくると、天井の模様が、いろんなものに見えました。動物みたいに見えるし、人間の顔みたいに見えました。もしかしたらあの中に、じごくサンタの顔があるかもしれないと思いました。
僕は、こわくなって目を閉じて、ふとんの中にもぐりました。そうすると、だんだん眠くなって、いつの間にか寝てしまいました。
だけど夜中に一度だけ起きました。何時かわかりませんが、部屋は暗くて、外の風の音がまだ聞こえていました。
その時、部屋の中を誰かが歩いていました。暗くて見えませんでしたが、音だけはわかりました。こわくなってパパを起こそうとしましたが、となりにいるはずのパパはいません。僕は、ベッドの中で、ぜったいに動かないようにしました。もし起きているとわかったら、じごくサンタは僕をつれ去ってしまいます。僕は、目を閉じて寝たふりをしました。本当に、こわいしゅん間でした。
僕は、またいつの間にか寝てしまいました。
気がつくと朝になっていました。ベッドから出ると、ドアの前の画びょうも、部屋の真ん中のニンニクもそのままでしたが、机の上の金庫は開けられていました。だけど、金庫のダイヤルの横のレバーには血がついていました。金庫は開けられたけど、僕の最後のワナは成功しました。じごくサンタは、僕のしかけたカッターの刃で手にケガをしたのです。
金庫の中を見ると、赤いくつ下がふくらんでいました。僕は、ノロイの人形が入っていると思いました。だけど、くつ下の中には、この前出たばかりのゲームソフトが入っていました。それは僕がほしかった物で、すごくうれしくなりました。
でも、その他に、紙が入っていました。紙には「パパとママの言うことを聞かないと、来年はノロイの人形を入れるぞ。 じごくサンタ」と書いてました。僕は、じごくサンタの忠告を守って、これからはパパとママの言うことを聞こうと思いました。
居間に行くと、パパは爪切りで爪を切っていました。パパは自分の手を見せて、
「パパの手はピッカピカだ。コウタも爪を切れ」
と言って、傷一つない、きれいな手を見せました。ママも、
「爪を切りなさない」
と言って、傷一つない、きれいな手を見せました。僕は、パパとママの言うとおりに爪を切りました。おわり。
*
作文「冬休みにあったこと」 六年三組 田辺マコト
冬休み、家にじごくサンタが来た。
十二月二十五日の朝、クツ下にノロイの人形が入っていた。クツ下にもノロイの人形にも血がついていた。じごくサンタはどこかでケガをしたみたいだ。
怖くなってノロイの人形を窓から捨てたけど、次の日になると……(以後、省略)
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