第34話 2020年7月某日

「思いのほか、死なないな」

「経済再生に舵を切り直したのは正解でした大臣」

「総理の御意向でもあったしな…おかげで俺は、毎日、毎日、無意味な会見だ嫌気が差す」

「テンプレですね…検査の母数が増えた結果だ…ですか」

「嫌味を言うなよ、オマエも秘書から政治家になれば気苦労が解るさ」

「私では票を集められません、秘書が適任なんですよ」

「適材適所か…俺は、経済再生なんて器じゃないんだけどな」

「いえ、コレで顔と名前が国民に知れ渡れば、党内の位置も変わりましょう」

「悪評でなければな…と、そろそろ会見の時間か?」

「はい…」

「今日もテンプレで5分、俺の時給は幾らだ?えっ?」

「ふっ…国民の血税ですよ、口を滑らせないようお気を付けください大臣」

「解っているよ、まぁ…本来の経済再生など、老人がコロコロ死んで勝手に好転していく予定だったんだがな~」

「上手くは転がらないものですね、日本人の死亡率だけ突出して低い…残念ながら」

「そのために、第2波を、こうして広げているんじゃないか…バカ共が酒に色に溺れて感染を広げてくれているんだ、邪魔するような真似はできん経済再生担当大臣としてな」

 大臣が部屋を出ていく。

 残された秘書が、書類の束を整理する。

(このご時世に、未だに紙媒体…呆れるよ)

『環境破壊について』

 ふと目に留まった書類の束、コピー用紙に印刷されたタイトル。

(森林伐採を減らすべく…)

「永田町は治外法権だな」

 以前、同席した高級料亭で、食料問題だの自給率だの真顔で話せる連中が政治家という者なのだと思ったことがある。

 どこまで真剣なのか…

 Covid-19も経済再生のために某国から購入した国政の一環なわけだ。

 他力本願というか、情けないことに自立で再生させる案など、政治家風情から出る訳もなく、専門家委員会では、結論を見出せないままダラダラとした話し合いが続けられるだけ。

「専門家ってヤツは…結論を出さないから専門家なんだよな」

 秘書がTVのスイッチを押す。

 画面に涼しい顔で受け答えする大臣の顔が映し出される。

「ですから、専門家委員会の意見を…」

(あのバカ…メイクしてやがる…)


 これが日本か…誰が政治家なんかになるもんかよバカ。


 国民もバカしかいないんだ、その中から民主的に選ばれたバカの代表が政治家。

 そのバカ代表たちが選んだバカの棟梁が総理大臣…バカの棟梁が選んだのがアレか。


「いや~一仕事終わったな…ご苦労さん」

 大臣が部屋を出て帰宅する。

 TVには総理が映し出される。

「現段階では再び自粛を要請する段階ではないと…」


(その小さいマスク…すでに地球規模でネタだよ…アホのマスク)

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