第29話 2033年8月某日 (竜神池3)
「鏡は数種、存在している」
「そうよ…オリジナルはひとつ、それは銀河の果てにあるわ」
「ビクニ、どういうことだ?」
朝倉が苛立ち気味に訪ねる。
(いつもそうだ…ビクニはコチラの反応を見ながら話を進める、馬鹿にされているようだ)
「ユキ、この池にある鏡は、その中の1枚に過ぎないということよ」
「知っているのか、この鏡が何であるかを?」
「理屈はともかく、ただの移動装置よ…簡単に言えば」
「ナイアガラ…だよな」
「そう、ただ…鏡はこちら側に存在していない、だから時間を無視して過去にも繋がってしまう」
「ソコが欠陥品なんだろ?」
「アナタにとっては…欠陥なのかしら?」
ビクニがニコッと笑った。
「人魚の肉を食ったアンタとは違う意味で時間の流れから外れているとでも?」
スッと笑みが消えたビクニの目が冷ややかに朝倉を見据える。
「外れているわけではないわ、ただ宇宙の時の流れから見れば星の寿命など、誤差の範囲ってことよ」
「では、ココの鏡がなぜ無価値のような言い方をする?」
「霊獣使いは、神を信じる?」
「ふん…信じないね」
「クククッ…宇宙人なら?」
「あいにくUFOを見たことがなくてね」
「私も無いわ、だけどね過去に神を名乗る者には会ったことはある」
「キリストにでも会ったかい? 不老不死のアナタが年上と会うことなど滅多にないだろうからな」
「キリストは知らないわ…でも私が会った神は人に近しい姿はしていたわ」
「近しい?」
「えぇ、人ではないってことよ、それが重要なの」
「ようやく本題か?」
「ユキ、この鏡は人が作った模造品なのよ」
「模造品…オリジナルがあるってことか」
「それは銀河の果て…此処のは月の光などの条件が揃わないと発動しない粗悪品…人の限界ね」
「数種あるって言ったよな?」
「フフ…賢いわね、そうよ…時間だけを飛び越える物もあるし…別の宇宙へ繋がっていた鏡もある」
「別の宇宙だと?」
「宇宙人が作った鏡もある…その何枚かは、確かにこの星にあるわ」
「それがオリジナル?」
「違う、私達には作れないレベルの鏡ですら、完全じゃないらしいの」
「で?神はそこから来たのか?」
「そうよ、ARKもNOAも、その恩恵で成り立っている…アナタの霊獣も、あるいは、その神の御業、その名残かもね」
「アンタの不老不死もか?」
「私の…コレは呪いよ、御業なんて仰々しいものじゃないわ…きっとね」
ビクニはスーツのポケットから1枚の写真を取り出し朝倉に渡した。
「櫻井 敦…」
「この子…2039年1月、帰って来るわよ」
「ソコに繋がっている…アンタはなぜ、ソレを知っている?」
「言ったでしょ…私は神に会ったと…」
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