第1261話 闇夜の歓談


「お、お! 付いた付いた付いた!!」


 何度も試行回数を重ね、ようやく俺たちは火を付けることに成功した。


 結局、俺が木の棒を回転させ火種を作り、メガネくんが失敗する度に適切な木材を集め、ハーゲンにはなんとか風量を調節してもらい、酸素供給係になった。


 最初は人力でフーフーしていたのだったが、息が続かなかった。


 窒息無効のスキルが生きていたら、無限にフーフーし続けられたのかもしれないが、タラレバだな。


 もう、辺りはすっかり暗くなっていた。今にも恐竜が飛び出して来そうな雰囲気だ。


「これ、火が付かなかったらかなり危なかったですね」


「あぁ、スキルも封じられたとなると俺もただ、足が速くて力が強くて耐久力がそこそこあるただの人間だからな」


「…十分な気もしますけど」


 確かに。でも、これも称号に頼ったものだから、これも封じられるといよいよただの人間だ。


「これは一刻でも速く、テイムしないとな。いつ称号が無くなるかも怪しいからな。幸いウチにはティラノがいる。威圧して逃げ出した所を捕まえればなんとかなるだろ!」


「そうですね! では夜明け次第私は追い込みやすそうなポイントを探っておきますね」


「夜明け? いや、今からでも……」


 ってそっか、夜目的なスキルも使えないのか。今まで俺がどれだけスキルに依存してたか分かるな。今まで昼も夜も気にしたことなんて無かったのに。


「分かった。じゃあ、俺は朝になったらティラノと恐竜を探しに行くから、メガネくんはハーゲンを連れてってくれ。透明化できないと、そのまま食われちゃうからな」


「お気遣いありがとうございます! ここは流石に死んでは元も子もないので、甘えさせていただきます! ハーゲン様もよろしくお願いいたします」


『よろしくっす!』


 うん、2人もいい感じだな。筆頭従魔と筆頭部下、案外通じる所はあるのかもしれない。


「……」


「……」


「暇だな。」


「暇、ですね」


 夜、何もできないとこんなに暇なんだな。電気が無い時代に生きた人たちは何してたんだろうか? 寝まくってたのかな?


「リアルのことを聞くのはマナー違反だが、メガネくんは、ゲームしてない時って何してるんだ? もちろん、答えられる範囲でお願いします」


 ちょっと場が気まずくて雑談でもしようと思ったが、話題から話しかけ方まで下手くそすぎるな。キャラが入ってないと厳しすぎる。


「基本的には勉強ですねー。息抜きでゲームをしてる感じです! 親には体験型の勉強ゲームだと嘘ついてますけど」


「そ、そうなのか。確かに賢いもんな。将来の目標とかあるのか?」


「いや、特に無いですね。親にやれと言われ、自分でもそこそこ向いてると思ってるのでやってるだけです。断然ゲームしてる時の方が楽しいですよ?」


 流石にそうか。メガネくんなら勉強も楽しんで出来そうだと思ったが、流石にゲームほどではないらしい。


「逆に、なんですが、陛下は普段どんなことされてるんですか? 自分よりは年上だとは思うのですが、何分魔王様なので窺い知る余地が余りにも無くて…」


 確かに、そりゃそうだな。現実世界で魔王っぽい振る舞いしてる奴なんか1人もいないもんな。


「んーうだつのあがらないただの大学生だよ」


「え!? 大学生だったんですね! てっきり大人かと思ってました! 確かに、働いてたらそんなにゲームできないですもんね」


「まあ、そうだな。大丈夫か? 魔王がただの大学生だと知ったら萎えないか?」


「いえ、ちゃんとゲームとリアルは区別できるので。それに、陛下もちゃんと1人の人間だったと知って少し安心しました。ゲームの中だと本当に常軌を逸してますから」


「おい、ちょっとイジってるだろ」


 アハハハとメガネくんが楽しそうに笑った。メガネくんとこうしてゆっくり話すのはかなり珍しいかもしれない、むしろ初めてじゃないか?


 意外と俺たち現実世界でも会ったら上手くやれるかもしれないな。なんて、非現実的なことを考えていると、


「……っ!?」


 いつか感じたあの違和感に再び襲われた。


 辺りは完全に闇に包まれており、頑張って付けた小さな炎だけがこの瞬間の光だった。


「メガネくんステータスを確認しろ! 今度はスキル以外も……」


 ステータスウィンドウを開くと、そこにはこの世界に生まれ落ちたばかりのステータスが存在していた。







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お久しぶりです。最近寒過ぎです。よろしくお願いします。

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