第1258話 無き声


 気を取り直して、


「これでも食らえ!!!」


 俺は大量の砂糖で、ティラノサウルスの口の中をいっぱいにした。この量を人間が食ったら普通に致死量だろ、ってレベルだ。


 砂糖で埋め尽くされた口の中はまるで、雪原のようだったが、当然ながら唾液の量もティラノ仕様で、一瞬にして溶けて消えてしまった。


「ぐるぉおおおおおおおおおおおおおお!」


 うわっ、ちょっと待って口を動かさないで! ただでさえ口の中でそんな動かれたら、


 ボチャン


 はぁ、落ちてしまった。また、登るのかー。鉄のピックを使えば少しは楽だろうが、まあ1からというのが心にくる。


『陛下、ティラノが天に向かって咆えています! 今のうちに!!』


 今のうちに?? そうか!


「【時間歩行】!」


 俺は天に向かって一直線にスキルを放ち、空中に飛び出した。ふぅ、久しぶりの外の空気、最高だ。


 空中に飛び出した俺をハーゲンがキャッチし、そのままメガネくんの所に連れて行ってくれた。


 よし、これで肛門からでる必要が無くなったな。というか、それに対して一番ホッとしているかもしれない。人間の尊厳がなんとか保たれた。


 さて、ティラノの方はどうなったかなー?


 ッドシーーーーン!!


「うわぁ!」


 ティラノが怒りのあまり攻撃してきた、かと思ったが、そうではなく、ティラノが倒れてきたのだ。


 近づいて様子を確認するとどうやら眠っているようだ。


 おかしいな、俺がだした粉はただの砂糖で睡眠薬の類ではないと思うのだが。


「これは恐らく血糖値が爆あがりしたことによって、眠気が襲ってきたのでしょう。ただ、本格的な睡眠ではないため、直ぐに目を覚ますと思います。今のうちにできることをやっておきましょう」


 なるほど、これが血糖値スパイクというものか。


 俺も食後に眠くなったことなんて無限にあるもんな。


 それを砂糖どころか肉しか食べたことのないティラノが、砂糖を一度に大量摂取したとなれば、気絶したとしてもおかしくはない。


「ただ、ここからテイムするにはどうすればいいんだ?」


「そうですね、ゲームの知識にはなってしまいますが、寝てる間に装備を装着させたりだとか、食料を与える、とかですかね? ただ、どちらも今はできませんね …」


 ん-、そもそもその知識通りかどうかも分かんないもんな。もしかしたら、力で屈服させる、が唯一の条件かもしれないし。


 もしそうだったら、どうにかして《分からせ》無いといけないよなー。拘束して、水責めでもするか??


「あ、ティラノサウルスがもぞもぞし始めましたよ! もう起きるかもしれません!」


 え? 早くない?? 俺、昼ご飯食べて眠くなった時は大体3時間くらいは寝てるよ?? ティラノは体が大きいからもっと大量の砂糖が必要だったのか??


 くそ、何かティラノをテイムする方法は...


「ガルゥ」


「「え??」」


 ティラノが立ち上がりこちらを見つめている。ただ、先ほどまでの威圧感は無く、ずっとこちらを見つめている。ただ、鼻息でよろけそうになるくらい顔が近い。


「ガウガウ」


 ティラノサウルスが聞いたことも無い鳴き声を発してる。ってか、確かに咆哮を上げてるイメージしかないけど、普段はどんな声してるんだろうな、恐竜って。


 弱肉強食の世界だから、鳴き声によるコミュニケーションとかはそこまで発達しなかったんだろうか??


「ご主人様! こいつ、さっきの美味い奴をもっと寄越せ!! って言ってるっす」


 え、そうなの? ってか、なんでハーゲンはティラノの気持ちが分かるんだ?


 そう思い、ティラノから一歩引いて全体をみると、そこには、


<Lv.28 ティラノサウルス*>


 という表記があった。


「きたーーーー!!!!」











--------------------

ちょっと更新ペース落ちるます…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る