第1257話 体内の壁
「よいしょ、こらしょ、よいしょ」
俺は今ティラノサウルスの食道をロッククライミングしてた。いや、ロックではないか。
メガネくんの指示の下、ティラノの舌に砂糖を届けるため、消化器官を逆走して登っているという訳だな。
ってか登るの難しいな。食道の内側は縦に溝のようなものが入っていて、とても掴みづらいのだ。気合で掴んではいるものの、気を抜くとすぐに落っこちちゃいそうだ。ってかもう2回落ちてる。この溝が横に入っててくれたら余裕で登れたのに...
もしかして、食道を登ってくる奴を想定して対策してるのかもしれない。、、、そんな訳ないか。
そんなこんなで俺は地味に登っている。ティラノサウルスの食道だからか、かなり長いのだろう。まだまだ先は見えない。ってか、首が長い草食恐竜とかだったらどうなってたんだろうか? 草食だから食べられること自体ないんだろうが、その食道を今みたいに登ることを想像するだけでシンドイ気分になる。今登っているのがティラノでまだティラノで良かったぜ。
『あ、ごめんなさい! MPが切れてしまいました!』
俺が無心で登り続けていると、メガネくんからそんな報告が届いた。MPという概念を久しぶりに聞いたな、とは思ったがそれと同時になんでわざわざそんなことを報告するんだろう、って思った。が、直ぐに答えは分かった。
「グラァアアアオォオオオオウ!!!」
「え、ちょ、待っ......落ちる落ちる落ちる!」
なんと、メガネくんのMPが切れたことで、透明化が解除されティラノに見つかってしまったのだ。当然獲物を見つけたティラノは咆哮を上げ、メガネくんに襲いかかる。
先ほどまでもティラノは完全に静止していたわけではなく、多少の揺れはあったが、咆哮とダッシュにより、グワングワンと食道が揺り動かされている。食道の中にいる俺からすると正に天変地異だ。ってか、こんなに食道って動くの??
登るどころか捕まっているだけでも精一杯だ。
スキルを使おうにも、時間歩行だと絶対どこかしらに激突しちゃう自信がある。あれ、繊細な調整、細かな操作とは無縁のスキルだからなー。
『メガネくん、だいじょぶそー? まだ追いかけられてる?』
『はい! 絶賛逃走中です!!!』
うん、全然大丈夫じゃなさそうだな。メガネくんが今食べられると、ロケット鉛筆方式で俺がまた胃の中に戻ってしまうから食べられる前になんとしてでも登りきらないといけない。あ、そうだ。
「【仙術】! えーっと確か、Fe!!」
効果範囲的に大丈夫か? と思ったが、そういえば胃じゃないところにも沢山あったな、鉄分は。
血液中の鉄分をかき集め、俺はアイスピックのような物質を生成した。よし、これで気合で食道を掴まなくても登れるな。
しかも、材料はまだまだ沢山ある。ってことは使い捨ても可、だ。
俺は、生成、壁に突き刺し、その上に乗って大ジャンプ。を繰り返してものの数秒で登りきることに成功した。ってか、最初からこれに気付いていれば...
でも今はそんな場合じゃない。メガネくんが危険だ。
食道から口内に戻り、鋭い牙に気を付けながら、スキルを発動する。
「【仙術】!!! これでも食らえ!!!」
あ、
『メガネくん、さっき言ってた砂糖の化学式なんだっけ?』
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土日が短すぎるよー
毎週三連休にしてくれーー
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