第1249話 説明


「よし、じゃあ行くか」


「...はい」


 俺たちは今、ユグドラシルの前にいた。やっとこさ、ユグドラシルに戻ることができる。


 というか、なんで俺はユグドラシルを一旦出たんだっけ? ま、いいか。


 さて、まだ案内人の爺さんはいるだろうか? もしかしたら疲れて世代交代しちゃってるかもな。


 俺はユグドラシルの樹の中を一瞬で駆け上った。あ、メガネくん置いてきちゃった。


 *


 メガネくんを回収し、ユグドラシルを上りきると、お久しぶりのエントランスと案内人の爺がいた。


「お、爺さんお久しぶり!」


「お久しぶりでございます。よくぞお戻られになりました、人神様。おや、以前お目にかかった時よりも更に膨大な信仰力を蓄えていらっしゃいますね。現世の方で随分ご活躍されたようで」


 ん、信仰ポイントのことか? この爺さんは神のポイント量も判断できるのか? マジでそこら辺の神様とかよりよっぽど強そうだ。


「そして、お隣の方は新たな神様でしょうか? 私はこの世界樹の案内人を務めているものです。どうぞお見知りおきを」


「はい、私は智の神のストロンと申します、こちらこそよろしくお願いいたします」


 案内人の爺さんはメガネくんとの挨拶の後、ほんの一瞬だけ値踏みをするような視線を向けたが、直ぐにいつもの穏やかな表情に戻って業務を再開した。


 ってかメガネくんって智の神だったんだ。ぴったり過ぎるな。


「さて、本日はもう行かれますか?」


「いや、折角だからこのユグドラシルについて、改めて軽く説明してもらおうかな。初めての人もいるし、俺自身も忘れちゃっているからな」


「かしこまりました。僭越ながら説明させていただきます」


 そういって案内人によるユグドラシルの説明が行われた。


 ユグドラシルというのは、神様の治める世界への入り口でここから様々な神様の世界に訪ねることができること、そしてその世界の神を倒すことでその世界の支配権を獲得できるということ、など俺は一度聞いたことがある(はずの)内容だったが、メガネくんは興味深そうに聞いていた。


 しかも、メガネくんの聞きっぷりが良かったからか、俺も聞き覚えがないことも説明してくれた。

 

「神というのは、その信仰によって形作られ、力を蓄えます。そして、あなた方のように自ら信仰を獲得する神というのは存外少なく、神は皆お互いに不可侵の律を暗黙の了解とすることで、お互いの支配権を維持してきました。そのため、信仰力を蓄える方法は一つしか存在せず、それが神様の力を示す一つの力となりました」


「時間、ですか?」


 メガネくんが発言した。リアルのことを詮索するのは良くないが、学校とかでもこんな風に先生質問とかしてるんだろうか? 絶対成績優秀なんだろうなー。


「ご明察です。流石智の神でございます。そう、神の力を示す基準、それは"時間"です。太古に生まれた神はそれだけ強く、最近生まれた神は文字通り赤児のようなもの、という訳です」


「なるほど。だから、最近生まれた神を倒して僕たちは信仰力を蓄えなければいけないというわけですね」


「はい。ですが、そちらの人神様が既に沢山の信仰を獲得しておられますから、現在はより強い神の世界を訪れることが可能です」


 ん? 


「今回ご案内するのは、恐竜の神。このあたりからかなり古い世界になってきます。存分にお楽しみくださいませ」









---------

さて、これからどんな神様の世界に旅立つのでしょう?

まずは白亜紀にご招待いたします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る