第1236話 完成を目指して
皆の装備を確認すると、シャベルだけでなく、ピッケルやクワ、他にも名前の分からないような道具からスコップまで揃っていた。
「はーい、じゃあよろしくお願いしまーす!」
座標を確認し穴掘りを開始すると、更に驚愕の事実が発覚した。なんとこの人達は全員穴掘りのプロだったのだ。
作業を初めてものの数分で牢獄までの高度に達し、一時間もかからない間に牢獄の下に大きな空間を作ってしまった。このままでは完全な部屋とまではいかないが、普通に拠点として使えそうなレベルだ。
速い、速すぎる。このゲームにはこんなに穴掘りの名人がいるの? それともリアルで修行を積んでる方々? 手際がおかしいレベルだ。少なくとも確実にこの世界で掘削作業をした経験があるだろう。
しかもそれが三十人以上もいることが驚愕だ。
ただ、驚いてばかりもいられない。まだ、作業は終わっていない。ここからこの空間を基準に各牢獄へと穴を掘っていく。一番大事な作業であると同時に看守にバレやすい作業でもあるから最新の注意を取る必要があるのだが……
「え、もう終了したんですか??」
「はい、全ての牢へと開通させております。一部、無関係の部屋があったのでそちらは一先ず繋げてはいないのですが」
グループの代表らしき方からそう言われた僕は呆気に取られてしまった。
「あっ、はい、大丈夫です。あ、ありがとうございます」
なんだこの圧倒的な速さは。ゲーム内とは言え非現実的でしょ。あ、もしかして本当は掘ってないとか??
なんてことも無かった。しっかり綺麗に開通しちゃってる。なんなら各部屋に通ずる垂直の穴は梯子まで付いちゃってる始末だ。
これはちょっと流石に話を聞かないといけない気がする。個人的な興味ももちろんあるが、それ以上に魔王軍に全く未知の存在がいるというのが少し怖い。
「す、すみません」
一仕事を終え軽く談笑している方々に勇気を持って声を掛けてみた。何故、貴方たちはそれほどまでに速いのか、と。すると、返ってきた言葉は、
「フンコロガシ……??」
謎の単語だった。どうやらあるプレイヤーに憧れたプレイヤーたちが集まってできたグループもといクランのようだった。そして、そのプレイヤーがとてつもない穴掘りの名手らしく、このクランに入るには掘削テストをクリアしなければならないらしい。
一体全体どんなクランなんだよ。
しかも、なんでそのクランがまるごと魔王軍に所属してるんだ? 陛下は承知なさっているのだろうか。ってか、陛下以外を信奉しているとか割とあり得ないんですけど。
でも、こんなに手伝ってもらったから流石に無碍にはできないよな……
あぁ、こんな時に陛下がいてくださったらなー。
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