第1234話 アイスを買ったら好みじゃなくて、本当に萎えた
「はーい。どうされました?」
「急な訪問申し訳ありません。私は聖騎士なのですが、ここから怪しい気を感じました。もしかして、と思いここに立ち寄ったのですが……」
聖騎士と名乗るプレイヤーはこちらを一瞥した。そして、
「どうやら私の勘違いだったようです。ですがもし、貴方が何か邪な企みをするのならば、その時は私が貴方を捕まえますからね?」
そう言って去っていってしまった。急に押しかけて来たと思ったら急に帰るな。何と我が儘な人なんだ。
だけど、どうやらトパーズさんに頼んだ変装は上手くいったようだ。
元々、普通の変装、つまりただ見た目を変えること自体はできるのだが、それだと自分がプレイヤーであることに加えてプレイヤーネームまでバレてしまう。これだと、変装をする意味が無くなってしまう。
僕の名前を意識されないタイミングであれば変装は効果的だが、こうやって一対一で向き合う、しかも怪しまれているとなると名前を晒すリスクは大きくなる。
そこで僕はトパーズさんに頼み、プレイヤーネームを隠してもらったのだ。いや、正確には、最初から見えないようにしてもらった、と言った方がいいだろうか? これにより敵は僕のことをNPCだと勘違いしたはずだ。普通の変装もしているからもう僕に繋がる手がかりは残されていない。
だからこそ向こうも引き下がってくれたはずだし、作戦成功だな。プレイヤーなのにNPCだと誤認させる、まるで魔王様だな。
……いや、あまりにも畏れ多すぎるな。
そして、こちらもしれっとスクリーンショットを撮った。ただ、聖騎士と名乗った通り、フルフェイスで白を基調とした鎧を装着していたから、顔までは分からなかった。まあ、顔をかくしているのはお互い様だ。でも、こっちが隠した名前を向こうは晒している。
「ハイリガート……」
外国語のような気がするが少なくとも自分の知っている英語にはこの単語はない。ヨーロッパ系だろうか? 後で、フランス語かドイツ語あたりを中心に何か調べてみよう。
名前が分かったからと言って何かができる訳ではないが、これを基に情報を集めていこう。ここからがむしろ僕の本業と言える。日頃陛下の為の情報収集を行なっている力、見せつけてやる!
❇︎
だけど、現実はそう甘くなかった。
もう既に公開されていて、されてなくても必ずどこかにヒントや手掛かりがあるゲーム情報と違って、プレイヤーの情報というのは全然集められなかった。NPCだとすぐなのに、プレイヤーとなるとここまで大変なのか。少し甘く見ていた。
そして、モタモタ何もできずに二、三日が過ぎてしまった。その間、更に多くの魔王軍プレイヤーが王都の牢獄へと入れられ、もう50人を超えてしまった。その首謀者と思しき人物名まで把握できているのに、指を咥えてまっているしかできないなんて……
このままじゃ魔王軍全員が入れられてしまうんじゃないか?
「ん、いや待てよ。ここは逆転の発想だ!」
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