第1202話 しかもそれも別にもともと
「腕を沢山持った仲間??」
「あぁ、腕を3ペア持ってて結構強い奴。ただ、懸念点は実際に装備できるのか、なんだよなー。物理とシステムの両方で」
「……全く想像も付きませんが、確かにカスタムして腕を増やす人はこの世界にもいらっしゃいますね。というより、三対腕を持っていらっしゃるのならばもう一つ引き当てなければいけませんね」
「んあ、確かに」
そこから俺の地獄がスタートした。
安易に始めるべきじゃなかった。折角二つ目を引くという奇跡を起こしたのに、三つ目だなんて。というか、シンプルにもう一個当たりを引くって確率的にヤバそうじゃない? 福引で一等に当たったのに二等も狙いにいくような絶望感。
ってかそれよりムズイだろ。
しかも、今度は俺が腕が必要だからとその他の装備ばっかりでやがる。どうしてこうもガチャの神様は意地悪なんだ? はっ、もしかしてこのユグドラシルにもガチャ神が??
と、愚痴を言っている内はまだよかったが、それが徐々に絶望に変わり、諦観へと変わり無になった。そして無我の境地に達した時に初めて、ガチャの神は微笑んだ。
「こ、これは、、、【剣技:怒暗魔暗】!」
「聞いたこともないですが、禍々しい剣技ですね。というか剣技を三つも引き当てるなんて相当な運の持ち主ですね!」
……いや、多分違う。
一番最初に出た当たりだから剣技を一番の当たりだと認識している、ってのとどうせなら三つとも剣技で揃えたいってのと、一々聞くのが面倒臭いから剣技以外は完全スルーしてるってのが重なった結果剣技しか当たっていない、みたいになってるんだ。
ってか今思うと、ちゃんと一つずつ精査してたらもっと早く地獄から抜け出せたかもしれないし、もっと良いスキルをアシュラにプレゼントすることができたかもしれないのに。
まあ、考えても仕方がない。今は地獄から無事脱出できたことをシンプルに噛み締めよう。
ぶっちゃけると、俺は自分である程度スキルは作れるし、奇跡もあるから従魔を強化するっていう選択が一番良かったと思う。
あーでもそうなってくると他の従魔たちも完全武装したくなるなー。ここの装備は運さえ良ければ割と最強な気がする。……運さえ良ければ。(大事なことなので二回いました)
うん、という訳で強化するのはアシュラだけだな。しかもそれも別にもともとアシュラを強くしようって思ってた訳じゃないし。って俺は誰に弁明してるんだ? もし不満がでたらその時はしっかり他の従魔たちも強くしてあげよう。
「考え事はお済みになられましたか?」
「えっ?」
「いえ、ただ思案していたようなので声をかけるかどうか迷いまして。というか、装備は結局どうするのですか? 国家転覆は?」
あー、ああーー、確かにもともとそんな話だったなその目的の為に装備整えようぜって話だったもんな。完全に忘れてた。というかガチャを引くこと自体が目的になってた。
「あぁ、じゃあ適当に装備を見繕っていくとしますか」
って、これは「適当に、」じゃあ妥協できなうなってまた地獄に落ちるパターンじゃ、、、
「一旦寝ても良い? 疲れたぜ」
そう言って俺はログアウトした。
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