第1198話 頭のネジなんて捨てちまえ
俺は今、もの凄く高い、高い場所にいた。それこそ、先ほどまで俺を囲んでいたロボットたちが一切見えなくなるほど高い場所だ。
そして、俺の隣には件のロボットもいる。
普通の生物なら気圧とかの影響で大丈夫じゃなさそうなんだが、流石ロボット普通に耐えられているようだ。
「さて、こっからお前を落とすことも俺はできるんだが……位置情報が発信されてる機械がどこにあるのか教えてもらっていいか? 別にずっとここにいてもいいんだが、間違って落としちゃうかもしれないしな」
ハーゲンの背中に乗せてもらっているんだが、鳥の上にしては広いとはいえ、ビルの屋上に比べたら全然不安定だし、一人だと十分すぎるが、二人だと手狭だ。
「わ、分かりました。教えるのでどうか落下だけは……」
ロボットでも落下するのは怖いんだな。俺も最初は怖かったっけ? もう覚えてないな。そんなに怖いのなら飛行ユニットでも搭載すればいいだろうに。
俺は、ロボットの指示に従い後頭部のハッチを開き、位置情報転送ユニットを抜き出した。
「なあ、他人にしかも人間に自分の頭の中見られるの怖くないのか?」
「怖いですよ! でも、落とされるのも同じくらい怖いんですよ!」
「そりゃそうか」
気まずい沈黙の中ハッチを閉じ、俺は腰を下ろした。最初はコイツを使ってこの世界を知り、案内でもさせようかと思ったが、どうやらこのロボットという存在に興味が湧いてきたようだ。
「なぁ、お前って名前はあるのか? ほら、個体識別番号とかではなく、お前特有のニックネーム的な奴」
「私の名前はナップです」
「じゃあナップ、死ぬのって怖いか?」
「え? はい、怖いに決まってるじゃないですか! 死ぬんですよ!?」
「そうか、そりゃそうだよな。じゃあ生きるのって楽しいか?」
「へ? 生きるの、ですか?」
「そうだよ。死にたくないってことは生きていたいってことだろ? だったらその生は楽しいものじゃないのか?」
「…………ど、どうでしょう? 私は朝目を覚まし工場へ出勤し、日暮頃に帰宅します。そしてエネルギーを補給し、ルーレットかダイスで遊んで寝ていますね」
「ルーレットかダイスって……ギャンブルか?」
「はい。その日の稼いだ金額の半分を賭けるんです」
「その人生楽しいか?」
「た、楽しいですよ! 掛け金が二倍になって返ってきた時なんてもう!」
「でも、その分ゼロになっちゃうこともあるんだろう? 賭けの収支はプラスなのか? そもそも何でギャンブルなんかするんだ?」
「き、きっとプラスですよ。それに負けてたとしてもまだ途中なだけです。これから取り返せます!」
んー、つまらなそうだなー。俺がギャンブルに興味がないだけかもしれないが、それにしてもあれほどまでに世に執着していたロボットとは思えない。
俺は徐に立ち上がり、再びナップの後頭部にまわりハッチを開いた。そして、適当に重要そうな部品を何個か抜いてみた。もちろん、抜いたパーツは大空へ不法投棄だ。
「なあ、ギャンブルよりも面白いことしね?」
「え、そんなものあるんですか? 教えてください!」
「国家転覆」
「…………いいですねぇ」
そう言ってナップはニヤリと笑った。
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お久しぶりです。思いの外休みが心地良くて溶けておりました。
これから毎日とはいかないでしょうが、ゆるゆる頑張っていきますね。
(この件何回目だ
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