第1197話 ボーダーライン
「…………来ないようだな」
ロボットの頭を掴んだまま、暫く様子を見ていたのだが、一向に追っ手が来る気配が無かった。恐らく、コイツは自分の命を優先したということなのだろう。
ただ、まだ完全に信用したわけではない。俺が気付けない方法で俺らを完全に包囲している可能性はあるし、今は住民を避難させ、このロボット諸共葬り去る可能性だって捨てきれない。
「はい、ですのでその手を取ってもらうことはできますか?」
俺は少し迷った。この手を離した瞬間に逃亡、あるいは反撃があるのではないか、と。
だが、まあその時はその時と思い、手を離した。というかシンプルにこの世界のことを知りたいし、仲良くなりたい。そっちの方が得だし楽しいだろ。
「オッケー、じゃあ色々質問していいか? まずはお前の名前は? お前はどういう存在で何の為に存在しているんだ」
「……貴方はその問いを自分自身にもされたことはありますか?」
お? 質問を質問で返された。これが質問返しという技か。これは答え方をミスったら好感度が上昇しない奴か?
「あぁ、あるぞ」
「では、その答えは見つかりましたか?」
「んー、まだ見つかってないかも」
「それと同じです。私も、いえ私たちもその答えを日々模索している途中でございます」
ロボットがそう言った瞬間、ザッと周囲が開けて俺は大量のロボットたちに囲まれていた。彼らは全員がレーザー銃をこちらに向けていた。少しでも動けば撃ち抜かれそうだ。
「ん、俺を騙したのか?」
「いえ、我々には位置情報特定機能が備わっており、緊急事態に避難していない個体は特殊ですので私の報告に関わらず、異常事態とみなされたのでしょう」
なるほど、それにも関わらず逃げた、なんて嘘の報告をしているもんだから尚更怪しまれたってわけか。そもそもそんな報告を本当にしているかどうかも定かではないが。
「なぁ、お前らに命の概念はあるのか? 感情とか道徳とかって存在するのか?」
「もちろんございます。貴方が持ち合わせているように、我々も持っておりますよ」
現実世界ではここまで発達した人工知能は生み出されていないが、その内出てくるのだろうか。それとも、もう開発する技術は持っているが、倫理的に行なっていないだけなのだろうか。
はぁ、そうなってくると無闇矢鱈に攻撃はできないなー壊しちゃうかもしれないし。コイツらに命や感情などがあるかどうかは分からないが、俺があると認めてしまった以上、殺せないなー。
俺を囲んでいるロボットたちは無言で俺に銃口を突きつけている。まだ発砲、いや発光? していないのは俺がロボットを半分人質みたいにしているからだろうか。
「なぁ、位置情報ってどこまで追跡できるの?」
「恐らくこの世界にいる限りはどこまでも」
「じゃあ、試してみるか」
「え?」
「【時間歩行】」
俺は思いっきり上に上昇した。
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ダラダラするのってなんでこんなに幸せで楽なんでしょうね。
過ぎ去れば虚無なんですが()
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