第1196話 機命


 俺の中の認識ではロボットと言うのは、どれだけ優秀であっても感情を持たず、いくらでも代替可能な存在であった。


 しかし、今俺が目の前のロボットを壊そうとした所、ソイツはあろうことか命乞いをしてきた。


「お願いします! なんでもしますから命だけは取らないでください!」


 命……?


 一瞬、このロボットを操っているのは人間で、その人間が命乞いをしているかとすら思った。しかし、それならこの機体はあくまで器の意味しか持たず、壊されたとしても別の機械を操作すればいいだけの話だ。詰まるところ、このロボットは生きている、と少なくとも自分ではそう認識していると言うことだ。


 その瞬間、俺の中で殺意というか破壊衝動が薄れてしまった。何故なら、俺は「NPCは手にかけない」をモットーにしているからだ。


 まあ、たまにやっちゃう時はあるかもだが、その時は蘇生すればいい。でも、機械に蘇生が通じるかどうかも怪しい。


 俺は少しだけ距離を取り、冷静に目の前のロボットを観察した。人間の頭にあたる部分には大きな二つのレンズがついており、それぞれに倍率を変化させるスコープが何種類も外付けでついている。腕や脚はいかにも取り替え可能そうな見た目をしている。


 外付けじゃなくても普通にズーム機能とかつければ良いのに、って思うのはダメなのだろうか。もしかしたら神様なりのこだわりがあるかもしれないな。ん?


「おい、何をしている?」


 怪しげな挙動を見せたロボットの背後に回り、頭を鷲掴みにしてそう聞いた。実際できるかは分からないが、お前の頭くらい一瞬で握り潰せるんだぞ、というアピールだ。


「まさか、ここの位置情報を送ったりしてないだろうな?」


「ギクっ」


 いやいやギクっ、じゃねーだろ。マジで人間臭いな。この状況で平然と助けを求めようとしてるとことかも、生への執着と捉えることができる。


 ただ、侵入者に対して情報を誘うようプログラムされているだけ、という可能性も拭いきれない。壊すか、壊さないべきか、非常に悩ましいな。


 俺は、左手で小さな爆弾を作り、放り投げた。


 ッドーーーン!


 遠くの方で爆発がした。もちろん、俺が投げた爆弾によるものだ。


「今の爆発音は俺によるものだ。つまりいつでもお前を殺せるってことだ。さあ、分かったら俺がここから逃走し爆発を引き起こして更に逃亡を続けたと報告しろ」


「わ、わかりました。ですので命だけは……」


「いいから早くしろ。それ次第でお前の命が決まる」


 さて、お前は一体何者だ?









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きな粉が好きです。

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