第1195話 蒸気の中
俺は再びハーゲンに翼をはためかせてもらい、目の前の蒸気を吹き飛ばした。ただそれで生み出される空間というのも僅かなのだが、一先ずこれだけで十分だ。
『ハーゲン、あともう少しだけ頼む』
俺は手早くその空間にリスポーン地点を生み出し、スキルを切って自害した。そしてここからが大事だ。俺はリスポーン後、完全に息を止めた。
というのも、俺が奇跡を使えなくなったのは、蒸気を吸い込んだせいだと踏んでいるからだ。
一旦吸い込んでしまった蒸気を体から完全に排出するのは難しいから一度死んだというわけだ。
『あ、ハーゲンもういいぞー』
そして、俺は万能細胞、もとい酸素不要の体を持っている。だから息をしなければいいだけのことなのだ。今まではそれこそ習慣的に無意識で呼吸を行っていたが、頑張って意識すれば能動的に呼吸を止めることができるのだ。
よし、これで奇跡が使えるようになったな。俺の読みは当たっていたみたいだ。
さて、反撃開始と行きますか!
「
俺は蒸気に向かって奇跡を使った。するとみるみる内に蒸気が消え、俺の視界がクリアになっていった。
すると、そこに現れたのは工業地帯、いや工業世界であった。
まさかこんなものが蒸気の中に隠されていたとは……ただ、俺がどれだけ歩いても障害物にぶつかることなく歩くことはできていたから、もしかしたら蒸気の中で俺は幻術か何かかけられていたのかもしれない。
そう思ってしまうくらいには、一気に世界のテイストが変わった。
ところかしこに工場が立っており、黒煙をあげている。今時、現実世界じゃこんな風景はまず見られないだろう。
そんなレトロな風景に見惚れていると、突如としてサイレンが鳴り響いた。
『緊急事態発生、緊急事態発生。A-28に侵入者が発生しました。近隣の住民は避難または戦闘態勢に移行してください。繰り返します。A-28に侵入者が発生しました。近隣の住民は・・・』
これ、もしかしなくても俺だよな? 神様の面を拝む前に指名手配って訳か。ここの主人はかなりの引きこもりと見た。相当外が嫌いなようだな。工場の建てすぎて空気が悪いんじゃないか?
俺は急いで身を隠そうと路地の方へ向かうと、そこにはすでに人影があった。
「侵入者発見、データを送信します」
まじかよ、初手でチェックメイトとかついてないな。別の路地に入るべきだったか? でも、別にそっちには人がいない保証もないしなー。ここの神様の警備網が優秀すぎたな。
俺は見つかったこと自体には観念し、ここからどう抜け出して神様に会おうかと考えていると、その人物が近づいてきた。
「貴方は既に包囲されております。大人しくついてきてください」
俺に対してそう発言した存在は、レンズを頭に携えた完全な人型ロボットだった。
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ゲームやばい。時間が溶けるどころか足りない()
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