第1190話 おじさん子ども
俺がゴミの世界の深淵で出会ったのは、子供のような見た目をしたおじさんだった。
いや、正確には子供のような体型のおじさんとでもいうべきだろうか、栄養が行き届いておらず体が成長し切らずに老けてしまったのか、それともめっちゃ老けてるだけのただの子供か、一瞥しただけでは判断が付きづらい。
その子供のようなおじさん、もしくはおじさんのような子供は何かを見ながらぼーっとしていた。
「あのー」
「ひっ」
恐る恐る声を掛けると、向こうは俺の存在に気づいていなかったのか、とても驚いたような反応を見せた。
「貴方がこの世界の神様ですか?」
「はっ、はい……ってか何でこんな場所に来たんですか、看板は見えなかったんですか?」
俺が更に質問をすると、とても小さくか細い声で早口に答えられた。
んー、神様感が全くないなー。この神様を倒すのはとても容易そうだが、それだけに何の意味も無いように思えてしまうし、そもそも信者も虫とかしかいなそうだからポイントも美味しくはないだろうな。
俺がどうしたもんかなーと思っていると、
「で、でもこんな世界になったのは僕のせいじゃないですからね。だって、生きてたら絶対にゴミは発生してしまうし処理できる以上のゴミが発生したらそりゃ溜まっていく一方だし僕は性質的にゴミをより多く生み出してしまうタイプだし僕だってこんな汚い場所に住みたい訳じゃ……うえぇええええええ」
物凄い早口で何かを喋り出したと思ったら謎の言い訳で、しかもそれが途切れたと思ったら、口から大量のゴミを吐き出していた。
……そりゃ処理なんて追いつかないわけだよな。
「なあ、お前に勝負を挑んだ奴って今までいるのか?」
「勝負? まさかこんな場所にくる奴がそもそもいないってのに。それに来たとしてもその大半がこの異臭の前にはすぐにずらかるよ。その中でここまで辿り着いた奴は今までいない」
それもそうか。俺みたいに案内人から半強制的に送られでもしない限り、わざわざこんな場所に来ようとは思わないよな。この世界を攻略するくらいなら絶対にもっとマシな世界が山ほどあるはずだ。
でも、何だか殺すのも可哀想になってきたな。俺だって別に自分の部屋が綺麗に片付いている訳じゃないしなー。流石にここまでじゃないが。
「なぁ、信者ってどのくらいいるんだ?」
「そんなもの数えたことないですよ。でもこういう場所の方が住みやすいという奴らがいくらかいると思いますよ。どのくらいいるかは知りませんが変わった奴らですよね。僕は心底嫌っていうのに」
「ん、嫌なのか?」
「当たり前ですよ! 誰がこんなところ好き好んで生活するんですか。僕はこれしか選択肢がないからそれを受け入れた上で頑張って生きているんですよ。ここに住んでる奴らと一緒にしないでください」
「そ、そうか」
もう倒しちゃっていい気もするな。なんかピーピー五月蝿いし。
ただ、ゴミの山ってロマン感じるんだよなー。何か掘り出し物があるかもしれないし。こんだけゴミがあるんだから間違ってお宝が眠ってる可能性もゼロじゃないはずだ。ってなわけで、
「なぁ、ここを綺麗にしてもいいか?」
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六月!
夏!
以上!
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