第1186話 強制執行


「では、仕方ありませんね。取り押さえさせていただきます」


 ネメスがそういうと、世界全体の雰囲気がガラッと変わったような気がした。まるで、ついさっきまで朝だったのに、一瞬にして夜になってしまったような、そんな感覚だ。


 これが神の力……


「皆さん、悪い子を捕まえて下さい」


 それを合図に、この世界の住人が一瞬にしてソルジャーへと変貌し俺に襲いかかってきた。


 え、お前自身が来るんじゃないの? 神様同士で戦うと思ってたんだが……コイツらって神様じゃないよな?


「【天絶之剣】」


 試しにスキルを使ってみると、俺に襲いかかってきた獣人はバターのように切断されてしまった。


 え、いいのか? 神様相手じゃ無かったら流石に負けないぞ? 俺だって一応神様なんだし。


 そう思ってテキの方を見ると、そこには驚愕の表情を浮かべたまま突っ立っているネメスがいた。


「ど、どうして? どうして私の奇跡が効いてないの……?」


 半ば呆然とした状態でそう呟いた。


 どうやら、アイツの奇跡は直接攻撃をする類のものではなく、どちらかというと後方支援でデバフをするもののようだ。


 多分なんかのスキルや称号の効果に掻き消されてしまってるんだろうな。


 あれ、でも案内人曰く奇跡はスキルとかよりも圧倒的に強い力だから、奇跡にスキルで勝てる訳ないんじゃ無かったっけ?


 そうか、俺も使ってみればいいのか。俺の奇跡は敵の奇跡を使えるんだからな。


『突然申し訳ありません。ある一つの提案をさせていただきたいです』


 うぉっ、びっくりした。トパーズか。なんだ提案って今必要なことなのか? こう見えて結構大事な場面で忙しいんだけど。今もずっと俺を捕まえようとしてくる敵を斬るのに忙しいし。


『今まさに必要だと判断したためこうして提言しているのですよ』


 そうか。じゃあその提案とやらを教えてくれ。


『はい。それは奇跡の名前を付けることです。私自身の場合もそうでしたが、名前を付けることによって認識がより明確になり、扱いも楽になることかと思われます』


 おぉ、確かにそうか。トパーズは名前を大切にしているんだな。俺はちょっとその考えがあまりないのかもしれない。


『多くの生命体にとって名前は重要だと思うのですが……』


 んー、奇跡の名前どうしようかな。あまり雑過ぎても奇跡感が薄れるし、かと言ってあんまり長くて複雑なものにすると呪文の詠唱みたいになっちゃうからなー。


 敵の奇跡を使う奇跡、そうだ。


鏡中奇跡イン・ザ・ミラー


 俺がインミラを使い敵の奇跡を使用すると、敵の表情は更に歪んだ。


「なっ、何故私の奇跡が使えないの!? ま、まさか……私の奇跡を!? 卑劣な輩め!」


 ん、この奇跡は敵の奇跡を使えなくする奇跡だったのか。ちょっと奇跡奇跡言いすぎてよく分からなくなってきたな。


 ただまあこれで俺の勝ちだろう。


 対戦、ありがとうございました。













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昨日(今日)は、久しぶりに小説を読んで夜更かししてしまいました。若い頃ならいざ知らず歳をとってからの夜更かしは本当に響きますね…


危うく更新できないところでした()

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