第1185話 こうきな心
どうやらここは全ての多様性が認められる世界のようだ。人種、性別、年齢といった現実にあるものから、ファンタジー特有の種族という垣根を超えて皆が手を取り合っている。まさに理想的な世界と言ってもいいだろう。
現実世界では何年も前から問題になってはいるものの、未だに解決どころかその兆候すら見えない。なんなら酷くなっているような気さえする。
ま、だからと言って目の前の神様を倒さないという選択肢はないのだが。
ってか、美しくない女神ってなんか逆に新鮮だな。そういった空想上の存在は、基本的に人間の願望を元に生み出されるから、その容姿なんかもそのバフがかかると思ってたんだが……例外はあるらしい。
「あら、まだ自己紹介が済んでおりませんでしたね。私の名前はネメス、以後お見知りおきを。今回は何用にていらしたのでしょうか? この世界への入居をご希望ですね?」
俺がジロジロと不躾な視線を送っていると、向こうから自己紹介をしてくれた。ってか、新たな世界に住むことを入居っていうんだな。急な現実感にびっくりするな。
「いや、ここに転居するつもりはない。俺の名前はライトだ、よろしく」
「あらま。こんな素晴らしい世界ですのにどうして?」
お? まるで全人類が、いや全神がここに住むべきとでも思ってそうな口ぶりだな。ただ、まだ情報が欲しいため言葉を選んで返答しよう。
「んー、ちょっと俺には刺激が弱すぎるかな」
「あら、貴方は刺激を求めるタイプなんですね。ただ、常に刺激的な場所に居続けると次第に感覚は麻痺していきませんの? 穏やかな場所でリラックスするからこそ、刺激を十分に感知できるというものでは?」
お、なんか深そうなこと言ってる。ただ、だからと言ってこの世界でリラックスできるかどうかはまた別問題なんだよなー。
「それもそうかもしれない。だが、俺には帰るべき場所があり、真にリラックスできる場所はそこにあるんだ」
「なるほど! そういうことでしたらその帰るべき場所丸ごとこちらにいらしてはどう? みんながハッピーになれますよ?」
どうやら是が非でもここに俺を住まわせたいらしいな。ここで断固拒否したらどうなるんだろうか。そうですか、と引き下がってくれるだろうか?
本来ならもうちょっと話をして、敵が持ってそうな奇跡の情報を探るべきなんだろうが、内から溢れ出る好奇心を止められない。どうしても超絶ノーを突きつけたい。
「本当に申し訳ないが、ここに俺が住むことは一生ない。例えどんなことが今後起きても、だ」
「ほう? ということは入居を拒否されるのですね? では、この世界の住民ではない貴方は、不法侵入ということで排除しなければなりません。それでもですか?」
お、雰囲気が変わった。とうとう化けの皮が剥がれるのか?
「では、仕方ありませんね。取り押さえさせていただきます」
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私はゲームで選択肢が提示されると、どちらの場合も気になっちゃう性質なんですよね。
皆さんはどうしても気になるものってありますか?
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