第1176話 最後と最初のカケラ


「こ、これが本当に無界樹の種っていうのか?」


『はい。私の全細胞全感覚がそうだと言っております』


 お前に細胞はあるのかよ…


 でもトパーズがそうだと言うならそうなのだろう。


「流石にここで全てのアイテムを揃えるのは不味いよな?」


『貴方が何を望むのかによりますが、人目に付きたくないのならば避けるべきでしょう。また、今の状態では全ての条件を満たしてはおりません』


「え、そうなのか?」


 俺はトパーズに言われるがまま魔王城へと舞い戻り、そのまま時間を潰した。


 そもそもゲーム自体が暇つぶしとも言える代物なのに、その中で暇つぶしをするとは思ってなかった。


 ただ、アイスと戯れてる時間はいつになく幸せだった。


 ❇︎


『ではまず外に出ましょう。室内では流石にできかねます』


 流石にか。恐らく種、水、光があることから何らかの植物が発生すると思っていたのだが、それはかなりのサイズになるようだ。室内でするのは賢い選択ではないらしい。


 外に出ると、完全に夜の帳が下りていた。これが俺に暇を潰させた理由か? でもそれならもう少し前から暗くなっていたような。


『先ずは無界樹の種を手に取り、そこに魔力を込めて下さい』


 俺は言われるがままに種に魔力を込めた。


「……これってどんくらい込めればいいんだ?」


『お好きなだけどうぞ』


 んーそう言われると困るんだよなー。無限魔力だからぶっちゃどこまででも込められてしまう。ただ、それだと基準が無いからもし足りなかったらと思うとやめられない。


 まあトパーズの反応的に込めすぎると不味い、みたいなことはなさそうだから気にせずガンガン込めていく。俺の基本思想は「大は小を兼ねる」だ。


『……流石にもう良いと思われますが。次に神水で満たした聖杯にその種を入れて下さい』


 唐突にトパーズがそう言った。もしかしたらこれ以上は入れすぎになるのかもしれない。だったら最初から言って欲しいもんだ。頑張って調節したのに。


「はい、入れました」


 ただ、今はトパーズだけが頼りなのでちゃんと従う。俺はポトンと種を神水の中に入れた。


『では仕上げです。月光プリズムを用いて、月の光を種に当ててください』


 なるほど、だから俺に時間を潰させたのか。確かにさっきまで月は出てなかった気がする。


 俺が角度を調節し最後のピースを揃えると、


 ボンッ! と爆発的な音がなって急速に種が成長し始めた。ぐんぐんと天に背を伸ばし、地中には根を張り始めた。その成長速度は竹の子なんかと比べものにならない程だろう。


 その成長は留まることを知らず、背丈だけでなく樹径も恐ろしい具合に広げていった。


 もはや魔王城が小さく感じられるほど大きくなった時、その成長は止まった。いや、もしかしたら頂上部分はまだ伸びているかもしれないが完全に見えなくなってしまっていた。


 こ、これがユグドラシル……?


『いえ、コレはあくまでただの入り口に過ぎませんよ。本物は更に大きいです』


 えぇマジかよ。コレが入り口って、規格外すぎるだろ……

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