第1175話 小さな違和感
始まりの森、それは俺にとって文字通り始まりの場所だ。
このゲームを始めた時は今では考えられない精神状態で、色々狂ってた。だからこそ、色んな無効スキルを手に入れることができたし、そのおかげで今はこうして魔王として楽しく遊ばせてもらっている。
だからこそ俺にとって始まりの森は最初の狩場、という以上に特別な思い入れがある。
そんな始まりの森にユグドラシルに通ずる種があるとは思いもしなかったな。
『始まりの場所、だからこそだと思いますよ? 貴方様みたいにまさかそこにそれほど重要なアイテムがあると考える方はそう多くないはずです』
なるほど、灯台下暗しってわけだな。
でも、俺も何度か始まりの森を訪れてはいるがそれらしきものは無かったぞ? 本当にあるのか??
❇︎
目立たないように変装をして始まりの森に向かうと、そこには俺が初めてみた時となんら変わらぬ森が広がっていた。
懐かしさも覚えるがそれと同時に時の流れも感じるな。
当時は無我夢中というか、それ以外何も考えられていなかったけど、今は色んな仲間たちに巡り会えて本当に充実した日々を送れている気がする。
ただ、別にここには感傷に浸りに来たわけじゃない、次のステージに進ために来たんだ。
『……で、トパーズどこにあるんだ? 俺の視界にもスキルの反応にもそれらしい重大なアイテムはないんだが?』
そう、俺が感傷に浸ってる間、俺の足は全速力で動いていた。ここのどこかに種があるはずだと縦横無尽に駆け回っていたのだ。でもどこにも見当たらなかった。スキルを使っての捜索だったのに見つからなかったってことはやっぱりないんじゃないか?
『それは早計です。それに一つ重大な思い違いをしておりますよ。確かに無界樹の種は今の貴方にとって重要なアイテムかもしれませんが、だからと言ってこの世界にとって、ひいてはこの森にとっても等しく重要というわけではありません』
「ん?」
『つまるところ、別にそれは重要なアイテムではなく、そこら辺に転がっているのですよ。ほら、今も貴方の目の前にあるじゃないですか』
「え?」
そう言われて辺りを見渡してみるが、そんなアイテムはどこにも見当たらない。というか見当たってたらとっくに見つけてる。
『ほら、地面を見てください。目薬程度の種が落ちていませんか?』
トパーズがそう言うので改めて地面を凝視すると、そこには確かに種があった。そしてそれは、手の平に収まるほどの、現実世界に比べるとデカいが、ファンタジー世界でいうとそこまで大きくはない種だった。
「こ、これが本当に無界樹の種、なのか?」
『えぇ、その証拠にほら、説明文が表記されないでしょう?』
言われてみると、確かになんの文章も表れなかった。この世界にある全てのアイテムにはオブジェクトとしての説明文があるというのに。なるほど、だから俺のスキルにも反応しなかったのか。
「って、もしかしてトパーズ。ヒントってこの違和感だけなのか?」
『えぇ、ですから情報はとても重要なのですよ』
いやいや、これは無理だろ。
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最近私は無理ゲーとは言わないまでも難しいゲームに挑戦しております。
早く話題の新作触りたいよー()
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