第1171話 水々しい

 

 眼前に広がる大きな大きな直方体の氷塊を頑張って粉砕すると——アイスに壊してもらおうと思ったところ、疲れたのか海馬の上で寝てた——、奥へと続く道が現れた。更には階段までもがあり、俺たちは深奥へと誘われて行った。


 そして、ついに最深部と思われる場所に着いたかと思えば、そこには台座の上に聖杯が鎮座していた。


「ん、あれ?」


 これがてっきり神水かと思っていたのだが、その中身には何も入っていなかった。


 でも、こんなに豪華で明から様だというのに、神水じゃないのか? もしかしてこれはそれを掬う容器ってだけで、水自体は別の場所にあるとか? でもどこに?


『発言してもよろしいでしょうか?』


 唐突に天の声がそういった。ってか、いい加減名前決めないとな。毎回天の声って呼んでたら他人感がどうしても拭えない。


『先ほど貴方はその聖杯の中に何も入っていないと考えていましたが、本当にそうでしょうか?』




 ん、どういうことだ? どっからどう見てもこの中には何も入っていないぞ? ほら、ひっくり返しても何も出てこないし。


『その考えは変わりませんか? ここが水中だとしても』


 あ、確かにそうじゃん。ここは水中だ。だからひっくり返したとしてもすぐに落ちてくるわけじゃなくて浮力の分だけ時間差が……


 って、何も出てこないぞ?



『はぁ、では答えを教えましょう。その聖杯の中身は水そのもの、ですよ。そこから水が溢れ出し、海となり雨となり川となっているのです』


「は?」


 この聖杯の中身は水そのもので、これが海とか川とか山になっているってこと?


『山ではありません』


 あぁ、はいそうですね。


 じゃあ、これが神水ってこと? つまり、今俺たちが触れているのが全部神水だったってことですか?


『いえ、神水は聖杯から溢れた瞬間にただの水となってしまいます。だからこそ、この世界を循環する水たりえるのですが……』


 ん、じゃあ聖杯から出る前までは神水ってことなんだよな? 神水って美味しいのかな? どんな味するんだろ?


 ゴクッ


 うん、普通の水だな。ってか、神水と普通の水って何が違うんだ?


『神水は一般的な水に比べて尋常じゃないほどの魔力やエネルギーが込められております』


 ふーん、じゃあそれを大量に摂取したらどうなるんだ?


『多少であれば万病を防ぐ薬になると言われておりますが、大量となると……過去にそのような事例が一つもないのでなんとも言い難いですね。ですが、一般的にどんなものでも摂り過ぎはポジティブなものではないと思いますよ』


 でも正確なことはわからないってことだよな? じゃあちょっと飲んでみるか。


 確か前、ただの水を飲みまくって死んだことがあったと思うが……神水だから流石に前と同じ結果というわけにはいかないだろう。


 初めの方は、ぐっすり寝て起きた目覚めの良い朝のようなスッキリ感を覚えた。かつねいほど調子が良いということが実感できる。ただ、それでも飲み続けると、俺の体にある変化が訪れた。









━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

皆さんはお水飲まれますか?

私は飲みます(知るかぁ!


皆さんの好きな飲み物を教えてください。

私は水です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る