第1158話 絶対防御


 そこに居たのは、恰幅の良いいかにも王様だ、と言わんばかりの初老の男性と、綺麗さに全振りした美しい女性、そしてその二人の遺伝子を受け継いだ、愛らしい男の子だった。そして、彼らを守る従者、いや……プレイヤーか? ともかく合計四人がそこにいた。


「だ、誰だ貴様は! 早急に立ち去れ!」


 それは家族を守るべき父としての使命か、はたまた一国を従える王としての矜持か、とても威厳に満ちた声だった。


 ただし、TPOは弁えていなかったようだ。自分たちがどんな状況に陥っているのか、ちゃんと理解できていないようだ。


「国民は見捨て、自分たちだけ逃亡か。良いご身分だな」


「う、うるさい! 貴様のような下賎な者に何が分かる! 国とは国王がいて初めて存在することができる。トップを失って仕舞えば国民も混乱してしまうだろう! そんなこともわからんのか!」


 逆だろ。国民あっての国じゃないのか? ってか、国民がもう既に混乱しているっていうのに。そんなのも分からないのか?


 って、そもそもの元凶は俺なのか。俺も人のこと言えた義理じゃないな。


 それに反論すればそれの更に十倍くらいの支離滅裂な言葉で言い返されそうだ。耳にタコができる前にちゃっちゃっと終わらせよう。国王様には俺にとって都合の良いマリオネットになってもらわないと困るからな。


「【怪光砕心】」


 そう思い、俺はスキルを放った。


 だがそれも聖なるバリアに弾かれてしまった。


 え、そのバリア強くね? 確かに王都全体に掛けられている妖術を防ぐくらいだから相当強いんだろうが、このスキルをモノともしないのはちょっと強過ぎじゃないだろうか。いやまあ俺より強い奴がいたとしてもなんらおかしいことではないんだが、流石に予想外だ。


 その後の攻撃——命を落としかねない強力な技ばかりだった——も全て防がれてしまった。おかしい、強すぎる。いくらなんでもチートだろこれは。そんな絶対防御があっても良いのか?


 なあ、天の声さんどう思う?


「はい。おそらくですが、全ての攻撃から身を守る絶対防御、あるいはそれに準ずるスキル、またはあらゆる魔のモノから身を守る絶対聖域のようなスキルの可能性があります。ただ、どちらにせよこれほど長時間、なんのデメリットも無しに使用できるというのは不自然です。何かカラクリがあるのかもしれません」


 ふーん、なるほどそういうことか。それなら俺の攻撃が全て防がれるのも納得がいく。俺はゴリゴリの魔のモノだしな。


 それにしてもカラクリか。絶対そうだよな、じゃなきゃ説明がつかない。ただ、モタモタしていると逃げられてしまう。


 俺は全力で頭を回転させ、改めてそのバリアの使い手を観察した。


 白髪の女性で、装備はかなりガッシリしている。ワンチャン、国王お抱えの兵士の可能性もあるが、最初に感じた通りやはりプレイヤーだと思う。


 その人は左手でバリアを展開しており、先ほどからずっと俺の攻撃から王族たちを守っている。


「ん?」


 その右手には、ここからはよく見えないが何かが握られている。その殆どが隠れているというのにも関わらず、キラキラと光が漏れ出てしまっている。もしかしてあれがカラクリか? 代々王家に伝わる超チート級アーティファクト、みたいな可能性も全然あるな。


 つまりはそれを相手の手から離し、あわよくば俺が奪い取れれば完璧だな。ただ、俺の攻撃は全て防がれてしまう。どうすれば良い? 俺は存在自体が魔のモノだし、相性があまりにも悪すぎる。


 ……ちょっと待てよ? もしかしたら、、、


 俺はある仮説に基づいて、一歩踏み出した。







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完全に更新するの忘れてた。許してください。

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