第1156話 伸びる朱の手

ザクロさん視点です。

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 直感や予感など、言葉にできない感覚を私は大切にしている。


 それは、ただの運命論者というわけではなく、自分でも気づかない情報を身体が勝手にキャッチしている、と言う場合が多いからだ。


 事実、過去にもそういうことがあった。


 そして今回魔王に関して私が抱いた、どこがで会ったことがあるような、と言う感覚。それを直感とするならば、私は私でも覚えていない時に、魔王と会っているということになる。


 そんなことが果たして可能なのだろうか?


 なんせ魔王だ。魔王は常にこの世界に何らかの影響を齎らし続けている。今回もその一つに過ぎない。


 そのような強大な存在に対して私が忘れることなんてあり得るだろうか?


 いや、それは流石に考えにくい。


 仕事柄、様々な人々と仕事をすることがあるのだが、私は一緒に仕事した人をかなり覚えている方なのだ。


 ちょっとだけ共に仕事をした相手で、向こうは忘れている場合でも私は覚えていることが多い。


 となると、やはりただの気のせいだろうか。


 私も毎回直感や予感が当たるわけではない。その殆どが被害を未然に防ぐためのものであり、その感覚から外れた世界線は観測不能であるため、当たっているかどうかさえ判定不能な場合が殆どである。


「考え過ぎ、か……」


 私はそう判断しログアウトした。


 ❇︎


「あ、お姉様!」


 今日は久しぶりに実家に帰ってきている。リアルイチゴちゃんを見られる貴重な時間だ。


「それにしても魔王、強かったですわねー」


「そうね。アレに勝たなきゃいけないって思うと少し心が折れそうだけど、きっと何か突破口が用意されてるはずよ。諦めずに頑張りましょう」


「はい、ですわ!」


 可愛い。


 正直に言って魔王なんて倒さなくてもいいのだ。ただ、好きな人と共通の目標を持ち、それに向かって前進していくこの時間が幸せで尊いのだ。


「それにしても……」


 と、徐にイチゴちゃんが口を開いた。


「魔王と彼、どちらが強いのでしょう?」


「彼?」


「はい。ほら、私やお姉様を倒したアイツですよ。両者ともとても強いということはそうなんですが、どこか通ずるものがあるというか……あっ、いやただ何となく感じただけですので、そんに気になさらないで下さい!」


「……」


「お、お姉様??」


「いや、もしかしたらもしかするかもしれない」


「へ?」


 あのプレイヤーはアレだけ強く結果も残しているというのに、表舞台にはてんで現れない。ゲームが上手すぎてこのゲームを遊び尽くし、既に辞めている可能性もあるが、この世界を遊び尽くす、と言うのは正直考えづらい。


 ならば、表舞台では鳴りを顰め、私たちの知らない裏の世界で暗躍しているとしたら?


 その皮として魔王という面を被っているとしたら?


 もしかしたら、もしかするかもしれない。


 これは色々と調べてみる価値がありそうだ。

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