第1155話 火の穂
目の前に新たに現れたゼインは確かにゼインだった。炎の色は違うものの、かっこいいドラゴンというフォルムは変わっていないし、何より俺のスキルも明確にゼインだということを示している。
これは一体どういう事なんだ?
「説明いたします。まず、今回の奇妙な現象を知るためにはゼイン様の根源である炎について知る必要がございます」
「炎について?」
「はい。そもそも炎とは物体を持たず、物体が燃焼している時に我々が感じる現象でしかないのです」
ほ、ほう。ってことはなんだ、ゼインもただの現象だって言いたいのか?
「正にその通りです。もう少し説明を細くするならば、貴方が従えているゼインとは、他の従魔のような生物ではなく、貴方のスキルによって生み出された炎、それ自体となるんです」
ん、本格的に頭が混乱してきたぞ? 混乱無効って持ってなかったっけ?
「つまりは、鬼火——今となっては魔炎ですが——によって生み出されたドラゴンのような形をした炎、を貴方が従魔として従えたため、今後貴方が生み出すドラゴンのような形をした炎は、同じように貴方の従魔となりうるわけなのです」
「……」
頑張って天の声さんの説明を咀嚼する。咀嚼した結果、
「ってことはゼインは死なないってことか?」
「そもそも現象に生命は存在しません。ですので、あえてその質問に答えるとするならば、生きてもいないので、死ぬことも当然ありません」
マジか。ゼインって今まで生きていなかったのか。
「ん、ってことは今まで俺がゼインに命令ができていたと思っていたこととかも全部無駄だったってことか?」
「それはまた別の問題かと思われます。現象を従えているため、望めば様々な反応を示し、行動してくれます。貴方がマッチを買えば火を起こすことができ、それを使って料理をすることもできれば、山火事を起こすこともできるのと同じです」
……それは本当に同じと言えるのだろうか?
「じゃあ、俺がゼインに感情を持って欲しいと願えば持ってくれるということだよな」
「左様でございます」
じゃあこれからも、これまでと一緒にゼインは俺の従魔だし、一緒に仲良く旅をしていけるってわけだな。
「はい、貴方がそれを望むのならば」
だが、それにしてもゼインを倒すプレイヤーが現れるとは思ってもみなかったな。ゼインは魔王軍最強というわけではないが、それでも決して弱くはない。圧倒的な火力と機動力を持っており、しかも炎だから物理攻撃も効かないというかなりの逸材だ。
それなのに意図も容易く倒されるとはな。
ん、そういえばゼインに矢を当ててるプレイヤーがいなかったか? あれは一体どういうことなんだ?
「貴方の視界をお借りして見えたものだけで分析するならば、あれは、矢による攻撃というより手榴弾によるものだと考えた方が良いかと思われます」
あー確かに手榴弾も投げてたような気がするな。
「あのプレイヤーの攻撃は宙に投げた手榴弾を矢で射抜くことによって本来の爆発を先送りにし、敵に矢が命中したタイミングで爆発させる、というスキルだと考えられます。このスキルの優れている点は、矢や手榴弾を自分で用意する点にあり、目的や用途に応じて使い分けることで様々な効果が期待できます」
ふむ、ということはめっちゃ強い爆弾をめっちゃ使って、それにめっちゃ強い矢を放てばめっちゃ強い攻撃ができるってことだな。
「……その通りでございます」
そんなことを話していると、ふと、空が暗くなった。どうやら王都陥落の陣が完成したようだ。
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皆さんがゲームのプレイヤーだとして、武器を強化しようと思った時、元々使用していた武器を強化しますか?それとも新たな武器を買いますか?
私は非常に迷っております。
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