第1153話 Pomegranate
私たちの前に現れたのは、全身が蒼い炎でできたドラゴンだった。
「そんな
「了解」
「イチゴちゃん、私が隙を作るから、貴方の最大火力お見舞いしてあげて!」
「はい、ですわっ!」
ドラゴンの弱点の相場はどのゲームでも大抵頭。まずはそこに一撃加えて怯ませる。確実にいきたいから、贅沢に強化グレネード三つ使っちゃおう。
「まずは簡単な挨拶よ! 【弓榴連弾】」
ダンダンダン……ダンッ!
ヒット。まあ、今回は高価なホーミング矢を使ったから確実に頭に当たるんだけど。その甲斐あって、
「ギャアアアアアア!!!」
怯んだみたい。
「今よ!」
「【大海魔術、蒼流激槍】、ですわ!」
空から水で出来た特大の槍が幾つも降ってくる。怯んだこの瞬間に放たれたこれはどう頑張っても避けようがない。それに、防具も持っていない炎のドラゴンは防ぐこともできない。全身を貫かれ、その体が、炎が、とても小さくなった。
これでトドメよ。
所詮貴方は炎、酸素が無ければ輝くどころか、存在することすらできないのよ。
「【空間魔法、真空空間】」
この技は展開に少々時間がかかるのと、その間私自身が動けなくなるため、初手から撃つことは難しい。ただ、こうしてきっちり手順を踏めば、酸素が必要な生物、更には炎までも完封することができる。
ボッ、と音を立て、鳴き声を上げることなく炎のドラゴンは消えた。これで私たちの勝ちね。
「二人とも、早くあの柱を壊すわよ!」
その禍々しい柱は私たちの戦闘中にかなり天高く伸びており、もうほとんど時間がないように思えた。
ドスン
私たちが走り始めたその瞬間、背後に何かが落ちてきた音がした。
振り返ると、そこには魔王がいた。
「このタイミングで王様が直々に登場するとは……相当にこの柱が大事なようね?」
時間稼ぎの意味合いも込め、少し挑発気味に言ったものの、対して効果は感じられなかった。それに、私が時間を稼げたとしても、二人が完全に戦意を喪失してしまってる。確かにこれは物凄いオーラだ。
「良くも俺の部下を手にかけてくれたものだ。その代償はきっちり払ってもらおうか」
「あら、意外にも手下思いなのね。でも、死んだ魂はもう二度と帰ってこないわよ?」
その瞬間、魔王の逆鱗に触れたのが感じられた。そして、一直線にこちらに向かってくる。速い、とても速い。
が、私たちの勝ちよ。
「っ……!?」
な、なんで?? そこは酸素がない場所よ?
もし完全に火が消えてなかったときの為に展開し続けていたというのに。なんでさも何も何かのように——実際に酸素はないのだけれど——振舞っていられるの? もしかして魔王って酸素が必要ないの!?
そうして私たちは一瞬にして、どのような方法かすら分からず、殺されてしまった。
ただ、二人にはまだ言っていないのだけど、私は身代わり人形を持っているの。流石にこの状況で勝てるとは思わないけれど、少しでも情報を取って次に繋げてみせるわ。
そう意気込んだ私が目にしたのは、衝撃の光景だった。
なんと、先ほど倒した炎のドラゴンが一瞬にして復活したのだ。しかも先ほどまでの洗練された蒼い炎ではなく、より禍々しく不吉な紫色の炎の体になっていた。
い、一体どういう事なの!? 確かにドラゴンは倒したはずなのに……
その疑問は解ける事なく、しまいには復活したドラゴンに私が生きていることを察知され、その炎に
くっ、これは流石に完敗ね。負けイベントだといいのだけど。次に会うときは必ずリベンジしてみせるわ。
それにしてもあの魔王、どこかで会ったことがあるような……
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次回から再び主人公です。
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