第1144話 優秀天声

 信仰、忠誠、尊敬、これらは似てはいるものの互いに非なるものだと天の声が教えてくれた。


 ってことは、言い換えると重なる部分もあるってことだ。


 そして、そこに重なる感情ってのは他にもあるはずだ。例えば、畏怖、とかな。


「ふっ、詭弁ですね」


 詭弁でもちゃんとした弁? だろうがよ。それに、その反応をするってことは今のやり方でもポイントを稼ぐことができそうだな。ま、質より量って言ったのは、そっちだ。今更止めないよな?


「……お好きにどうぞ」


 よし、じゃあ早速出撃しますか! こちらから出向くのは初めてだったか?


「そういえば、どこを陥すおつもりですか? まさか始まりの街ではないでしょうね?」


 いや、まさか。でもそういえば明確にここを陥す、みたいなのは決めてなかったな。確かに目標があった方がこちらとしても攻めやすくなるはずだ。


「じゃあ王都だな。それが一番分かりやすい」


「しかし、王都はそれだけ人員が手厚く配備されているのでは?」


 そりゃそうだろうな。だが、本来の目的を忘れちゃいけない、あくまでポイント稼ぎだ。だったら一番はでで目立つ所を陥さないとしょうがないだろう。


「ふむ、流石は魔王、と言ったところでしょうか?」


「おい、天の声がいじってくんな!」


 ただ、そうなってくるとNPCのことが気になるな、いくら殺しても死なないプレイヤーとは違ってNPCは一度死んだらおしまいだ。俺が死ぬのは構わないが、死を強制してくるのは自分と時間だけで十分だ。


「偉く詩的な魔王様なのですね。そこまでNPCに対して配慮があるとは思いませんでした」


「ん、お前NPC、を認識できるのか?」


「もちろんでございます。プレイヤーを補佐するのが私の役目ですから、プレイヤーが認識できることは当然認識できなければいけません」


「ほう、流石に……流石だな」


「すみません、そのような文法は学習しておりません。魔王オリジナルですか?」


 おいおいマジで魔王イジリしてくるじゃん。こんなことしてくるのこの世界でコイツだけだろ。新鮮だから面白いけど。


「ただ、確かにNPCを殺さずに王都を陥落させ信仰ポイントを稼ぐ、というのは非常に困難なタスクのように思えますね。ですが、私には二つの案があります」


「ほう、では早速腕前の方を見させてもらおうじゃないか」


「はい。一つ目は国王に直接働きかけ、王都を手中に収める方法です。現在の魔王の能力であればこれを秘密裏に行うことができるでしょう。ただし、効果として派手、ではないため信仰ポイントの大量獲得には少し不安が残ります。二つ目は、無血開城です。これは本来の意味とは異なり、こちら側が攻撃しない、というものになります」


「は、どういうことだ?」


「はい、魔王の教えは『死こそ救済』ですよね? 死をも恐れない大量の軍勢が攻撃することもなく、ただ淡々と王都に押し入り、城に入ろうとしたらどうなるでしょう?」


「そりゃ止められるだろ」


「それでも入ろうとしたら?」


「牢獄いき?」


「それでも入ろうとしたら?」


「処刑?」


「それでも入ろうとしたら?」


「えっ?」


「つまりはそれを行いただ魔王の恐怖を植え付けるのです。王都中に」


 えぇ……何こいつ怖いんだけど。










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実は天の声は最近話題のあるものが元ネタです。

皆さんはもう使いましたか??

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