第1137話 魔王の価値


 奇跡、それはどんな事でも良かったんだ。ある人からすれば大金が空から降ってくることが奇跡かもしれないし、ある人からすれば、今日生きていられるだけでも奇跡かもしれない。


 人によって奇跡は違う。


 じゃあ、多くの人に奇跡を感じさせるにはどうしたら良いか、それは、皆で同じ方向を向き同じ価値観を共有することによってのみ成功するはずだ。同じ尺度を持っていない他人からすればどうでも良いことも、当人たちには奇跡になり得るのだ。


「陛下、準備が完了しました」


「あぁ、では行こうか」


 初めての魔王軍総会。打ち合わせはあの後、メガネくんと念入りに行った。そして、メンバーは全員、急ピッチで用意した地下コロシアムに召集している。魔物プレイヤーと死教のメンバーに加えて、俺から呼びかけてフンコロガシのメンバーにも来てもらっている。


 これが今、俺が集められる最大のプレイヤーだ。奇跡を感じる人たちは多ければ多いほど良いからな。


 俺はコロシアムの中央に立ち、周りを見渡した。そこにはいくつもの目がこちらを向いていた。おかしいな、小さい頃から人前に立つのは苦手だったが、魔王の皮をかぶると自然と緊張しない。


 それでもまずは深呼吸、気持ち長すぎる程の沈黙を作り、この俺ただ一人に意識を集中させる。


「……」


 そして、短く刺激的なキーワードを投下。


「貴様ら、世界を征服したくはないか?」


 ザワッと会場全体が反応したのが分かる。前置きもなく、唐突に今日ここに呼ばれた理由が分かれば誰しも驚くものだ。


「我は常に憤慨しておる。何故、勇者ばかりが最後は勝つのだ、と。何故、魔王がやられ役に徹しなければならないのだ、と。その癖、人間共はその事実にあぐらをかき、悠々と過ごしておる。それが我は許せぬのだ。そこで我は決意した。人間共には制裁を加えると」


 さらに会場が反応した。


「だが、貴様らの中にも我の勝ちを確信できぬ者もいるだろう。そんな者の為に、ここで奇跡を見せてやろう」


 パチン


 と、俺が指を鳴らすと、俺の頭上に一つの球が出現した。それはマグマがバランスボール大に集められた、溶岩球とでも呼ぶべきものだ。因みに、これは裏でペレが頑張ってくれている。


「これは溶岩だ。こんなものを浴びてしまってはひとたまりもないだろうな、普通の人間は。だが、我は当然違う。これしきのことではかすり傷もつけられまい。ただその様を見せたとてこれは奇跡とは呼べまい」


 パチン


 俺が再び指を鳴らすと、今度はコロシアム全体にマグマ天井が生成された。会場全体に先ほどまでとは比べ物にならないほどのどよめきが生まれた。当然、これもペレが死ぬほど頑張ってくれている。


「約束しよう。我に続くのならば貴様らには不死を授けると。信じられぬ者、死を願うものは今の内にここから立ち去る事だな。では始めよう、死の宴を。人間共には災いを」


 ここで溜める。そしてその間にスキルを発動して、っと。


「……奇跡を刮目せよ!」


 ペレに合図を出し、会場全体をマグマの海に沈めた。














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私は基本的に動画は二倍速で見ちゃうのですが、

皆さんは多くの人はしてなさそうな、でも確実に一定数はいるであろう癖や習慣はありますか?教えてくださいな♪

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