第1136話 問題の誤認


「ふぅ〜」


 モンスターの死骸の山に俺とメガネくんは腰を下ろし、一息ついた。相変わらず俺たちの間に会話は少なかったが、それでもこの死骸の分だけ距離は縮まったような気がする。


「それにしても、メガネくんはなんで俺の元に来ようと思ったんだっけ? それこそ、こんな優秀なメガネくんが来てくれたこと自体奇跡のようなもんだが」


「いえいえ、それはこちらこそですよ! 私だって圧倒的な強さを持つ陛下に惚れちゃって、その方に拾って頂けるなんて奇跡以外の何物でもないですよ! まさか、魔王になっているとは思っておりませんでしたけど」


 そう言ってメガネくんは笑って、急に黙った。


「ん、どうした?」


「い、いえ。もしかして、奇跡って起こすものじゃなくて、感じるものじゃないですか?」


「感じるもの?」


「はい。これはあくまで仮説ですが、先ほどの私たちのように同じ事象においても、その受け取り方は人によって異なりますよね? 大災厄が起きて人々は混乱し、それを呪うかもしれませんが、それが起きたことによって得をする人たちはそれを奇跡と呼ぶかもしれません」


「ほ、ほう……」


 確かに、その考え方ならば俺が図書館で見たたちも納得がいく。だってそれらはその事象が特別だったのではなく、その場に居合わせた人々が特別に感じたからこそ奇跡になったんだ。


「ってことは、何が奇跡なのか考えるのは間違っていて、どうやったら人々感動させられるか、に焦点を当てた方が良いってことか?」


「あくまで仮説、ですが」


 いや、これはかなり説得力がある。そもそも、この世界での奇跡ってハードル高過ぎだろ、と思っていたんだよな。


「それなら色々と思いつけそうだな」


「はい! 問題の認識が間違っていたから上手く考えられなかったんですね。これならいくらでもやり方はある気がします!」


 なるほど、最初の設定から間違ってたからメガネくんの力が上手く発揮されなかったのか。メガネくんにしては珍しいと思ってたんだよな。これからはしっかりと何を聞くか、もちゃんとしないとだな。


「陛下、そこでご相談なのですが……」


「ん、どうした? なんでも言っていいぞ?」


「奇跡を見せる方法はある程度煮詰まってきたのですが、それを見て奇跡と感じてくれる観客、視聴者がいなければなりません。それをどうにか集めて下さらないでしょうか?」


 観客かー、それなら最適な奴らがいるよな? って、もう煮詰まってきたの? 流石に早くね??


 まあ、とりあえずその内容は後でメガネくんと詰めるとして、総会、開きますか!








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皆さんとの距離も縮めたいと思っているのですが、何をすれば良いんでしょう?何をして欲しいですか?


それとも近寄ってこないで欲しいですか?(・・;)

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