第1131話 悪の教典
「死教、ですか……」
俺の案に対して、大司教はそう言って考え込んでしまった。
あ、マズい。そういえば俺、ネーミングセンス無かったんだった。引かれたかな? うわーコイツないわーって思われたかな?
「いいですね! 現実世界での宗教は死に対する恐れを払拭する為に様々な方法で意味づけを行っていますが、この世界では死はありふれたものですもんね! だからこそそれにフューチャーするってことですね! 現実とゲームの対比がめちゃくちゃ効いてて良いですね!」
「え?」
「しかも、『死こそ救済』であるからこそ、味方はゾンビアタックをすればするほど救われるのに対して、敵に対しては死ぬまで殺す、というメッセージも込められますよね! んー、ブランディングとしても魔王様のイメージにピッタリですし、この短時間でここまでものを作るとは……流石ですね!」
はい? ちょっと待て。話が何故か壮大なことになっちゃってるぞ?
俺はただ、自分が死にまくって今の強さを手にしたから、皆にもその恩恵にあやかって欲しいなーって思ってただけなのに。沢山考察される作品の作者ってもしかしたらこんな気持ちなのかもしれない。
そして、好き放題言われている手前、それ以下のクオリティを出すことが許されなくなっている雰囲気も感じている。
「ま、まあな。とにかくこれで大丈夫か?」
動揺が悟られないように、適当に返事をした後、すぐさま話題を転換した。
「はい、十分すぎるくらいです! これを参考に教典を作らせてもらいますね!」
俺と目が合っている筈の大司教の視線が俺を通り越してどこか遠くを見つめているような気がした。この先どうなるか考えると恐ろしいので俺は考えるのを辞めて、再び話題を変えた。
「そういえばだが、次の儀式はいつやるんだ?」
「そうですねー。先ほどの儀式は魔王様が生贄を用意してくださいましたので直ぐに開催することができましたが、本来であれば自分たちで狩りを行い、それらで儀式を行うので、今回大幅に強化されたことを鑑みても……一週間後くらいでしょうか?」
一週間か。少し長いような気もするが、信者が増えればその分儀式の回数も増えていくことだろう。
「分かった。じゃあ儀式を行うときは毎回俺に連絡を寄越してくれ」
「はい! かしこまりました。ん、でもどうしてですか? 魔王様もステータスの上昇をご希望なのですか?」
「ん? あぁ、まあそんな所だな。じゃあ引き続き信徒の獲得を頑張ってくれ。あと、信徒がステータスを上げるだけ上げて抜けられる、みたいな事態も今後出てくるだろうから、そこら辺も対策を頼む」
「もちろんでございます!」
え、なにその反応。もう、対策できてるってこと? 本当にコイツ優秀すぎないか?
その後、一旦、魔王城へと戻ると、ピロンという音と共にクエストの達成が確認された。アイツ、もう教典完成させたかよ……囲ってて良かったー。
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