第1130話 教え


 大司教って……は? 俺まだ神にもなってないのに、大司教がいるの? 絶対に順序逆だよね?


「なるほど、俺が見ない内に沢山いろんなことがあった、ってことは分かったぞ。因みに教皇になるまでの道のりってどんな感じなんだ?」


「そうですね、宗教や宗派によって違うとは思いますが、私の場合は大まかに言うと侍者、司祭、大司教、枢機卿、教皇と言った流れになります。もちろん、もっと細かく分類すればまだまだありますが……」


 へーってことは半分くらいにはきてるんだな。でも、まだ半分とも言えるのか、あの規模の集会を開いといて。


「あ、そうだ。魔王様にご相談しておきたいことがありまして……」


「相談?」


「はい。私が大司教から枢機卿になるまでに教典の配布、というクエストが存在するのですがここまで教えもほとんど無いような状態で来ておりましたので中々制作できていないんです。何となくの内容さえ教えていただければ後はフォーマットや自動生成を使って完成させられるのですが、私の独断で行う訳にはいきませんので、ご相談させていただけないかと」


「教えの内容、ってことか……」


 確かに、あれだけの人数が集まってるのに教えがないって相当やばいな。


▪︎神への挑戦(3)

・信者を作る(2131/1000)

・儀式を行う(104/50)

・教典の作成(0/1)


 何気なく、俺もクエストを開いてみるとそこには大司教と同じ内容のクエストが存在した。ってか、これ絶対に同じペースで進めるものだろ。というか、本来は先に俺が終わらせておかなければならないんじゃないか?


「因みに、今まではどんな感じで人を集めてきたんだ?」


「そうですね。あくまで非公式を装って、ではありますが、魔王様を信奉する悪の教団、みたいなノリでここまできました。皆さん、ゲームをしている以上強くなりたいという欲求や、ロールプレイをしたいという欲求があるので、上手くそこを刺激できた結果で人を集められている、と言った感じですかね。人はコミュニティに属したがる生き物ですし。ですから教えと言うものが特になくても成立できたんです」


 ん、ちょっと待て。コイツさては仕事できるな? 急に早口で捲し立てられたぞ? いや、まあ俺が仕事できないからそうやって聞こえただけかもしれないが。


「そ、そうか。適当に、って訳にもいかないもんな」


「そ、そうですね。適当にできなくもないですが、それだとロールプレイを真剣にやりたい人のヘイトを買う恐れもありますし、そもそも魔王様の格が下がるかと……」


 格、かー。別にそんなに欲しい訳じゃないんだけどな。でも、確かに真剣にこの怪しげな集団に入ってきている人たちのことを考えたら少なくともそれなりのものにはしたいよな。


 そして、せっかくならば俺のエッセンスも加えたいところだ。ありふれたものは嫌だしな。


「そういえばこの教団の名前って決まってるのか?」


「いえ、そちらの方も後で相談しようと思っていたのですが、今までなーなーで行ってきました」


「そうか、じゃあ。名前は『死教』で頼む。教えは……そうだな、『死こそ救済』をメインテーマにしよう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る