第1119話 快復させてあげる


「では、ルール説明を行う!」


 受付嬢ならぬ受付マッチョとの試合の為、訓練場にやってくると、ピチピチのタンクトップに着替えたマッチョが仁王立ちしてそう言った。スッゲー気合い入ってんなこの人。


「一回勝負は流石に可哀想であるから、三回勝負で行う。勝負は相手が戦闘不能になるまでとする。もちろん、回復はしてやるから安心しろよ? では、俺はいつでも準備万端だ。好きな時にかかってこい!」


 爽やかな笑顔でそう言うと、仁王立ちのまま俺に挑戦的な視線を向けてきた。まるで、ほら、やれるもんならやってみろよ、と言わんばかりに。


 んー、どうしてだろう。このマッチョが強敵だと思えないのは。


 そりゃマッチョさんが歴戦の猛者で凄い経験を積んで、かなりの実力があるだろうってことは分かる。分けるけど、俺だって悪魔とか妖とか強いプレイヤーとも戦ってきてて、そいつらと比べてもどうも見劣りするんだよなー。


「ん、どうしたんだ? 先手は譲ってやると言ってるんだぞ?」


 んー、これとか、さっきの回復はしてやるとか、上からの発言がどうも三流ムーブに聞こえてしまうんだよなー。そんなことは無いと思うんだけどね? うん。


「あ、はい。じゃあこちらから行かせてもらいますね」


「おう! どんと来い!」


 凄い、見れば見るほど強いと思えない。どうしよう? 


 あーでも、ワンチャン、本当に無茶苦茶強い可能性もあるのか。ゲームで味方NPCが最強って展開はあるあるだし。油断は禁物だ。でも室内で大規模なスキル使うのは流石に憚られるし、どうしよ?


 そうだ、こう言う時は思いっきりぶん殴ろう。


 近づいて殴る。シンプルだけど、シンプルが故に一番差が出やすいよね。だからこれを防がれたらそこからスキルなりなんなり使って倒しにいけばいいや。その時はこの建物のことなんか気にせずに全力で行く。よし、これでいけるはず。


 あ、でも最近死んで無いからステータス足りるかな? こんなことならなんでも良いから死んでおけばよかったなー。


「おーい、まだかー。ビビるのは分かるが日が暮れてしまうぞー!」


「は?」


 ッダーーーーン!


 あ、やべ。なんかついカッとして何にも考えずに殴ってしまった。ってか、ビビってねーし。


「……」


 え、もしかして絶命してる? 壁に埋まってよく見えないけど死んでる!?


 流石にギルド職員殺害の罪は重たそうだから生き返らせなきゃ。


「【死骸魔術】、蘇生」


「んー、んあ? あれ、俺何してるんだ?」


「あのーこれって三本先取ですよね?」


「あぁ! そうだったな。お前との模擬戦だったな。そうだぞ、三本先取だぞ。準備はできたか?」


「あぁ、はい。じゃあ続けますね」


「ん、続け」


 ザクッ


「【死骸魔術】、蘇生」


「ん? 今何が起き」


 デュクシ


「【死骸魔術】、蘇生」


「え?」


「え?」


「「……え?」」








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ミンナガナカヨイノウレシイデス

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