第1113話 ヴェズルフェルニル


「は、ハーゲン……?」


 そこにいたのは、今までハゲタカの姿ではなく立派な鷹の姿になったハーゲンであった。


 ただ単に髪の毛? が生えたというだけに留まらず、ハーゲンの身に起きた変化は多岐に渡る。まずはオーラだ。その品格、風格は以前のものとは比べることもできないほど、高まっている。気品がある、気高い、とはまさにこのことなのだろう。


 そして、次に体格だ。ハーゲンは従魔の中ではそこまで大きい方ではなかったのだが、その体躯がおよそ1.5倍ほど大きくなり、翼を広げるともはや巨大と言っても差し支えないほどだ。


 こうして大きくなると、成長を実感できる反面もう小さい頃には戻れないのだな、と一抹の寂しさがあるな。子を持つ親ももしかしたらこういう気持ちだったのだろうか。


 まだ変化は止まらない。なんと、体毛が黒に染まってしまったのだ。元々は、茶色の毛がベースで、いかにもハゲタカ、コンドル、と言うような見た目だったのだが、今は黒ベースの毛の中に茶色の毛が所々混じっているような感じになっている。


 カラスとも違うなんというか……カッコいい仕上がりになっている。このデザインにしてくれた人に感謝だな。


 そして、次が最後のそして何気に一番大きな変化だ。なんと、ハーゲンの眉間、いや額部分に大きな目の模様が浮かび上がっているのだ。


 最初は本当の眼かと思ってびっくりしたのだが、模様だと知って更にびっくりした。


 この模様が何故生まれたのか、分からないし、ハーゲンに聞いてみても当然分からなかった。ただ、本人曰く、どこかに呼ばれているような気がする、らしい。なんか怖いな、イベントのフラグか?


 ちょっと訳が分からない所が多すぎるので、困った時のメガネくんだな。ってか、ここ最近ずっとメガネくんに頼ってる気がする。そろそろ自分で調べろよとか言われたりしないかな? 今メガネくんにクーデターされたら妖たちが敵に回るから割と洒落にならないんだよなぁ……


『もしもしー? メガネくんってヴェズルフェルニルって知ってる??』


『申し訳ありません。存じませんでした。ただ今調べます!』


 ん、メガネくんでも知らないことってあるんだな。ってか今までも俺の為に沢山調べてくれてたんだろうな。


 なんか、頭良いの一言で片付けちゃってたけど、本当にいつかちゃんとお礼と感謝をしなきゃだな。メガネくんって何したら喜ぶんだろ?


『すみません、概要にはなるのですが、ヴェズルフェルニルはユグドラシルに存在する鳥のようです。この世界にそもそもその樹が存在するのかどうかも分かりませんが……この鳥をご所望なのですか?』


『あ、いや違うんだ。ありがとう、とても助かったよ』


 ユグドラシル、か。恐らくあるんだろうな、まだ見つかってないだけで。じゃなきゃハーゲンがヴェズルフェルニルに進化した説明がつかないもんな。


 そして、ハーゲンがどこかに呼ばれている気がすると言っていたのは、恐らくその樹のことなんだろうな。なんせ、本来「ヴェズルフェルニル」がいなければならないのはユグドラシルの方なんだから。


「ハーゲン、調子はどうだ? 気分は悪く無いか?」


『だ、大丈夫です。少し変な気分ではありますが……』


 確かに、久しぶりの進化だもんな。そりゃ変な気分にもなるだろう。さて、じゃあ早速ユグドラシルとやらにいきますか!


『メガネくー


『陛下! 大変です! かなりのプレイヤーが攻めてきました! しかも、今回は妖たちだけでは抑えきれないようです!!』


 あ、そういえばいたな。そんな奴ら。完全に忘れちゃってたぜ。ってか、ユグドラシル行きたいから、あんまり構ってあげられないんだけど……

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